磨きから学んだこと【後編】
磨き作業では、番手を変えるたびに水洗いを行います。
粗い粉が残っていると、新しいキズの原因になるからです。
一見すると小さなことですが、このひと手間が品質を左右します。
ものづくりの現場では、派手な技術や設備が注目されることがあります。しかし実際には、このような地道な積み重ねが品質を支えていることも少なくありません。
(株)アリスでは、切削加工だけでなく、その後の仕上げ工程も含めて品質を考えています。
加工機から取り外した直後の部品が、そのまま完成品になることはほとんどありません。どれだけ精度良く加工できていても、最終的な品質は各工程の積み重ねによって決まります。その中でも磨きは、品質を大きく左右する重要な工程の一つです。
磨きというと、表面を綺麗にする作業と思われることがあります。しかし実際には、ただ光らせれば良いというものではありません。加工目の状態を確認し、適切な番手を選び、形状を崩さないように仕上げていく必要があります。力を入れすぎれば新たなキズが入り、意匠面であれば形状が変わってしまうこともあります。
私は磨きという工程を見ていて、品質は最後に作られるものではなく、工程ごとに作り込まれていくものだと感じています。前工程が丁寧であれば磨きも進めやすくなりますし、磨きが適切に行われれば次工程の仕上がりも安定します。どこか一つだけ頑張れば良いわけではなく、すべての工程がつながっています。
研究開発の現場でも生産現場でも、最終的に求められるのは再現性です。たまたま上手くいったではなく、いつでも同じ品質を実現できることが重要になります。
磨きは手作業の工程ですが、その中にも再現性を高めるための判断や工夫があります。一つひとつの工程を丁寧に行うこと。近道を探すのではなく、今行うべきことを確実に積み重ねること。それは磨きだけではなく、ものづくり全体に共通する考え方なのではないかと思います。