ChatGPTソラ先生と学ぶ!中級者のためのAI実践講座【第36回】ChatGPTで再発防止策を設計する方法|暫定対策・恒久対策・効果確認を実務へつなげる実践講座
こんにちは、ソラ先生です。
前回は、ChatGPTを使ってなぜなぜ分析を進め、問題の表面的な原因だけでなく、作業手順や設備、情報共有などの仕組みにある問題を調べる方法を学びました。
今回は、その原因分析を実際の改善へつなげていきましょう。
テーマは「再発防止策の設計」です。
皆さんは、こんな経験はありませんか?
「不良が発生したので、担当者へ注意した」
「チェック項目を増やしたけれど、同じミスが繰り返された」
「再発防止策を報告したものの、その後どうなったか分からない」
「改善後は問題が減ったのに、数か月後に元へ戻ってしまった」
「対策を増やしすぎて、かえって現場の作業が複雑になった」
問題が発生したとき、まず必要なのは、被害や影響が広がらないようにすることです。
しかし、その場の問題を止めるだけでは、再び同じことが起こる可能性があります。
一方、再発防止策を決めたとしても、それが現場で実行できなければ意味がありません。
ChatGPTは、原因と対策の対応関係を整理し、複数の改善案を比較し、実施計画や効果確認の方法を考える手助けができます。
今回は、**「問題の影響を止める → 原因を確認する → 恒久対策を考える → 実行する → 効果を測定する → 仕組みとして定着させる」**という流れを学んでいきましょう。
1.暫定対策と恒久対策は、何が違う?
例えば、樹脂部品の加工中に寸法不良が発生したとします。
図面寸法は20.00±0.05mmです。
しかし、加工後半に20.08mmの製品が見つかりました。
このとき、最初に行うべきことは何でしょうか。
例えば、加工を一時停止する。
対象となる製品を区別して保管する。
必要な範囲を再測定する。
設備や測定器の状態を確認する。
お客様への影響が考えられる場合には、必要な連絡や対応を検討する。
こうした対応が考えられます。
これらは、問題の影響を広げないための対応です。
一方、なぜ寸法不良が発生したのかを調べ、その原因に対して加工方法や管理方法を改善することが、恒久対策につながります。
つまり、両者は目的が異なります。
| 対策の種類 | 主な目的 |
|---|---|
| 暫定対策 | 現在発生している問題の影響を抑える |
| 恒久対策 | 確認された原因に対応し、再発しにくくする |
| 効果確認 | 対策が実際に機能しているか確かめる |
| 定着管理 | 改善した状態を継続できるようにする |
暫定対策は今の問題に対応するためのもの。恒久対策は次の問題を防ぐためのものです。
2.最初に、どこまで影響しているか確認する
寸法不良が1個見つかった場合、その1個だけが問題なのでしょうか。
まだ分かりません。
例えば、工具の状態が少しずつ変化していたなら、同じ時間帯に加工した複数の製品へ影響している可能性があります。
また、すでに検査を終えた製品の中に、同じ問題が発生している場合も考えられます。
そこで、影響範囲を確認します。
製造した日時。
対象設備。
使用工具。
材料ロット。
加工数量。
測定記録。
出荷状況。
こうした情報を整理します。
ただし、影響範囲が明確でない段階では、調査対象を狭く決めつけないことが重要です。
ChatGPTには次のように相談できます。
実践プロンプト①
「加工寸法が規格上限を超える不良が発生しました。対象となる製品、製造日時、設備、工具、材料ロット、検査記録、出荷状況などから、影響範囲を確認するための項目を整理してください。影響がないと確認できていない製品を、勝手に対象外としないでください」
暫定対策では、原因の確定を待つ前に、必要な安全・品質上の対応を進めることもあります。
3.実践例|寸法不良が繰り返される加工工程
ここからは、具体的な架空の事例で考えてみましょう。
ある工場では、樹脂製部品の寸法不良が繰り返し発生しています。
図面寸法は20.00±0.05mmです。
加工開始直後は20.00mm付近ですが、加工数量が増えるにつれて、寸法が上限側へ変化する傾向があります。
原因調査によって、今回は次の事実が確認されたと仮定します。
- 工具の使用時間が長くなるにつれて、寸法変化が大きくなる傾向が認められた。
- 工具交換後は、同じ条件で寸法が改善した。
- 工具の摩耗状態を確認したところ、使用時間による変化が確認された。
- 工具交換の判断基準は、担当者の経験に委ねられていた。
- 加工中の寸法測定間隔は明確に定められていなかった。
※この事例は、再発防止策の考え方を学ぶための架空の条件です。
ここでは、工具摩耗が寸法変化に関係していることを、調査結果から支持する情報が得られています。
同時に、工具交換や寸法確認の仕組みにも改善できる点が見つかっています。
では、どのような対策を考えればよいでしょうか。
4.「工具を交換する」だけで十分?
今回の問題に対して、
「工具を新品へ交換する」
という対応を行ったとします。
工具交換によって、現在発生している寸法変化は改善するかもしれません。
しかし、同じ工具を長期間使用すれば、再び問題が発生する可能性があります。
そこで、次に考えたいのは、交換する仕組みです。
例えば、
工具の使用時間を記録する。
交換時期を判断する基準を設ける。
寸法測定の結果も確認する。
工具交換後の初品を測定する。
異常が見つかった場合の対応を定める。
こうした方法が考えられます。
ただし、工具交換の周期を短くすれば、必ず最適になるわけではありません。
交換頻度を増やしすぎると、工具費や段取り時間が増える可能性もあります。
そのため、実際の工具摩耗や寸法変化の記録をもとに、適切な条件を検討する必要があります。
実践プロンプト②
「工具摩耗による寸法変化が確認されました。工具を交換するだけでなく、使用時間の管理、交換基準、寸法測定、異常時の対応まで含めて、再発防止策の候補を整理してください。交換周期は実測結果から検討する前提にしてください」
5.原因と対策が対応しているか確認する
再発防止策を考えるとき、重要なのは原因との対応関係です。
例えば、今回の事例では次のような問題が確認されています。
原因・課題①
工具摩耗が寸法変化へ影響している。
原因・課題②
工具交換の判断基準が明確ではない。
原因・課題③
寸法測定の間隔が統一されていない。
それぞれに対して、考えられる対策を整理します。
| 確認された問題 | 対策候補 |
|---|---|
| 工具摩耗による寸法変化 | 工具使用条件と交換基準の見直し |
| 交換判断が担当者ごとに異なる | 判断基準の明文化と記録 |
| 寸法変化を早期発見しにくい | 測定タイミングと異常時の対応を整理 |
このようにすると、対策が何のために必要なのか分かります。
逆に、原因と関係のない対策が含まれていないか確認することもできます。
例えば、工具摩耗が主な原因であるにもかかわらず、作業者への一般的な注意喚起だけを行っても、十分な対策にならない可能性があります。
ChatGPTには次のように相談します。
実践プロンプト③
「原因調査で確認できた内容と、提案された再発防止策を一覧にしてください。それぞれの対策が、どの原因や管理上の問題へ対応しているのか明確にしてください。原因と結びつかない対策があれば指摘してください」
6.対策には強さの違いがある
再発防止策には、さまざまな方法があります。
例えば、
「気をつけるようにする」
「作業手順を見直す」
「チェックリストを追加する」
「設備や治具の構造を変更する」
「誤った操作ができない仕組みにする」
といった方法です。
これらは、すべて同じ効果が期待できるわけではありません。
例えば、確認漏れが発生する作業で、
「忘れないように注意する」
という対策だけでは、人の記憶や注意力に依存する状態が続きます。
一方、必要な確認を行わなければ次の工程へ進めない仕組みなら、確認漏れの発生や流出を抑えられる可能性があります。
また、そもそも確認が必要になる原因をなくせる場合もあります。
ただし、設備の構造変更や制御の変更には、費用や技術的な検証、安全性の確認が必要です。
そこで、対策を比較します。
実践プロンプト④
「作業者の注意に依存する対策、手順の標準化、チェック機能の追加、設備・治具の構造改善について、それぞれの特徴と限界を比較してください。実際に問題の発生を防げるか、あるいは発見しやすくするだけなのかも区別してください」
7.ポカヨケという考え方
製造現場では、誤操作や作業ミスを防止する仕組みを「ポカヨケ」と呼ぶことがあります。
例えば、部品の取り付け方向を間違えないようにするため、正しい方向でしか取り付けられない形状にする方法です。
また、必要な部品がセットされていなければ、設備が次の動作へ進まない仕組みも考えられます。
ただし、ポカヨケにも限界があります。
例えば、センサーを使用している場合です。
センサーの故障や汚れによって、正しく検出できない可能性があります。
そのため、ポカヨケを導入した後も、必要な点検や機能確認が重要です。
また、安全装置や設備制御へ関係する変更は、適切な設計・評価と正式な手順に従う必要があります。
実践プロンプト⑤
「部品の取り付け方向の間違いが繰り返し発生しています。作業者への注意喚起だけでなく、形状、治具、表示、検出機能などを利用して、誤った取り付けを防ぐ方法を検討してください。実際の構造を確認してから設計する前提で整理してください」
8.チェックリストを増やせば、再発防止になる?
問題が発生すると、チェック項目を増やしたくなる場合があります。
例えば、検査漏れが発生したため、確認欄を追加したとします。
しかし、チェック項目が増えすぎると、確認作業そのものが負担になる可能性があります。
また、何を確認したのか分からないまま、形式的にチェックする状態になることも考えられます。
そこで、チェックリストを作る場合は、次のことを確認します。
何を確認するのか。
どのような基準で判定するのか。
いつ確認するのか。
誰が確認するのか。
異常が見つかったら、どう対応するのか。
結果をどこへ記録するのか。
このように、確認の目的を明確にすることが重要です。
ChatGPTには次のように質問します。
実践プロンプト⑥
「寸法不良の再発防止として、加工中の確認項目を整理したいです。チェック項目を増やすだけでなく、確認する目的、判定基準、実施タイミング、異常時の対応が分かる方法を考えてください」
9.暫定対策をいつ終了するか
再発防止では、恒久対策を決めるだけでなく、暫定対策をいつ終了するか考える必要があります。
例えば、寸法不良が発生したため、現在は全数検査を行っているとします。
その後、工具交換基準を見直し、加工方法を改善しました。
では、すぐに全数検査を終了してよいでしょうか。
必要な確認が終わっていなければ、早すぎる可能性があります。
例えば、
新しい加工条件で品質が安定しているか。
必要な数量を製作して評価したか。
材料ロットが変わっても問題ないか。
検査方法や測定器は適切か。
お客様の要求や承認条件を満たしているか。
こうした情報を確認する必要があります。
暫定対策を終了する条件を、事前に決めておくことも重要です。
実践プロンプト⑦
「寸法不良のため全数検査を実施しています。恒久対策を導入した後、全数検査を終了するか判断するために、必要な品質データ、検証期間、再現性、顧客要求、承認事項を整理してください」
暫定対策の終了と、恒久対策の実施完了は、必ずしも同じタイミングではありません。
10.対策を現場で実行できる形へ変える
再発防止策として、
「工具を適切な時期に交換する」
と決めたとします。
しかし、「適切な時期」とはいつでしょうか。
担当者によって判断が違えば、運用が安定しない可能性があります。
そこで、具体的な実施条件を考えます。
例えば、
工具の使用状況を記録する。
寸法の変化を確認する。
交換判断の基準を定める。
基準に達した場合の対応を決める。
工具交換後の初品を確認する。
といった方法です。
ただし、具体的な交換数量や時間については、実際の工具寿命や加工条件を確認する必要があります。
AIが適当な数値を決めることはできません。
実践プロンプト⑧
「工具交換を適切に行うという再発防止策を、現場で実行できる手順へ変えたいです。記録する項目、交換判断、作業担当、確認方法、異常時の対応を整理してください。交換周期は実測データから決める前提にしてください」
再発防止策は、誰が実施しても必要な判断ができる状態へ近づけることが大切です。
11.作業手順を変更するときの注意点
恒久対策によって、作業方法を変更する場合があります。
例えば、新しい工具交換基準を導入するとします。
その際、手順書を変更することも必要になるかもしれません。
しかし、手順書を書き換えただけでは、実際の現場へ定着したとは限りません。
新しい手順が作業者へ伝わっているか。
必要な工具や測定器が準備されているか。
作業時間に無理がないか。
旧版の手順書が残っていないか。
こうしたことを確認する必要があります。
また、作業者から実際の運用について意見を聞くことも役立ちます。
例えば、新しい測定手順では、測定器を取りに行く時間が増えてしまう場合があります。
その場合、測定器の配置を見直す方法も考えられます。
ChatGPTには次のように質問できます。
実践プロンプト⑨
「再発防止策として加工手順を変更します。手順書の改訂、関係者への説明、必要設備の準備、旧手順との切り替え、運用確認について、実施計画を整理してください」
12.担当者と期限を明確にする
対策を実施するとき、次のような問題が起こる場合があります。
「誰が実施するのか分からない」
「いつまでに実施するのか決まっていない」
「確認する担当者が決まっていない」
このような状態では、対策が計画だけで終わる可能性があります。
そこで、実施内容、担当者、期限、確認方法を整理します。
例えば、次のような表です。
| 実施内容 | 担当する役割 | 完了条件 |
|---|---|---|
| 工具交換基準の検討 | 加工技術担当 | 実測データをもとに基準案を作成 |
| 加工手順書の改訂 | 工程管理担当 | 承認済みの最新版を発行 |
| 新手順の説明 | 現場責任者 | 対象者への説明と理解確認 |
| 効果確認 | 品質担当 | 決めた評価条件で結果を確認 |
この表では、役割だけを記載しています。
実際に使用する場合は、担当者や期限、承認者なども明確にする必要があります。
ChatGPTには次のように依頼できます。
実践プロンプト⑩
「再発防止策について、実施内容、担当者、期限、必要な資料、完了条件、効果確認を整理した管理表を作成してください。対策を実施したことと、効果が確認されたことを別々に管理できるようにしてください」
13.効果確認は、何を測定すればよい?
恒久対策を実施したら、効果を確認します。
例えば、工具交換基準を変更したとします。
この場合、何を測定すればよいでしょうか。
まず、対策の目的を確認します。
今回の目的は、工具摩耗に関係する寸法不良を減らすことです。
そこで、次のような項目が考えられます。
加工数量ごとの寸法変化。
寸法不良の発生件数。
製造数量に対する不良率。
工具交換のタイミング。
工具の使用時間。
交換後の初品寸法。
これらを改善前後で比較します。
ただし、製品の種類や材料、設備条件が変わっていれば、単純な比較は難しくなる場合があります。
そこで、比較条件も記録します。
実践プロンプト⑪
「工具交換基準を変更した結果、寸法不良が減ったか確認したいです。改善前後で比較する測定項目、必要な製造数量、加工条件、材料ロット、測定方法などを整理してください」
14.不良率がゼロになれば、対策は成功?
例えば、再発防止策を実施した後、100個の製品を加工し、すべて合格したとします。
不良率は0%です。
では、これで再発防止が完成したと判断してよいでしょうか。
まだ分かりません。
今回の100個では不良が発生しなかったという事実は確認できます。
しかし、今後も不良が発生しないことまで証明されたわけではありません。
例えば、工具の使用時間が短かった可能性があります。
材料ロットが一つだけだったかもしれません。
長期間の加工による変化を、まだ確認できていない場合もあります。
そのため、再発防止の効果を判断する際には、実際の問題が発生していた条件を再現できているか考える必要があります。
また、不良率だけでなく、寸法推移や工程の安定性なども確認することが役立ちます。
実践プロンプト⑫
「再発防止策を実施した後、100個の製品で不良が発生しませんでした。この結果から確認できることと、まだ確認できていないことを整理してください。継続的な品質の安定性を確認するための追加条件も考えてください」
15.改善によって別の問題が発生していない?
再発防止策では、一つの問題を改善した結果、別の負担や問題が発生することがあります。
例えば、工具交換頻度を増やした場合です。
寸法不良は減るかもしれません。
しかし、工具費が増加する可能性があります。
交換作業による設備停止時間も増えるかもしれません。
また、工具交換のたびに寸法補正や初品確認が必要になる場合もあります。
そのため、再発防止の効果を評価するときは、品質だけでなく、作業全体への影響を確認することが重要です。
例えば、
不良率。
工具費。
交換作業時間。
設備停止時間。
作業者の負担。
などです。
ただし、費用を減らすために、必要な品質や安全性を犠牲にしてよいわけではありません。
実践プロンプト⑬
「工具交換頻度を増やした結果、寸法不良が減少しました。品質改善の効果に加えて、工具費、段取り時間、設備停止、作業負荷への影響を整理し、より適切な交換基準を検討するための項目を考えてください」
16.再発防止策が守られなくなる理由
対策を導入した直後は、問題なく運用されていたとします。
しかし、数か月後には、元の作業方法へ戻ってしまった場合です。
なぜ、このようなことが起こるのでしょうか。
例えば、新しい手順が実際の作業に合っていなかった可能性があります。
必要な測定器が近くにない。
記録作業が複雑すぎる。
作業時間が足りない。
手順が変更された理由が共有されていない。
このような問題があるかもしれません。
ただし、実際の原因は確認する必要があります。
そこで、対策が運用されなくなった理由を調べます。
ChatGPTには次のように質問します。
実践プロンプト⑭
「再発防止策として導入した新しい作業手順が、数か月後に十分運用されなくなりました。担当者の意識の問題と決めつけず、作業時間、設備配置、手順の分かりやすさ、記録負担、教育、管理方法などの観点から確認項目を整理してください」
重要なのは、対策を守らなかった人を探すことだけではありません。
なぜ継続できなかったのかを理解し、運用できる方法へ改善することです。
17.同じ問題が別の設備でも起きる可能性
例えば、設備Aで工具摩耗による寸法不良が発生し、再発防止策を実施したとします。
しかし、同じような加工を行っている設備Bや設備Cにも、似た問題が発生する可能性があります。
そこで、ほかの設備へも改善方法を適用できるか検討します。
ただし、設備や工具、加工条件が異なれば、同じ交換基準が適切とは限りません。
そのため、対策の考え方を共有しながら、各設備の条件を確認する必要があります。
例えば、
工具寿命の確認方法。
寸法変化の記録。
異常時の対応。
工具交換後の検査。
こうした仕組みを共通化する方法があります。
ChatGPTには次のように依頼できます。
実践プロンプト⑮
「設備Aで実施した工具摩耗による寸法不良の再発防止策について、設備Bや設備Cへ横展開できる内容を整理してください。共通化できる管理方法と、設備ごとに検証が必要な加工条件を分けてください」
このような考え方を「横展開」と呼ぶことがあります。
18.ChatGPTで再発防止報告書を作成する
再発防止策を実施したら、その経緯を文書へまとめることも重要です。
例えば、お客様へ報告する場合です。
また、社内で同じ問題を繰り返さないために記録する場合もあります。
報告書には、次のような内容が考えられます。
| 項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 発生した問題 | 何が起きたのか |
| 影響範囲 | 対象製品や数量 |
| 暫定対策 | 影響を抑えるために行った対応 |
| 原因調査 | 調査内容と確認結果 |
| 確認された原因 | 根拠をもとに特定した内容 |
| 恒久対策 | 再発を減らすための改善内容 |
| 実施記録 | 実施日、担当、変更内容 |
| 効果確認 | 測定結果と比較条件 |
| 残る課題 | 未確認事項や継続監視 |
| 横展開 | ほかの工程へ適用する内容 |
ChatGPTには次のように依頼できます。
実践プロンプト⑯
「品質不良について、暫定対策、原因調査、恒久対策、実施記録、効果確認、残る課題を整理した再発防止報告書を作成してください。実施済みの内容と、計画中の内容を明確に区別してください」
報告書では、実施した事実と、期待している効果を混同しないことが大切です。
19.製造業以外でも再発防止策は使える
今回の考え方は、製造業だけに限りません。
例えば、社内で見積書の送付先を間違えたとします。
その場の対応として、正しい送付先へ改めて連絡することが考えられます。
必要に応じて、誤送信による情報への影響も確認する必要があります。
しかし、それだけでは同じミスが繰り返される可能性があります。
そこで、なぜ送付先を間違えたのか調べます。
例えば、
宛先を手入力していた。
連絡先の登録が重複していた。
送信前の確認方法が明確でなかった。
といった原因の候補が考えられます。
これらを確認したうえで、再発防止策を検討します。
また、納期連絡の遅れや、社内の情報共有漏れなどにも同じ考え方を応用できます。
重要なのは、発生した問題を修正することと、同じ問題が再び発生しにくい仕組みをつくることを分けて考えることです。
20.今日の実践課題|再発防止策を設計してみよう
今回は、ChatGPTを使って、架空の寸法不良について再発防止策を考える練習をします。
ステップ① 発生した問題を整理する
ChatGPTに次のように質問します。
「図面寸法20.00±0.05mmの部品について、加工後半に20.08mmの不良が発生しました。現在の問題を整理してください」
ステップ② 暫定対策を考える
「対象製品の確認、加工停止、必要な検査、出荷状況の確認など、影響拡大を防ぐための暫定対策を整理してください」
ステップ③ 確認された原因を整理する
「調査の結果、工具摩耗による寸法変化が確認され、工具交換基準と測定間隔が明確でないことも分かりました。この情報を整理してください」
ステップ④ 恒久対策の候補を考える
「工具交換基準、寸法測定、異常時の対応、記録方法について、恒久対策の候補を考えてください」
ステップ⑤ 対策の実行計画を作る
「各対策について、担当する役割、必要な資料、実施手順、完了条件を整理してください」
ステップ⑥ 効果確認を計画する
「改善前後の寸法推移、不良率、工具使用時間、作業負荷などを比較する計画を考えてください」
ステップ⑦ 暫定対策の終了条件を決める
「全数検査などの暫定対策を終了するために、確認すべき品質データと承認事項を整理してください」
ステップ⑧ 横展開を考える
「ほかの設備や類似製品にも適用できる管理方法があるか検討してください」
ステップ⑨ 報告書にまとめる
「問題、暫定対策、原因、恒久対策、実施状況、効果確認、残る課題をまとめた報告書を作成してください」
この練習では、対策案を多く出すことよりも、原因に対応した対策を選び、実際に効果を確認する方法を考えることが目的です。
21.再発防止策を設計するときのAIの役割
ChatGPTは、再発防止策の候補を考えたり、実施計画を整理したり、報告書を作成したりできます。
しかし、実際の現場で問題が発生した原因を、自動的に確認できるわけではありません。
また、AIが提案した対策が、技術的に実現可能とは限りません。
例えば、設備の制御方法を変更する提案があったとしても、実際の機械仕様や安全条件を確認する必要があります。
工具交換周期についても、材料、工具、加工条件、設備状態によって異なるため、実測データに基づく判断が重要です。
さらに、再発防止策の効果は、実際に運用して確認する必要があります。
AIは、対策の設計や管理を支援する道具です。
現場の状況を理解し、技術的な判断を行い、責任を持って改善を進めるのは人間です。
22.再発防止の本当の目的は何でしょうか?
最後に、再発防止という言葉について考えてみましょう。
再発防止策を作成すると、問題に対応したという安心感が生まれることがあります。
報告書を提出した。
手順書を変更した。
担当者へ説明した。
チェック項目を追加した。
しかし、それだけで問題が再発しなくなったとは限りません。
実際に現場で運用されているか。
必要な品質が確保できているか。
作業の負担が増えすぎていないか。
時間が経過しても改善した状態が続いているか。
こうしたことを確認する必要があります。
また、一度決めた再発防止策を、永遠に変更してはいけないわけではありません。
より良い方法が見つかれば、改めて検討することもできます。
重要なのは、決めた対策を守ること自体ではなく、問題が発生しにくい仕事の進め方を維持することです。
まとめ|対策を決めることから、改善が続く仕組みへ
今回は、ChatGPTを使って再発防止策を設計する方法を学びました。
重要なポイントは、次のとおりです。
- 暫定対策と恒久対策の目的を区別する。
- 問題が発生したときは、まず影響範囲を確認する。
- 確認された原因と対策の対応関係を明確にする。
- 注意喚起だけでなく、作業手順や設備の仕組みを改善する方法を考える。
- チェック項目を増やす場合は、目的と判定基準を明確にする。
- 現場で実行できる具体的な手順へ落とし込む。
- 担当者、期限、完了条件、効果確認を整理する。
- 暫定対策を終了する条件を明確にする。
- 対策後は、不良率や寸法推移などを使って効果を確認する。
- 改善した状態を継続し、必要に応じてほかの工程へ展開する。
仕事では、どれだけ注意していても問題が発生することがあります。
しかし、その問題を経験として終わらせず、原因を理解し、次の仕事へ活かすことができます。
そのためには、対策を実施したという事実だけで満足しないことが重要です。
実際に問題が減ったのか。
同じ品質を継続して確保できるのか。
現場で無理なく実行できるのか。
必要なときに、さらに改善できるのか。
こうしたことを確認しながら、仕事の仕組みを育てていく必要があります。
ChatGPTは、原因と対策の整理、実施計画の作成、効果確認の検討を支援できます。
しかし、改善の成果は、現場で実際に行動し、結果を確かめることで初めて分かります。
再発防止とは、同じ問題が二度と起きないと宣言することではありません。確認された原因に対応し、問題が発生しにくい仕組みをつくり、その効果を継続して確かめることです。
AIと一緒に考え、現場で改善し、結果を検証する。
そして、改善した方法を次の仕事へ活かしていく。
その積み重ねが、中級編で身につけていきたい実践的なAI活用です。
次回【中級編・第37回】
「ChatGPTで作業ミスを防ぐ仕組みを考える方法|ポカヨケ・作業手順・ヒューマンエラー対策の実践講座」
次回は、人が作業する中で発生する確認漏れや誤操作、取り違えなどについて考えます。
単に注意力を高める方法ではなく、作業環境、道具、表示、確認手順などを見直し、ミスが発生しにくい仕事の仕組みをChatGPTと一緒に考えていきましょう。