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大嶽丸という鬼は、なぜ東北へ移動したのか

2014.02.28

鈴鹿の鬼として有名なのが、大嶽丸です。

ところがこの鬼の話を調べると、不思議なことが起こります。

大嶽丸の物語は鈴鹿だけでは終わりません。

東北にも広がっています。

国立国会図書館のレファレンス資料でも、大嶽丸には「大武丸」「大竹丸」など
複数の表記があり、鈴鹿だけでなく東北各地にも伝承が存在することが紹介されています。

田村麻呂も同じです。

岩手県には、

「田村麻呂がこの山へ来た」
「神社を建てた」
「鬼を退治した」

といった伝承が広い範囲に残ります。

たとえば岩手山についても、坂上田村麻呂が国家鎮護のために阿弥陀を安置したという
伝承が残っています。

岩手県立図書館も、これはあくまで伝承として紹介しています。

面白いのは、

実在した一人の武将の足跡を追っているはずなのに、

途中から田村麻呂本人の人生では説明できないほど、物語が広がっていくことです。

これは何を意味するのでしょう。

田村麻呂という名前が、

「中央から来て土地を平定する英雄」

の象徴になった可能性があります。

すると、その土地に以前からあった山の神や敵対者の伝承が、田村麻呂物語へ吸収されていく。

昔からいた土地の神。

地域の首長。

山の民。

盗賊。

正体の分からなくなった古い伝承。

それらが後世の物語では、

一人の「鬼」になってしまうこともあり得ます。

大嶽丸が実在の誰かだった、と言いたいわけではありません。

今の資料では、そんなことは証明できません。

でも、「なぜ鈴鹿の鬼と東北の鬼が、同じ田村麻呂の物語に入っていったのか」

これは追いかける価値があります。

もしかすると鬼を追うことは、

失われた人物を探すことではなく、

消えていった地域の記憶を探すことなのかもしれません。

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