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狭山池は、古代の人が「水をためる」だけでなく、地域そのものをつくろうとした証拠

2013.06.08

大阪狭山市にある狭山池は、現存する日本最古のダム形式のため池とされ、
築造は7世紀前半までさかのぼります。

平成の改修工事に伴う調査では、築造当初の取水施設に使われた木材が西暦616年ごろに
伐採されたことも確認されています。

3〜5世紀より少し後の施設です。

しかし私は、狭山池を考えることは、それ以前から続いていた人々の暮らしや技術を見る
手掛かりになると思っています。

なぜなら、これほど大きなため池を突然ゼロから作ることは難しいからです。

まず水の流れを知らなければなりません。

どこから水が来るのか。

どこをせき止めれば貯まるのか。

どこまで水位を上げられるのか。

どこへ流せば田畑を潤せるのか。

土を盛っただけでは水圧に耐えられません。

取水する設備も必要です。

壊れれば補修しなければなりません。

実際、狭山池はその後1400年にわたり、何度も改修されながら使われ続けてきました。

ここで面白いのは、「誰が池を作ったか」だけではありません。

池を作っても、その水を使う田畑がなければ意味がありません。

水路が必要です。

田畑まで水を分ける仕組みが必要です。

上流と下流の人たちの調整も必要です。

水が少ない年には、誰がどれだけ使うのかという問題も起こるでしょう。

つまり、巨大なため池を維持するには、土木技術だけでなく、地域全体で水を
管理する仕組みが必要になります。

狭山池周辺は、古墳時代には陶邑の須恵器生産地域とも重なっています。

大阪狭山市も、市域周辺には須恵器づくりに適した地形や土、水、薪があり、
多数の窯跡が確認されているとしています。

ものを作る人がいる。

農業をする人がいる。

水を管理する人がいる。

木を集める人がいる。

製品を運ぶ人がいる。

そうした仕事が同じ地域の中で重なっていきます。

すると狭山池は、単なる「農業用の池」とは違って見えてきます。

水を確保することで、人が安定して暮らせる。

農地を増やせる。

人が増える。

ものづくりも続けられる。

地域全体を長く維持できる。

狭山池そのものは7世紀前半の築造ですが、その背景には、それ以前から
何世代にもわたって積み上げられた水利用や土木の経験があったと考える方が
自然ではないでしょうか。

一人の偉い人が「池を作れ」と命令しただけで完成したのではなく、土地を知る人、
木を扱う人、土を扱う人、水を読む人、実際に田畑を使う人たちの知識が集まって初めて成立する。

狭山池は、古代の人々が自然に合わせて暮らしただけではなく、自分たちが暮らし続けられるように
土地そのものへ手を入れていった、大きな共同作業の結果だったと考えています。

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