移住してきた人が、この土地を自分たちの国として守るまで【前編】
饒速日さまたちは、いったいどんな気持ちでこの土地へやって来たのだろう。
私は、彼らを征服者というより、技術や知識を持って移住してきた人たちだったのでは
ないかと思っています。
土地を開き、道具を作り、金属を扱い、農業や暮らしを支える。
今で言えば、技術者や職人を含んだ古代のエンジニア集団です。
知らない土地へ来た人が、最初から受け入れられるわけではありません。
でも、困っていることを解決する。
今までできなかったことをできるようにする。
暮らしを少しずつ豊かにする。
そんなことを積み重ねていけば、よそ者だった人たちも、やがてその土地になくては
ならない存在になっていったのではないでしょうか。
現地を歩いていると、私はどうしても彼らを神話の中だけの人物とは思えません。
山があり、川があり、集落があり、家族が暮らしたであろう土地がある。
長髄彦がいて、妻がいて、子どもがいて、その周囲にも多くの人たちがいた。
そこで働き、食べ、笑い、悩み、年を取り、次の世代へ何かを残した。
そんな普通の生活が、少しずつ見えてくるような気がします。
最初は移住先だった土地も、子どもが生まれ、仲間が増え、暮らしが続けば、
やがて故郷になります。
そして故郷になれば、守ろうとする。
私はそこに、饒速日さまたちの強さを感じます。
土地を奪ったから偉いのではない。
持っていた技術や知識を、人のために使った。
その土地で必要とされる仕事をした。
そして、自分たちの子孫が暮らしていく場所として守ろうとした。
それこそが、彼らの大きな功績だったのではないでしょうか。
何千年たっても、ものづくりの本質はあまり変わりません。
技術は、持っているだけでは意味がない。
誰かの役に立って初めて、価値になる。
遠い昔、この土地でそんな仕事をしていた人たちがいたのだとしたら、
同じものづくりに関わる者として、私は素直に敬意を感じます。