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役小角と空海、二人は何が違ったのか【最終回】

2014.10.14

役小角と空海。

二人とも山に入りました。

でも、同じことをした人ではありません。

ここは、はっきり分けて考えたいと思います。

役小角は、7世紀後半から8世紀初めの人物です。

後世には修験道の祖とされ、吉野や大峯の山々と強く結びつきました。

役小角の世界では、

山そのものが力を持つ。

岩がある。

滝がある。

谷がある。

深い森がある。

人はそこへ入り、自分の身体を使って修行する。

つまり役小角は、

山の力に自分から近づいていく人

だったように見えます。

そこにはまだ、後世のように整った宗派や教義があるわけではありません。

古い山岳信仰。

神への畏れ。

呪術。

仏教。

道教的な思想。

さまざまなものが混ざり合う世界です。

一方、空海は違います。

空海も若い頃から山林修行をしています。

しかし唐へ渡り、密教という高度に体系化された思想と修法を学び、日本へ持ち帰りました。

空海は山の力を感じるだけではありません。

仏。

曼荼羅。

真言。

儀礼。

寺院。

そうした体系の中へ山を位置づけていきます。

つまり空海は、

山の世界を、密教という言葉で組み直した人

だったのではないでしょうか。

役小角は、

山へ入る。

山と向き合う。

山の力を身につけようとする。

空海は、

山へ入り、

そこに密教の世界を重ねる。

この違いは大きいと思います。

役小角には「野」の匂いがあります。

国家や大寺院の外側にいる行者。

山を歩き、修行し、異界と人間の世界の間を行き来する。

対して空海は、その山の経験を持ちながら、最終的には国家や社会ともつながっていきます。

寺を開く。

僧を育てる。

修法を体系化する。

人々に伝える。

空海には、

山の力を社会へ持ち帰る力

がありました。

だから二人を一本の線で結ぶなら、

役小角が山岳修行そのものを象徴する存在だとすれば、

空海は、その山の世界に密教という大きな骨組みを与えた人物。

同じ山を見ていても、

役小角は山の中へ溶け込んでいく。

空海は山を一つの思想世界として組み立てていく。

私は、そんな違いを感じます。

そして二人の間にいるのが、

名前の残らなかった多くの山の人たちです。

水を知る人。

薬草を知る人。

峠を知る人。

鉱物を知る人。

祈りの場所を知る人。

役小角も空海も、そうした人々が積み重ねてきた山の知識から切り離しては考えられません。

ただ、

役小角は、その古い山の世界により近い人。

空海は、その世界を受け取り、新しい宗教体系へ変換した人。

二人を分けて見ると、

役小角から空海へ続いたものと、

空海によって新しく加わったものが、

ずっと見えやすくなるのではないでしょうか。

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