移住してきた人が、この土地を自分たちの国として守るまで【後編】
饒速日さまの物語を読んでいると、私は「征服者」というより、遠くからやってきた移住者だったのではないかと思います。
大阪・交野の磐船神社には、饒速日さまが天磐船で河内へ降り立ったという伝承が残っています。
もちろん、神話をそのまま歴史として読むつもりはありません。
ただ、「別の土地から人々を率いてやってきた」という記憶が、長い時間を越えて残っているのだと考えると面白い。
しかも彼らは、ただ移住してきただけではなかったのではないでしょうか。
道具を作る技術。
農業や土木の知識。
武器や金属を扱う技術。
土地を測り、人をまとめ、暮らしをつくる力。
今で言えば、技術者や職人を含んだ「古代のエンジニア集団」のような人たちだったのではないか。
知らない土地へやって来て、「ここを俺たちの国にするぞ」と言ったところで、人はついてきません。
まず役に立つ。
壊れたものを直す。
暮らしを便利にする。
作物が採れるようにする。
危険から人を守る。
そうやって一つずつ信頼を積み重ねていけば、よそ者だった人たちも、いつしか地域の一員になります。
そして子どもが生まれ、家族が増え、仲間が増える。
気がつけばそこは、「移住してきた土地」ではなく「自分たちの国」になっていたのかもしれません。
だからこそ、命をかけても守ろうとした。
私はここが饒速日さまの物語で一番面白いところです。
人は、生まれた場所だけで居場所が決まるわけではありません。
どこから来たのかより、そこで何をしてきたのか。
過去は変えられませんが、これからどう生きるかを考えるための参考データにはできます。
居場所というものは、最初から与えられるものではなく、自分が誰かの役に立ちながら少しずつつくっていくものなのかもしれません。