同じ設備を使っても、同じ仕事になるとは限らない。【1】
ものづくりの世界では、コンピューター技術の進化によって、高性能な設備を使った精密加工が身近になりました。
CAD/CAMによる加工プログラムの作成や、CNC工作機械による高精度な切削加工。かつては熟練技術者の経験や技能に大きく依存していた仕事も、デジタル技術の力によって、安定して製作できるようになっています。
設備やソフトウェアの性能が向上し、同じような加工環境を整えられる会社も増えました。
では、同じ工作機械を導入すれば、どの会社でも同じ品質、同じ費用、同じ納期でものづくりができるのでしょうか。
私たちは、そうは考えていません。
設備の性能が同じでも、それを使う人の知識や経験、考え方によって、仕事の進め方には違いが生まれるからです。
図面に描かれていないことを考える。
例えば、一つのアルミニウム部品を製作するとします。
図面には、寸法や形状、公差、材質などが指定されています。
しかし、その部品をどの順番で加工するのか、どのような工具を使うのか、どの部分を基準にして加工するのかといった製作工程のすべてが、図面に記載されているわけではありません。
同じ形状でも、加工方法には複数の選択肢があります。
材料をどのように固定するかによって、加工できる範囲や段取りの回数が変わります。
工具の種類や切削条件によって、加工時間や仕上がりが変化します。
薄い部分や細長い形状があれば、加工中の変形にも注意が必要になります。
こうした条件を一つひとつ考え、必要な精度を実現できる方法を選んでいく。
そこに、加工技術者の経験や判断力が活かされます。
図面どおりに機械を動かすだけではなく、図面の形を実現するための方法を考えること。
それが、精密加工の重要な仕事です。
加工を始める前に、仕事の質は変わる。
ものづくりでは、実際に機械が動いている時間だけが仕事ではありません。
図面を確認し、材料を調達し、加工方法を検討し、工具や治具を準備する。
こうした準備の内容によって、加工工程の進み方は大きく変わります。
例えば、加工途中で何度も材料を固定し直す必要がある方法と、最初から段取りを整理している方法では、作業時間に差が生まれます。
また、加工中に発生する問題を予測できていれば、事前に対策を検討することもできます。
もちろん、事前にすべての問題を予測できるわけではありません。
実際に加工してみなければ分からないこともあります。
それでも、過去の経験や材料の知識を活かすことで、問題が発生する可能性を減らすことはできます。
必要な品質を維持しながら、無駄な工程や作業を減らしていく。
その結果として、加工時間の短縮や品質の安定につながる場合があります。
早く加工することと、仕事を早く完成させることは、必ずしも同じではありません。
加工時間だけでなく、準備から検査までを含めて考えることが大切です。