経営者の役割は、答えよりも判断基準を伝えること。
経営者や上司が、仕事の細かな方法まですべて決めれば、現場は迷わず動けるかもしれません。
この順番で進める。
この設備を使う。
問題が起きたら、この対応をする。
一つひとつに答えを出しておけば、担当者は指示に従って仕事を進められます。
しかし、その方法では、過去に想定した範囲を超える問題が起きたとき、現場が止まってしまいます。
研究開発や開発試作の仕事では、材料、形状、精度、数量、納期などの条件が案件ごとに異なります。
すべての状況に対応できる指示書を、あらかじめ用意することはできません。
だからこそ(株)アリスでは、経営者の役割は、細かな答えを出し続けることだけではないと考えています。
何を大切にする会社なのか。
どのような仕事を良い仕事と考えるのか。
判断に迷ったとき、どこへ立ち返るのか。
その基準を、繰り返し伝えることが必要です。
例えば、品質に問題がある可能性を感じたときには、納期だけを優先してそのまま進めない。
失敗や違和感に気づいたときには、隠さず早く共有する。
目の前の工程だけでなく、その先の検査、組み付け、使用まで考える。
自社の都合だけでなく、お客様にとって適した品質、コスト、納期のバランスを考える。
こうした考え方が共有されていれば、現場で細かな状況が変わっても、行動の方向を大きく外しにくくなります。
判断基準を伝えることは、短い言葉を掲げるだけでは不十分です。
実際の仕事の中で、なぜその判断をしたのかを説明する。
うまくいった仕事も失敗した仕事も振り返り、基準と結果の関係を確認する。
現場から出た意見を聞き、必要に応じて考え方や仕組みを見直す。
日々のやり取りを通じて、判断基準は少しずつ共通のものになっていきます。
また、経営者の行動が、伝えている基準と一致していることも重要です。
品質を大切にすると言いながら、問題が起きたときに報告した人を責めれば、次から情報は上がりにくくなります。
挑戦を評価すると言いながら、失敗だけを見て否定すれば、新しい方法を試す人はいなくなります。
言葉だけでなく、実際の判断や対応によって、会社が大切にすることを示す必要があります。
(株)アリスでは、経営者がすべての答えを持つ組織ではなく、一人ひとりが共通の基準を使って考えられる組織を目指しています。
細かく管理して動かすのではなく、判断の軸を示し、現場が自ら最適な方法を考えられるようにする。
それが、変化へ対応できる会社をつくる経営の役割の一つだと考えています。