経験を、次の人が学べる技術に変える。
以前、透明樹脂の仕上げ加工を35年間専門にされてきた経験者の方が、(株)アリスへ来社されたことがあります。
その方が、机の上に置いてあったポリカーボネートの透明サンプルを手に取りました。
しばらく仕上がりを見たあと、
「これは30年選手ですか。それとも20年くらいですか。」
と尋ねられました。
そのサンプルを製作したのは、長年経験を積んだエンジニアではありません。
インターンシップで来ていた、製造未経験の大学生でした。
しかも、透明処理の練習を始めてから、まだ2日半ほどでした。
もちろん、偶然きれいに仕上がったわけではありません。
まず、練習用のサンプルを磨きやすい形状にする。
透明に仕上げるまでの工程を細かく分ける。
どの順番で進めるのか。
どの道具を使うのか。
どの状態になれば次へ進むのか。
一つひとつを、できるだけ分かりやすく整理していました。
経験者にとっては感覚的に行っていることでも、初めての人には分かりません。
だから、
「きれいになるまで磨く。」
ではなく、
「ここまでできたら、次の工程へ進む。」
と判断できるようにする。
作業をできるだけシンプルに分解し、同じ手順で繰り返せるようにする。
その仕組みがあったからこそ、未経験の学生でも短期間で高いレベルの仕上がりまで到達することができました。
ただし、すべての技術が数日で身につくわけではありません。
複雑な形状になれば、磨き方も変わります。
材質が変われば、力の掛け方や使用する道具も変わります。
加工状態によっては、同じ手順では対応できないこともあります。
そこでは、これまでの経験から、
「今回は少し方法を変えたほうがいい。」
と判断する力が必要になります。
(株)アリスが考える技術の習得は、
「手順を覚えれば終わり。」
ではありません。
最初は、基本となる方法をきちんと覚える。
同じ方法を繰り返し、安定してできるようにする。
そのあとで、材料や形状の違いを経験する。
うまくいかなかった理由を考える。
もっと良い方法がないか試してみる。
そうして少しずつ、自分で判断できる範囲を広げていきます。
経験は、とても大切です。
でも、長く経験すれば、それだけで技術が次の人へ伝わるわけではありません。
経験の中で得たものを、
「なぜ、こうするのか。」
「どこを見ればいいのか。」
「何が違えば、方法を変えるのか。」
と整理して、次の人が学べる形にすることも必要です。
(株)アリスでは、経験や感覚だけに頼るのではなく、できるだけ技術を分かりやすく整理し、再現できる形にしていくことを大切にしています。
そして、その土台の上に一人ひとりが経験を積み、自分自身の判断力や応用力を育てていく。
経験を個人の中だけに残さず、次の人が学べる技術へ変えていく。
それが、(株)アリスがこれからのものづくりで大切にしている技術の育て方です。