同じバリ取りでも、材料が変われば答えも変わる。
バリ取りという作業は、一見すると同じことの繰り返しに見えます。
機械加工後に残ったバリを、刃物や専用工具で取り除く。
基本的な目的は同じです。
でも、実際には材料が変わるだけで、作業の感覚は大きく変わります。
(株)アリスでは、アクリル(PMMA)、ABS、MCナイロン、ポリカーボネート(PC)、POM、アルミなど、さまざまな材料を扱っています。
比較的バリを取りやすい材料もあれば、少し注意が必要な材料もあります。
例えば、同じPOMでも条件によってバリの取りやすさは変わります。
粘りが強く、刃物を当ててもバリが逃げるような材料では、単純に刃物を強く当てればいいわけではありません。
PBTやガラス繊維を含んだ材料では、また違う注意が必要です。
硬さや脆さがあるため、無理にバリを取ろうとすると、欠けや白化につながる場合があります。
つまり、
「バリを取る。」
という作業は同じでも、
どのくらいの力を掛けるのか。
どの方向から刃物を当てるのか。
どの工具を使うのか。
どこまで仕上げるのか。
その判断は材料や形状によって変わります。
最初から、その違いが分かる人はいません。
だから、未経験から始める場合は、まず一つの材料で基本を身につけます。
何度も繰り返して、
「この材料なら、このくらい。」
という基準を自分の中につくります。
一つ基準ができれば、次の材料を扱うときに比較できます。
いつもの材料より硬い。
少し粘りがある。
刃物を入れたときの感触が違う。
欠けやすい。
そうした違いを一つずつ経験していきます。
すると、材料が変わっても、
「いつものやり方を、そのまま使うのは違うかもしれない。」
と考えられるようになります。
(株)アリスでは、こうした感覚を「その人にしか分からないもの」のままにしたくないと考えています。
どの材料で、どのような現象が起きたのか。
どんな方法なら安定したのか。
何に注意すればよかったのか。
できるだけ整理し、次の仕事でも使える判断材料として残していきます。
エンジニアが行っているのは、複雑に見える仕事を分解していくことです。
材料の性質。
形状。
刃物。
力の掛け方。
作業する方向。
一つずつ考えていけば、「感覚だけの仕事」に見えていたものも、少しずつ理解できる仕事になります。
だから(株)アリスでは、バリ取りを特別な才能がなければできない仕事とは考えていません。
一つの材料を覚える。
違う材料を経験する。
違いを考える。
また試してみる。
その繰り返しによって、扱える材料が少しずつ増えていきます。
最初は一種類だった自分の基準が、経験するたびに増えていく。
そして、初めて見る材料や形状でも、これまでの経験を使って考えられるようになる。
手加工の技術とは、そうした小さな判断を積み重ねていくことでもあると、(株)アリスは考えています。