田村麻呂は、いつから「鬼を倒す英雄」になったのか
2014.06.28
坂上田村麻呂は実在の武将です。
でも後世になると、ただの武将ではなくなります。
鬼を倒す。
山賊を退治する。
寺を建てる。
神社を建てる。
各地の伝承に現れる。
実際の一人の人間では、とても回り切れないほど多くの場所に足跡が残ります。
これは面白い変化です。
歴史上の人物が、いつの間にか物語の装置になる。
「強い敵を倒す人物」が必要な場所に、田村麻呂の名前が入っていく。
その結果、もともとその土地にあった別の伝承や人物が、「田村麻呂に倒された鬼」という形へ変わった可能性もあります。
そう考えると、田村麻呂伝説を調べる時に見るべきなのは、田村麻呂本人だけではありません。
その土地では、彼が来る前に誰が語られていたのか。
鬼とされた人物は何者だったのか。
なぜその地域に鬼退治の話が必要だったのか。
そこを見る必要があります。
英雄の物語は、勝者の人物を大きくするだけではありません。
同時に、敗者側の記憶を別の形へ変えてしまうことがあります。
人だった者が鬼になる。
地域の首長だった者が盗賊になる。
その土地を守った人物が、「退治される側」になる。
田村麻呂伝説の面白さは、英雄そのものより、その英雄によって何が隠れたのかを見るところにあるのかもしれません。
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