共同体から「家」へ、何が日本人を変えたのか
昔の日本では、まず地域があった。
山がある。
川がある。
海がある。
そこに人が集まり、一緒に暮らす。
家族は、その大きな共同体の中にあった。
私は、これが日本の古い形だったと思っています。
ところが、時代が進むと少しずつ変わります。
農業が広がる。
土地を管理する。
水を引く。
収穫物を蓄える。
技術を受け継ぐ。
役割を次の世代へ渡す。
そうなると、
地域全体で持っていたものの中に、
「この家が受け継ぐもの」
が増えていく。
最初は仕事だった。
次に道具。
土地。
地位。
祭祀。
人とのつながり。
それらが家ごとに固定されていく。
すると、
地域の中に家がある社会から、
家が集まって地域を作る社会
へ少しずつ変わっていく。
さらに古墳時代になり、地域連合が大きくなると、一族や氏の力も強くなる。
誰の家か。
誰の子か。
誰につながるか。
それが社会の中で意味を持つようになる。
そして近代になると、「家」はさらに制度として明確になります。
明治期には戸籍や民法などを通じて、家族や家の位置づけが強く制度化されていきました。国立国会図書館サーチ
私は、日本人を変えたものは一つではないと思っています。
農業。
財産。
継承。
身分。
国家。
法律。
それらが何層にも積み重なった。
その結果、
地域で生きる人
から、
家に属する人
という意識が強くなっていった。
でも、古い共同体の感覚が全部消えたわけではありません。
江戸の町や村にも残った。
祭りにも残った。
「お互いさま」にも残った。
よその子を叱る文化にも残った。
だから日本人の中には今も、
家を大切にする感覚と、
地域を家族のように感じる感覚の両方がある。
私は、それは矛盾ではないと思っています。
縄文以来の共同体の上に、弥生以降の「家」が積み重なった。
今の日本人の家族観は、その両方でできているのだと思います。