ChatGPTソラ先生と学ぶ!中級者のためのAI実践講座【第34回】ChatGPTで品質不良の発生傾向を分析する方法|パレート図・層別分析・重点改善テーマの見つけ方
こんにちは、ソラ先生です。
前回は、ChatGPTを使って不良率や工程能力を分析し、Cp・Cpkなどの指標から製造工程の状態を考える方法を学びました。
今回は、さらに実践的な品質改善へ進みましょう。
テーマは「品質不良の発生傾向を分析する方法」です。
皆さんは、こんな経験はありませんか?
「不良品が発生しているけれど、何から改善すればよいか分からない」
「寸法不良も傷もバリも発生していて、対策が追いつかない」
「特定の設備で不良が多いように感じる」
「材料が変わったときに、不良が増えている気がする」
「毎月の不良件数は集計しているのに、改善につながっていない」
品質改善では、不良品を減らすことが重要です。
しかし、すべての問題へ同時に取り組むことは簡単ではありません。
限られた時間、人員、設備の中で、どの問題を優先するべきか考える必要があります。
また、不良の件数が多いという理由だけで、改善する対象を決めてよいとは限りません。
例えば、外観上の軽微な傷が50件発生していたとします。
一方、組立時に重大な機能不良を引き起こす寸法不良が3件発生していたとしましょう。
件数だけなら、傷の方が圧倒的に多くなります。
しかし、品質への影響やお客様への影響を考えると、寸法不良を優先する必要があるかもしれません。
そこで役立つのが、パレート図や層別分析です。
ChatGPTを使えば、不良データを整理し、発生傾向を可視化し、改善するべき問題を検討できます。
今回は、**「不良を分類する → パレート図で全体像を見る → 層別分析で特徴を調べる → 影響度を考える → 改善テーマを選ぶ → 対策を実行する → 効果を確認する」**という流れを学んでいきましょう。
1.不良データを集めるだけでは、なぜ改善できない?
例えば、ある工場で毎月の不良件数を記録しているとします。
4月は60件。
5月は55件。
6月は50件。
数字を見ると、不良件数が減っています。
しかし、この数字だけで、何が改善されたのか分かるでしょうか。
まだ分かりません。
例えば、製造数量が減っただけかもしれません。
特定の製品の受注がなくなった可能性もあります。
あるいは、実際に加工方法を改善した効果かもしれません。
そこで、単純な件数だけでなく、何が発生しているのかを詳しく確認する必要があります。
例えば、
寸法不良。
傷。
バリ。
変形。
異物付着。
加工漏れ。
といった分類です。
また、どの設備や工程で発生したのかを確認することも重要です。
ChatGPTには次のように相談できます。
実践プロンプト①
「製造現場で発生した不良を分析したいです。不良の種類、発生工程、設備、材料、製造数量、検査結果など、改善へつなげるために必要な記録項目を整理してください」
ここで重要なのは、数字を集めること自体を目的にしないことです。
品質データは、何が起きているのか理解し、改善すべき問題を見つけるために活用します。
2.実践例|100件の品質不良を分析する
ここからは、架空の製造現場を題材に考えてみましょう。
ある会社で、1か月間に次の不良が記録されました。
| 不良の種類 | 発生件数 |
|---|---|
| 傷 | 35件 |
| 寸法不良 | 25件 |
| バリ | 20件 |
| 変形 | 10件 |
| 異物付着 | 6件 |
| 加工漏れ | 4件 |
| 合計 | 100件 |
※学習用の架空データです。不良分類ごとの発生件数を数えており、不良品数とは限りません。
この表から、どのようなことが分かるでしょうか。
最も多いのは傷の35件です。
次に寸法不良の25件。
その次がバリの20件です。
この三つを合計すると、
35+25+20=80件。
つまり、全体100件のうち80件が、この三つの分類に集中しています。
そこで、これらを改善の候補として詳しく調べることが考えられます。
ただし、この時点で原因まで分かったわけではありません。
例えば、傷の発生件数が多いことは分かりますが、なぜ傷が発生しているのかは分かりません。
この違いが重要です。
3.パレート図とは何でしょうか?
パレート図とは、問題の発生件数や費用などを、大きい順に並べて比較するグラフです。
一般的には、棒グラフで各項目の大きさを表し、累積比率を折れ線で示します。
例えば、今回の不良データを件数順に並べると、次のようになります。
<text weight="medium">不良分類別の発生件数(架空データ)</text>
<Chart content={{"chartType":"bar","meta":{"description":"件数の多い順に並べたパレート分析の棒グラフ部分。全100件。"},"xKey":"category","series":[{"dataKey":"count","label":"発生件数","valueSuffix":"件"}],"yAxisMin":0,"data":[{"category":"傷","count":35},{"category":"寸法不良","count":25},{"category":"バリ","count":20},{"category":"変形","count":10},{"category":"異物付着","count":6},{"category":"加工漏れ","count":4}]}}/>
この棒グラフを見ると、発生件数の多い項目が分かります。
さらに、累積比率を計算すると、全体のどの程度を上位の項目が占めているのか分かります。
例えば、上位三つの不良分類を改善できれば、全体の不良件数へ大きく影響する可能性があります。
ただし、すべての不良を完全になくせるという意味ではありません。
実際にどの程度改善できるかは、原因や実施する対策によって変わります。
4.累積比率を計算してみよう
累積比率とは、上位から順番に件数を合計し、全体に対する割合を求めたものです。
今回のデータでは、合計が100件なので、計算しやすくなっています。
| 不良の種類 | 件数 | 構成比 | 累積比率 |
|---|---|---|---|
| 傷 | 35 | 35% | 35% |
| 寸法不良 | 25 | 25% | 60% |
| バリ | 20 | 20% | 80% |
| 変形 | 10 | 10% | 90% |
| 異物付着 | 6 | 6% | 96% |
| 加工漏れ | 4 | 4% | 100% |
例えば、傷と寸法不良を合計すると60件です。
全体100件のうち60%を占めています。
さらにバリを加えると80件になり、全体の80%です。
このように、パレート図によって問題の集中度を確認できます。
ただし、必ず上位20%の項目が80%の問題を占めるわけではありません。
「80対20」という考え方は知られていますが、実際の品質データがその比率になるとは限りません。
重要なのは、現実のデータから分布を確認することです。
実践プロンプト②
「不良分類ごとの発生件数から、件数の多い順に並べ、構成比と累積比率を計算してください。上位の項目が全体の何%を占めているか整理し、パレート図を作成してください」
5.Excelでパレート分析を行う
今回のような集計は、Excelでも行えます。
例えば、A列に不良分類、B列に発生件数を入力します。
B2からB7に各分類の件数が入力されているとします。
まず、件数を多い順に並べ替えます。
次に、C列で構成比を計算します。
C2には次の式を入力します。
=B2/SUM($B$2:$B$7)
これで、各分類が全体に占める割合を求められます。
さらに、D列で累積比率を計算します。
D2には次の式を入力します。
=SUM($C$2:C2)
この式を下の行へコピーすると、累積比率を求められます。
Excelの表示形式をパーセントにすれば、割合が分かりやすくなります。
グラフでは、件数を棒グラフ、累積比率を折れ線グラフとして表示する方法があります。
ChatGPTには、Excelで使用する関数やグラフ作成の手順を質問できます。
実践プロンプト③
「Excelで不良分類別のパレート図を作りたいです。発生件数の集計、降順の並べ替え、構成比、累積比率の計算、棒グラフと折れ線グラフの組み合わせについて、初心者にも分かる手順を説明してください」
6.発生件数が多い不良から改善すればよい?
ここで、重要な問題があります。
今回のデータでは、傷が35件で最も多くなっています。
では、最初に傷の改善へ取り組むべきでしょうか。
必ずしもそうとは限りません。
例えば、傷については軽微なものが多く、簡単な手直しで対応できるとします。
一方、寸法不良は、お客様の組立工程へ影響し、再製作が必要になる場合があるとしましょう。
この場合、発生件数だけで優先順位を決めることは適切ではないかもしれません。
また、加工漏れは4件しかありませんが、それが製品の機能や安全性に関わる重要な問題だった場合、優先して対策する必要があります。
つまり、件数の多さと、問題の重大性は分けて考える必要があります。
ChatGPTには次のように相談します。
実践プロンプト④
「不良分類別の発生件数では傷が最も多くなっています。しかし、寸法不良や加工漏れは製品の機能へ影響する可能性があります。件数だけでなく、品質への影響、顧客への影響、再製作費用などを考慮して、改善の優先順位を検討してください」
7.不良による損失金額も考える
発生件数だけでなく、不良による損失を金額で考える方法もあります。
例えば、次のような架空の条件を考えます。
| 不良分類 | 件数 | 1件あたりの平均損失 | 損失合計 |
|---|---|---|---|
| 傷 | 35 | 500円 | 17,500円 |
| 寸法不良 | 25 | 5,000円 | 125,000円 |
| バリ | 20 | 300円 | 6,000円 |
| 変形 | 10 | 8,000円 | 80,000円 |
| 異物付着 | 6 | 1,000円 | 6,000円 |
| 加工漏れ | 4 | 15,000円 | 60,000円 |
| 合計 | 100 | ― | 294,500円 |
※架空の試算です。損失金額の範囲は各分類で同じ基準とし、二重計上はないものとします。
件数では傷が最も多くなっています。
しかし、損失金額では寸法不良が最も大きくなっています。
次に変形。
その次が加工漏れです。
つまり、何を基準に並べるかによって、注目する問題が変わります。
件数で見るパレート図。
損失金額で見るパレート図。
この二つを比較することで、異なる視点から改善対象を検討できます。
ただし、損失金額が小さくても、安全性に影響する問題を後回しにしてよいわけではありません。
品質改善では、発生頻度、影響度、損失、対策の実現性など、複数の視点から優先順位を考えることが重要です。
8.層別分析とは何でしょうか?
次に「層別分析」について学びましょう。
層別とは、集めたデータを条件ごとに分けて比較する方法です。
例えば、今回の不良データでは、寸法不良が25件発生しています。
しかし、この25件が、どのような条件で発生しているのか分かりません。
そこで、データを設備別に分けてみます。
例えば、
設備A。
設備B。
設備C。
という分類です。
また、材料ロット別や加工時間帯別に分ける方法もあります。
このように、全体のデータを条件ごとに分けることで、まとめた数字だけでは見えなかった傾向が分かる場合があります。
ChatGPTには次のように質問してみましょう。
実践プロンプト⑤
「寸法不良が25件発生しています。設備、材料ロット、加工日、担当者、工具、加工条件などで層別分析を行いたいです。どのようにデータを分類し、比較するとよいか整理してください」
層別分析の目的は、特定の設備や人を責めることではありません。
不良がどのような条件で発生しやすいのか調べることです。
9.設備別に不良を分析する
例えば、寸法不良25件について、設備別に集計したとします。
| 設備 | 寸法不良の件数 |
|---|---|
| 設備A | 5件 |
| 設備B | 16件 |
| 設備C | 4件 |
| 合計 | 25件 |
この結果だけを見ると、設備Bで寸法不良が集中しているように見えます。
しかし、ここで確認したいことがあります。
設備ごとの製造数量は同じでしょうか。
例えば、設備Bでは、ほかの設備より多くの製品を加工している可能性があります。
そこで、製造数量も確認します。
| 設備 | 製造数量 | 寸法不良数 | 寸法不良率 |
|---|---|---|---|
| 設備A | 500個 | 5個 | 1.0% |
| 設備B | 2,000個 | 16個 | 0.8% |
| 設備C | 400個 | 4個 | 1.0% |
※各製品に寸法不良が重複して計上されない条件の架空データです。
この表では、設備Bの不良件数が最も多くなっています。
しかし、不良率は設備Bが最も低くなっています。
つまり、件数だけで設備Bの状態が悪いと判断することはできません。
さらに、各設備で加工している製品の種類や寸法公差が違えば、単純な比較は難しくなります。
層別分析では、分類した後の数字だけでなく、各グループの製造数量や条件も確認することが重要です。
10.材料ロットによる違いを調べる
今度は、材料ロット別に分析してみましょう。
例えば、同じ樹脂部品を製作しているとします。
材料ロットAでは、寸法不良が少なかった。
材料ロットBでは、寸法不良が多かった。
こうした違いが見つかったとします。
この場合、材料の状態が関係している可能性があります。
しかし、材料ロットBを使用した時期に、工具や加工条件も変更されていたかもしれません。
そのため、材料だけが原因だと決めつけることはできません。
そこで、次のような情報を比較します。
材料のグレード。
ロット番号。
材料の保管条件。
加工時期。
使用設備。
工具の状態。
加工条件。
測定方法。
ChatGPTには次のように相談します。
実践プロンプト⑥
「材料ロット別に寸法不良率が異なっています。材料特性だけでなく、加工設備、工具、保管条件、加工日、測定条件などの違いを整理し、原因を調べるための比較項目を考えてください」
このように、層別分析から新しい仮説を考えることができます。
11.時間帯や曜日で違いがある?
品質データを時系列で分析すると、特定の時間帯や曜日に不良が集中している場合があります。
例えば、午後の加工で寸法不良が増えているように見えたとします。
この場合、何が考えられるでしょうか。
設備の温度変化が影響している可能性があります。
工具の使用時間が関係しているかもしれません。
加工する製品の種類が午前と午後で違っている可能性もあります。
また、測定のタイミングによって、結果が異なっている場合も考えられます。
ここで、
「午後の作業者に問題がある」
とすぐに判断することは適切ではありません。
まず、実際の条件を確認する必要があります。
ChatGPTには次のように依頼できます。
実践プロンプト⑦
「午後の加工で寸法不良が多いように見えます。時間帯別の製造数量と不良率を比較し、設備温度、工具使用時間、製品構成、材料、測定条件など、影響する可能性がある要因を整理してください。特定の担当者が原因だと推測で判断しないでください」
12.パレート図と層別分析を組み合わせる
パレート図と層別分析は、別々に使うだけでなく、組み合わせることができます。
例えば、最初に不良分類別のパレート図を作成します。
そこで、寸法不良が重要な改善候補として見つかりました。
次に、寸法不良だけを対象に、設備別の発生状況を確認します。
さらに、特定の設備について、材料ロット別や加工条件別に比較します。
このように、段階的に範囲を絞って調べる方法があります。
例えば、
第1段階
全体の不良分類を比較する。
第2段階
寸法不良の発生工程を調べる。
第3段階
対象工程の設備別データを比較する。
第4段階
設備ごとの工具や材料、加工条件を確認する。
こうした方法によって、改善すべき範囲を具体的にできる可能性があります。
ただし、分類を細かくしすぎると、各グループのデータが少なくなり、偶然の変動に影響されやすくなる場合があります。
そのため、分析する目的に合わせた分類が重要です。
13.不良分類のルールが曖昧だとどうなる?
品質データを分析するとき、分類方法そのものが問題になることがあります。
例えば、製品の角にバリが残っていたとします。
ある担当者は「バリ」と記録しました。
別の担当者は「仕上げ不良」と記録しました。
また、ある担当者は「外観不良」と分類したかもしれません。
このような状態では、同じ問題が複数の分類へ分かれてしまいます。
すると、パレート図の結果も変わる可能性があります。
そこで、不良分類の基準を整理する必要があります。
例えば、
寸法不良とは何か。
傷と打痕をどう区別するのか。
バリと仕上げ不良をどう分類するのか。
複数の不良がある場合、どのように記録するのか。
こうしたルールです。
ChatGPTには次のように質問できます。
実践プロンプト⑧
「品質不良の分類基準を統一したいです。寸法不良、傷、バリ、変形、異物付着、加工漏れについて、分類時に確認すべき内容と、判断が分かれやすい事例を整理してください」
分析の精度を高めるには、集計する前のデータの品質も重要です。
14.改善テーマの優先順位を決める
ここまでの分析によって、複数の改善候補が見つかったとします。
例えば、
傷。
寸法不良。
バリ。
変形。
加工漏れ。
この中から、どの問題へ最初に取り組むか考えます。
その際、発生件数だけでなく、次の項目を検討できます。
発生頻度
どの程度発生しているか。
重大性
製品の機能や安全性、お客様の仕事へどの程度影響するか。
損失
再加工、再製作、廃棄、納期遅延などの負担。
原因の把握状況
すでに原因が確認されているか。
対策の実現性
必要な設備、費用、時間、人員を確保できるか。
改善効果の確認方法
実施した対策が有効だったか判断できるか。
こうした項目を整理します。
ただし、点数を付ければ自動的に正しい優先順位が決まるわけではありません。
重要な品質問題や安全上の問題については、点数とは別に優先対応が必要になる場合があります。
実践プロンプト⑨
「不良分類別の発生件数、損失金額、重大性、原因の把握状況、対策の実現性を整理し、改善テーマを比較してください。安全性や重大な品質要求に関わる問題を、単純な合計点だけで後回しにしないようにしてください」
15.改善テーマを具体的な課題へ変える
例えば、寸法不良を優先して改善すると決めたとします。
しかし、
「寸法不良を減らす」
という目標だけでは、実際に何をするべきか分かりにくい場合があります。
そこで、層別分析によって、問題をさらに具体化します。
例えば、
「特定の樹脂部品について、設備Aで長時間加工した後半に寸法が上限側へ変化する」
という傾向が見つかったとします。
この場合、調べる対象が明確になります。
設備の温度変化。
工具の摩耗。
加工条件。
測定時の温度。
こうした項目です。
ただし、これらは原因の候補です。
実際に何が影響しているのかは、測定や試験で確認する必要があります。
ChatGPTには次のように依頼できます。
実践プロンプト⑩
「層別分析によって、特定の設備で長時間加工した後半に寸法が上限側へ変化する傾向が見つかりました。この現象について、確認済みの事実、考えられる原因、追加測定項目、検証方法を整理してください」
問題を具体化することで、改善活動を進めやすくなります。
16.改善前後のデータを比較する
改善策を実施したら、その効果を確認する必要があります。
例えば、工具交換の基準を見直したとします。
その結果、寸法不良が減ったように感じられた場合です。
実際に効果があったかどうかを確認するために、改善前後のデータを比較します。
例えば、次のような架空の結果です。
| 期間 | 製造数量 | 寸法不良品数 | 不良率 |
|---|---|---|---|
| 改善前 | 2,000個 | 30個 | 1.5% |
| 改善後 | 2,000個 | 12個 | 0.6% |
この例では、不良率が1.5%から0.6%へ低下しています。
差は0.9ポイントです。
相対的には60%の減少になります。
ただし、この変化が工具交換基準の見直しだけによるものかどうかは、まだ分かりません。
材料や製品構成、設備状態などが変わっている可能性もあるからです。
そこで、改善前後の条件を確認します。
ChatGPTには次のように質問できます。
実践プロンプト⑪
「工具交換基準を変更した前後で、寸法不良率が1.5%から0.6%へ低下しました。この差を計算し、対策の効果を評価するために確認すべき条件と、追加で収集したいデータを整理してください」
17.パレート図は一度作れば終わり?
例えば、傷の発生件数を減らす対策を実施したとします。
その結果、傷が大幅に減ったとしましょう。
すると、次に多い不良分類が変わる可能性があります。
例えば、改善前は傷が最も多かったものの、改善後は寸法不良が最も多くなるかもしれません。
そこで、新しいデータを使って、改めてパレート図を作成します。
つまり、分析と改善を繰り返す必要があります。
ただし、順位が変わったことだけで改善効果を判断してはいけません。
例えば、傷の件数が減ったことで、寸法不良の割合が相対的に増える場合があります。
寸法不良そのものが増えたとは限りません。
そのため、改善前後の件数や不良率、損失金額などを比較することが重要です。
実践プロンプト⑫
「改善前と改善後の不良分類別データを比較してください。パレート図の順位だけでなく、各不良分類の件数、不良率、損失金額がどう変化したか整理してください」
18.Excelで品質データを管理する方法
ここまでの分析を継続するために、Excelで品質データを管理する方法を考えてみましょう。
例えば、次のような項目です。
| 項目 | 記録する内容 |
|---|---|
| 発生日 | 不良が確認された日 |
| 製品番号 | 対象製品 |
| 製造数量 | 分析対象の数量 |
| 不良分類 | 傷、寸法不良、バリなど |
| 不良品数 | 対象となる製品数 |
| 不良発生件数 | 発生した不良の数 |
| 設備 | 使用した設備 |
| 材料ロット | 材料の識別情報 |
| 工程 | 不良が確認された工程 |
| 損失金額 | 定義した基準による損失 |
| 対策 | 実施した改善内容 |
| 結果 | 改善後の確認結果 |
このような情報を整理しておけば、ピボットテーブルなどで分類別の集計を行うことができます。
例えば、不良分類別の件数。
設備別の不良率。
材料ロット別の寸法不良。
月別の損失金額。
こうした分析です。
ただし、製造数量を不良発生記録の各行に繰り返し入力すると、集計時に製造数量を二重計上してしまう可能性があります。
そのため、製造実績と不良発生履歴を別の表で管理し、製品・日付・ロットなどの共通キーで関連づける方法も考えられます。
ChatGPTには次のように依頼できます。
実践プロンプト⑬
「Excelで製造実績と不良発生履歴を管理し、製造数量の二重集計を防ぎながら、不良分類、設備、材料ロット、工程別に分析できる表の構成を考えてください。パレート図やピボットテーブルで集計しやすい形式にしてください」
19.製造業以外にもパレート分析は使える
今回の考え方は、製造業に限りません。
例えば、お客様からの問い合わせ内容を分析する場合です。
問い合わせを分類すると、
納期確認。
見積依頼。
製品仕様の質問。
請求書に関する問い合わせ。
注文変更。
といった内容が考えられます。
このとき、問い合わせ件数の多い項目を調べることで、情報提供の方法を改善できる可能性があります。
例えば、納期確認の問い合わせが多ければ、納期の連絡方法を見直すことが考えられます。
また、社内の事務作業でも同じです。
入力ミス。
確認漏れ。
書類の差し戻し。
情報の不足。
こうした項目を集計して、どこに問題が集中しているか調べることができます。
ただし、件数だけでなく、対応時間や業務への影響も確認する必要があります。
このように、パレート分析や層別分析は、さまざまな仕事に応用できる考え方です。
20.今日の実践課題|品質不良の重点改善テーマを選ぼう
今回は、ChatGPTを使って、架空の品質データから改善テーマを選ぶ練習をしましょう。
使用するのは、今回紹介した100件の不良データです。
ステップ① 不良を分類する
ChatGPTへ次のように質問します。
「傷35件、寸法不良25件、バリ20件、変形10件、異物付着6件、加工漏れ4件を、発生件数の多い順に整理してください」
ステップ② パレート図を作成する
「不良分類別の構成比と累積比率を計算し、パレート図を作成してください」
ステップ③ 発生件数から特徴を考える
「上位三つの不良分類が全体の何%を占めているか計算してください。また、今回の数字から分かることと、まだ分からないことを区別してください」
ステップ④ 損失金額を比較する
「不良分類別の損失金額を整理し、発生件数による順位と損失金額による順位を比較してください」
ステップ⑤ 設備別に層別する
「寸法不良について、設備別の製造数量と不良品数を比較し、各設備の不良率を計算してください」
ステップ⑥ 材料ロット別に調べる
「材料ロットによって不良率が異なる可能性を考え、確認すべき加工条件や材料情報を整理してください」
ステップ⑦ 改善の優先順位を検討する
「発生件数、損失金額、品質への影響、対策の実現性を考慮して、重点改善テーマの候補を整理してください」
ステップ⑧ 原因調査へ進む
「選んだ改善テーマについて、発生条件を明確にするための確認項目と、検証方法を考えてください」
ステップ⑨ 改善後の効果を確認する
「対策実施前後の不良率、件数、損失金額を比較し、効果を判断するために必要な条件を整理してください」
この練習では、最も件数の多い不良を必ず選ぶ必要はありません。
なぜその問題を改善するのか、根拠を整理することが重要です。
21.ChatGPTによる品質分析の限界
ChatGPTは、不良データの集計、構成比の計算、パレート図の作成、層別分析、改善テーマの比較などを支援できます。
しかし、集計結果から、不良の原因を自動的に確定することはできません。
例えば、設備Bで寸法不良が多かったとしても、設備Bそのものが原因とは限りません。
設備ごとに加工している製品が違う可能性があります。
材料の状態が異なる場合もあります。
また、検査方法や測定条件によって、結果が影響を受ける可能性もあります。
そのため、分析によって見つかった特徴を、実際の現場で確認する必要があります。
さらに、データの分類方法が曖昧だったり、製造数量に重複があったりすると、計算結果そのものが正しくない可能性があります。
重要なのは、AIが作成したグラフを見て結論を出すことではありません。
実際に記録されたデータと、現場の状況を結びつけて考えることです。
22.品質改善の本当の目的は何でしょうか?
最後に、品質改善について少し考えてみましょう。
製造現場では、不良品が発生すると、さまざまな負担が生じます。
材料が無駄になる。
加工時間が失われる。
再製作が必要になる。
納期へ影響する。
お客様の仕事に影響する。
こうした問題を減らすことは重要です。
しかし、不良件数の削減だけを目的にすると、数字ばかりに目が向いてしまう場合があります。
例えば、不良件数を少なく見せるために分類方法を変更したとしても、実際の品質は改善されません。
また、検査を減らして不良を見つけにくくしても、製品の品質が良くなるわけではありません。
重要なのは、問題そのものを減らすことです。
そのためには、何が発生しているのかを正確に記録し、発生条件を調べ、原因を確認する必要があります。
そして、必要な対策を行い、その結果を確認する。
この積み重ねが、品質を改善していくことにつながります。
ChatGPTは、その過程でデータの整理や分析を支援できます。
しかし、実際に改善を進めるのは現場で働く人たちです。
まとめ|不良の多さを見るだけでなく、改善すべき問題を見つける
今回は、ChatGPTを使った品質不良の発生傾向の分析方法を学びました。
重要なポイントは、次のとおりです。
- 不良件数だけでなく、分類や製造数量との関係を確認する。
- パレート図を使って、不良が集中している項目を把握する。
- 累積比率を計算し、上位の不良分類が全体に占める割合を理解する。
- 件数だけでなく、損失金額や重大性も考慮する。
- 層別分析によって、設備、材料、工程、時間帯などの違いを調べる。
- 設備別の不良件数を比較するときは、製造数量も確認する。
- 不良分類のルールを統一し、データの信頼性を高める。
- 分析結果から、具体的な改善テーマを選ぶ。
- 改善前後の条件を確認し、対策の効果を検証する。
- 定期的に分析を繰り返し、新しい問題や傾向を見つける。
品質改善では、問題が多すぎて、何から取り組めばよいか迷うことがあります。
そんなとき、発生している不良を分類し、件数や影響を整理することで、優先して調べるべき問題が見えてくる場合があります。
しかし、パレート図で最も大きな項目が、必ず最優先とは限りません。
また、層別分析によって特定の設備や条件へ不良が集中していることが分かっても、それだけで原因が確定するわけではありません。
大切なのは、データから疑問を見つけ、現場で確認することです。
品質データを分析する目的は、不良を順位づけすることではありません。何が、どこで、どのような条件で発生しているのかを理解し、実際の改善へつなげることです。
AIと一緒に数字を整理し、特徴を見つけ、原因を考える。
そして、現場で確かめ、必要な対策を実行する。
得られた結果を確認し、さらに改善していく。
その積み重ねが、中級編で身につけていきたい実践的なAI活用です。
次回【中級編・第35回】
「ChatGPTでなぜなぜ分析を深める方法|表面的な原因から仕組みの問題まで掘り下げる実践講座」
次回は、パレート図や層別分析で見つかった重点改善テーマについて、原因をさらに詳しく考える方法を学びます。
なぜ問題が発生したのか。
なぜ、その問題を事前に防げなかったのか。
なぜ、同じような問題が繰り返されているのか。
ChatGPTを使って、思い込みや個人への責任追及に偏らず、再発防止につながる原因分析を実践していきましょう。