精密切削加工で寸法精度を左右する「熱」の管理
精密切削加工では、工作機械の精度が高ければ、そのまま高精度な部品が完成するわけではありません。
加工中に管理しなければならない要素の一つが「熱」です。
CNCマシニングセンタやNC旋盤では、工具と材料が接触して切削が行われます。その際、切削抵抗や摩擦によって熱が発生し、工具、ワーク、工作機械それぞれの温度が変化します。
問題になるのは、材料が温度によって膨張・収縮することです。
例えば加工中にワークの温度が上昇した状態で寸法を仕上げると、加工直後には狙い通りであっても、常温まで戻ったときに寸法が変化することがあります。特に寸法公差が厳しい部品では、わずかな温度変化も無視できません。
プラスチック樹脂では、金属と比較して熱による寸法変化や変形の影響を受けやすい材料もあります。薄肉形状や長尺形状では、局部的な発熱がソリや変形につながることもあります。
そこで重要になるのが、材料と形状に合わせた加工条件です。
工具の回転数を上げれば良い、送りを遅くすれば良いという単純なものではありません。回転数、送り速度、切込み量、工具径、刃数、切削方法、クーラントなどを組み合わせ、切削熱を必要以上に蓄積させない条件を設定する必要があります。
また、荒加工から仕上げ加工まで一気に進めるのではなく、形状や材料によっては加工途中で状態を確認し、熱や内部応力による変形を見ながら最終寸法へ仕上げます。
(株)アリスでは、プラスチック樹脂やアルミなど、それぞれの材料特性と製品形状を踏まえて加工条件を設定しています。
精密切削加工で重要なのは、機械を動かすことではありません。
「加工中に材料がどのような状態になっているのか」を考えながら、寸法が安定する条件を組み立てることが、高精度な試作部品や治具を安定して製作するための技術だと考えています。