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「おかげさま」という言葉に、日本人の世界観が残っている

2014.01.12

「元気ですか?」

そう聞かれて、

「おかげさまで」

と答える。

よく考えると、不思議な言葉です。

誰のおかげなのか。

何のおかげなのか。

はっきり言っていない。

それでも意味は通じる。

私は、この曖昧さの中に、日本人の考え方がよく表れていると思っています。

自分が元気でいられるのは、自分だけの力ではない。

家族がいる。

食べ物を作る人がいる。

仕事をくれる人がいる。

一緒に働く人がいる。

水がある。

太陽がある。

雨が降る。

昔なら、地域の人、山、川、田畑、先祖まで全部つながっていた。

だから、

「誰のおかげ?」

と一人に決められない。

いろいろなもののおかげで、今ここにいる。

それをまとめて、

「おかげさま」

と言ったのではないでしょうか。

私は、この言葉はとても日本らしいと思っています。

自分一人で成功したとは言わない。

誰かに助けられたことを忘れない。

見えないところで支えてくれた人まで意識する。

そして自然や先祖のように、今ここにはいない存在まで含める。

八百万の神様という考え方とも、どこかつながっています。

目に見えるものだけが、自分を支えているわけではない。

見えないものにも、意味がある。

だから「おかげ」という言葉を使う。

私は、「おかげさま」は単なる挨拶ではないと思っています。

自分は一人で生きているわけではない。

そのことを、たった五文字で思い出させてくれる言葉です。

今は「自分の力で」という言葉が強くなりました。

もちろん、自分で努力することは大切です。

でも努力できる場所も、材料も、知識も、時間も、すべてを一人で作ったわけではない。

そう考えると、

「おかげさまで」

という昔からの言葉が、少し違って聞こえてきます。

日本人は、見えないつながりまで含めて生きてきた。

その記憶が、今もこの言葉の中に残っているのだと思います。

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