現物からつくる仕事には、見る力が必要になる
図面がない部品を製作するとき、頼りになるのは現物です。
今使われている部品を見る。
寸法を測る。
形を確認する。
取り付け方を見る。
周辺の部品との関係を見る。
そこから、必要な情報を拾っていきます。
現物から部品をつくる仕事では、ただ寸法を測れば終わりというわけではありません。
なぜ、この形なのか。
なぜ、ここだけ削れているのか。
なぜ、この部分に穴があるのか。
なぜ、この面だけ傷んでいるのか。
見るべきところはたくさんあります。
たとえば、古い設備で長く使われた部品なら、現在の寸法が元の寸法とは限りません。
摩耗して小さくなっている。
穴が広がっている。
何度も締め付けられて変形している。
一部だけ削れている。
その状態をそのまま新しい部品に写してしまえば、交換しても本来の動きに戻らない可能性があります。
そこで、周辺部品との隙間や位置関係も確認します。
相手側の部品も摩耗していないか。
どこを基準に取り付けるのか。
どこが動く部分なのか。
どこは固定されているのか。
場合によっては、使用している人の話が大きな手がかりになります。
「ここがよく減る」
「最近、少し動きが悪い」
「以前より音が出るようになった」
「交換するとき、ここがきつい」
現場の言葉から、図面にはない情報が見えてきます。
研究設備や実験装置でも、現物から部品を製作することがあります。
昔つくられた装置。
社内で改造を重ねた設備。
一点だけ特別につくられた治具。
こうしたものは、正式な図面が残っていない場合があります。
それでも、必要な部品がなければ仕事は止まります。
だから、現物を見て考える。
必要なところを測る。
用途を聞く。
分からない部分は確認する。
そして、製作できる形へ整理していきます。
(株)アリスでは、現物からの部品製作を、単なるコピー作業とは考えていません。
今ある形を読む。
使われ方を読む。
摩耗の跡を見る。
周辺との関係を見る。
そのうえで、新しい部品として形にする。
図面がない仕事では、見ることそのものが技術になります。
ものづくりは、描かれた情報だけから始まるとは限りません。
目の前にある部品から、次につくるものを考える仕事もあります。