一品加工では、加工する前に考える
一品ものの部品を製作するとき、機械を動かしている時間だけが仕事ではありません。
むしろ、加工を始める前にどれだけ考えられるかが重要になることがあります。
研究開発用の部品や試作品、設備部品、専用治具などは、同じものを大量につくる量産加工とは条件が違います。
一個だけ。
数個だけ。
今回だけ必要。
そういう仕事も少なくありません。
量産品なら、最初に条件を決め、その後は同じ加工を繰り返すことができます。
一品加工では、毎回違う形や材質、寸法に向き合うことになります。
そのため、加工前に考えることが増えます。
どこから削るのか。
どこを基準にするのか。
材料をどう固定するのか。
途中で形が変わったとき、次の工程でつかめるのか。
薄くなった部分が変形しないか。
工具が届くのか。
加工する順番を間違えると、後の工程ができなくならないか。
一つひとつ確認していきます。
特にプラスチック加工では、樹脂材料の特徴も考える必要があります。
材料によっては、加工中の熱による影響を受けやすいものがあります。
薄い形状では、削る順番によって反りや変形が出ることもあります。
強く固定しすぎれば、材料そのものが変形してしまう場合もあります。
だから、金属加工とまったく同じ考え方では進められないことがあります。
長年の経験が役に立つ場面もあります。
しかし、経験があれば何も考えなくていいわけではありません。
むしろ経験があるからこそ、
「この形なら、ここが難しそうだ」
「この材料なら、少し気をつけた方がいい」
「この順番では最後につかめなくなる」
と、加工前に想像できることが増えていきます。
そして、今まで経験したことのない形であれば、その場でまた考えます。
必要なら試し加工をする。
工具を変える。
加工方法を変える。
治具をつくる。
外部の技術を借りる。
一品加工では、決められた方法を繰り返すだけでは対応できない仕事があります。
だからこそ、技術者の仕事は機械操作だけではありません。
加工する前に考える。
加工しながら考える。
加工した後にも確認する。
その積み重ねで、一つの部品を完成させていきます。
「どう削るか」を考えるところから、すでに加工は始まっています。