ChatGPTソラ先生と学ぶ!AI実践講座【中級編・第2回】質問を変えると、AIの答えはどこまで変わるのか?
「同じChatGPTを使っているのに、どうして人によって結果が違うのだろう?」
AIを使い始めると、そんな疑問を持つことがあります。
ある人は、ChatGPTを使って仕事の問題を解決しています。
一方で、別の人は何度質問しても一般的な説明しか返ってこず、「AIって、この程度なのかな」と感じています。
もちろん、AIの性能や使っている機能によって違いはあります。
しかし、同じAIを使っていても、質問の仕方や、その後の会話の進め方によって、得られる結果は大きく変わります。
ここで大切なのは、難しい質問文を覚えることではありません。
AIに何を伝え、どのように一緒に考えていくか。
中級編の第2回では、実際の仕事を題材にしながら、この違いを確かめていきましょう。
1.まずは、何も考えずに質問してみる
例えば、製造業の会社で、こんな問題が起きたとします。
「加工した製品の寸法が安定しない」
製造現場では、寸法のばらつきは珍しい問題ではありません。
材料、加工方法、工具、設備、温度、測定方法など、さまざまな要因が関係する可能性があります。
ここでChatGPTに質問してみましょう。
質問①
「加工した製品の寸法が安定しません。どうしたらいいですか?」
この質問に対して、AIは一般的な原因を挙げると考えられます。
例えば、次のような内容です。
- 加工機械の精度を確認する
- 工具の摩耗や取り付け状態を調べる
- 材料の特性を確認する
- 加工時の温度変化を調べる
- 測定方法を見直す
どれも検討する価値のある項目です。
しかし、ここには大きな問題があります。
これだけでは、実際に何から確認すればよいのか判断できません。
なぜなら、AIには肝心の加工条件が伝わっていないからです。
金属なのか、樹脂なのか。
切削加工なのか、成形加工なのか。
寸法が大きくなるのか、小さくなるのか。
すべての製品でばらつくのか、特定の条件だけで発生するのか。
これらの違いによって、調査すべき内容も変わってきます。
つまり、最初の質問が間違っているわけではありません。
問題を解決するための情報が、まだ足りないのです。
2.条件を追加すると、答えはどう変わるのか?
それでは、もう少し具体的に質問してみましょう。
質問②
「樹脂の切削加工をしています。同じ図面、同じ加工プログラムで製作していますが、加工後の寸法にばらつきが発生します。考えられる原因を教えてください。」
今度は、樹脂の切削加工という条件が追加されました。
AIは、金属加工とは異なる樹脂材料の特徴にも注目できるようになります。
例えば、樹脂は種類によって熱膨張や吸湿による寸法変化が問題になる場合があります。
また、加工中に発生する熱、材料の固定方法、加工後の残留応力なども検討対象になります。
最初の質問より、原因の候補を具体的に絞り込めるようになりました。
ただし、ここでもまだ十分ではありません。
樹脂といっても、材料によって特性は大きく異なります。
POM、MCナイロン、PEEK、アクリルなどでは、加工時に注意すべき点も同じではありません。
さらに、寸法のばらつきが発生する場所やタイミングによっても、考えるべき原因が変わります。
そこで、次の段階に進みます。
3.AIに答えを出させる前に、調査を手伝ってもらう
ここからが中級編の重要なポイントです。
今までは、こちらが質問して、AIが回答するという使い方でした。
しかし、現実の問題解決では、最初から必要な情報がすべてそろっているとは限りません。
むしろ、何を調べればよいのか分からないこともあります。
そんなときには、質問の仕方を変えてみましょう。
質問③
「樹脂の切削加工で寸法のばらつきが発生しています。原因を調査したいので、結論を出す前に、確認すべき項目を一つずつ質問してください。」
ここでは、AIに答えを求めていません。
問題を調査するための進め方を考えてもらっています。
例えば、AIから次のような質問が返ってくるかもしれません。
「使用している樹脂材料は何ですか?」
こちらが「POMです」と答えます。
続いて、
「ばらつきが発生するのは、どの寸法ですか?」
「外径です」
「加工直後からばらついていますか。それとも時間が経過してから変化しますか?」
「加工直後は問題ありませんが、翌日に測定すると変化している場合があります」
このように会話を続けると、少しずつ問題の特徴が見えてきます。
もちろん、この段階で原因が特定できたわけではありません。
しかし、加工中の問題だけでなく、加工後の温度変化、材料内部の応力、測定条件なども確認する必要があると考えられます。
ここで重要なのは、AIが質問することで、人間側も新しい視点に気づく可能性があることです。
自分では当たり前だと思っていた条件が、実は重要な情報だった。
そんな発見が、問題解決のきっかけになることがあります。
4.AIの質問が的外れだったら、どうする?
ここで、もう一つ考えてみましょう。
AIが質問を続けているうちに、すでに確認済みの項目ばかり聞いてきたとします。
例えば、
「加工機械の精度を確認してください」
と提案されたとします。
しかし、実際には機械精度を確認済みで、同じ設備を使った別の材料では問題が発生していません。
そんな場合、どうすればよいでしょうか。
答えは簡単です。
その事実をAIに伝えればよいのです。
「機械精度は確認済みです。同じ設備で加工している別の材料では同じ問題が発生していません。この条件を踏まえて、ほかの可能性を検討してください。」
AIは、その情報をもとに検討対象を見直せます。
ただし、別の材料で問題が発生していないからといって、設備や加工条件が原因ではないと断定することはできません。
材料ごとに切削抵抗や熱の影響が違うためです。
このような判断も含めて、AIと検討することが大切です。
AIの提案を受け入れるだけではなく、違うと思ったら指摘する。
確認済みのことは伝える。
新しい事実が分かれば、条件を更新する。
AIとの会話は、一方的に教えてもらうものではありません。
人間が持っている現場の情報と、AIが提示する知識や検討方法を組み合わせることで、調査を前に進められるのです。
5.最初の答えを信じてしまう危険性
ここまで読むと、AIが質問をしてくれるなら、その指示どおりに調査すればよいと思うかもしれません。
しかし、それは少し違います。
AIは、もっともらしい説明をしていても、必ず正しいとは限りません。
例えば、寸法変化の原因について、
「POMは吸湿するため、寸法が変化した可能性があります」
と説明したとします。
確かに、POMにも吸水性はあります。
しかし、実際にその寸法変化が吸湿によるものなのかは、使用材料のグレード、保管環境、経過時間、寸法変化の方向や量などを確認しなければ判断できません。
ほかの原因も考えられます。
ここでAIの説明をそのまま信じて、原因を決めつけてしまうと、間違った対策を実施する可能性があります。
そこで、次の質問をしてみましょう。
「その原因を確認するには、どのような測定や比較試験を行えばよいですか?」
さらに、
「ほかに考えられる原因はありますか?」
「どのような結果が出れば、その仮説を否定できますか?」
と質問してみます。
こうすると、AIの回答を単なる説明から、実際に検証するための材料へと変えていけます。
重要なのは、AIの知識を利用しながらも、最終的には現実の事実を確認することです。
6.問題解決には、答えよりも順序が重要なことがある
実際の仕事では、原因の候補をたくさん挙げるだけでは解決になりません。
例えば、寸法のばらつきに対して10個の原因が考えられたとします。
その10個をすべて同時に変更したら、どうなるでしょうか。
工具を交換する。
加工速度を変える。
固定方法を変える。
材料の保管方法を変更する。
測定条件も変える。
その結果、寸法が安定したとしても、何が効果を生んだのか分からなくなる場合があります。
そこで、AIにこう相談してみます。
「原因の候補を整理して、現場で確認しやすい順番に調査計画を作ってください。一度に多くの条件を変更せず、結果を比較できる方法を考えてください。」
すると、単に原因を列挙するのではなく、調査の順序や比較方法を検討することができます。
例えば、まず測定条件が統一されているかを確認する。
次に、加工直後と一定時間経過後の寸法を、同じ測定条件で比較する。
そのうえで、材料ロットや加工条件との関係を調べる。
必要に応じて、加工方法や固定方法を変更して比較する。
この順序がすべてのケースで正しいわけではありません。
しかし、調査する目的と順序を明確にすることで、無駄な試行錯誤を減らせる可能性があります。
ここでAIに期待する役割は、万能な専門家になることではありません。
調べるべきことを整理し、考える順序を組み立てることです。
7.途中で新しい事実が分かったら、最初からやり直す?
ここも、AIを実務で活用するうえで覚えておきたい部分です。
調査を進めるうちに、予想していなかった事実が見つかることがあります。
例えば、加工直後と翌日の寸法を比較したところ、温度条件をそろえて測定すれば、差がほとんど見られなかったとします。
それなら、加工後の製品変化だけではなく、測定環境の違いが影響していた可能性も考えられます。
ここで、それまでの仮説に固執する必要はありません。
AIに新しい測定結果を伝えて、検討内容を修正してもらえばよいのです。
「新しい測定結果が出ました。これまでの仮説と照らし合わせて、何が分かり、何がまだ分からないのか整理してください。」
このように質問することで、調査の途中経過を確認できます。
ただし、会話が長くなると、AIが以前の条件を取り違えたり、重要な情報を見落としたりすることもあります。
そのため、重要な仕事では、確定した事実、検討中の仮説、実施した試験、その結果を適宜整理しておくことが役立ちます。
AIに整理を依頼しても構いませんが、内容が正しいかどうかは人間が確認する必要があります。
8.AIの回答に反対することも大切
AIが提案した内容に対して、人間が異なる意見を持つことは当然あります。
むしろ、その違いが新しい発見につながる場合があります。
例えばAIが、
「加工時の発熱を抑えるため、切削速度を下げることを検討してください」
と提案したとします。
しかし、現場では切削速度を下げることで工具と材料の接触状態が変わり、かえって加工面の状態が悪化するケースも考えられます。
その場合は、
「切削速度を下げることが必ずしも有効とは思いません。工具形状や切削抵抗との関係も含めて考えてください」
と伝えます。
AIの提案に反対することは、AIを否定することではありません。
別の視点から、問題を検討することです。
AIも人間も、最初からすべての答えを持っているわけではありません。
だからこそ、互いの考えを比較し、必要なら実験で確かめることに価値があります。
9.仕事以外でも、この考え方は使える
ここまで、樹脂加工の寸法問題を例に説明してきました。
しかし、この考え方は製造業だけのものではありません。
例えば、パソコンの動作が遅いとき。
「パソコンが遅い。どうしたらいい?」
と質問するだけでなく、
「原因を絞り込みたいので、現在の状態を確認する質問を順番にしてください」
と伝えることができます。
ホームページの閲覧数が減った場合も同じです。
「閲覧数を増やす方法を教えて」
と質問するより、
「閲覧数が減った原因を調査したいので、最初に確認すべきデータを整理してください」
と相談する方が、状況に合った検討を進めやすくなります。
日常生活でも利用できます。
旅行の計画、家電製品の比較、勉強方法の見直しなど、何かを判断するときには、前提条件や目的を整理することが役立ちます。
つまり、今回学んでいるのは、特定の専門分野だけで使う技術ではありません。
分からないことを、少しずつ分かる状態に変えていくための考え方です。
10.今回の実践課題|AIに質問してもらおう
それでは、実際にChatGPTを使ってみましょう。
身近な問題を一つ選んでください。
仕事の問題でも、日常生活の困りごとでも構いません。
最初に、普段どおり質問します。
例えば、
「最近、パソコンの動作が遅くなりました。改善方法を教えてください。」
AIから回答が返ってきたら、すぐに実行するのではなく、次のように質問してみましょう。
「原因を正確に調べたいので、私の状況について必要な質問を一つずつしてください。情報が不足している段階では、原因を決めつけないでください。」
AIからの質問に答えながら、問題を整理します。
途中で分からないことがあれば、「分かりません」と答えても構いません。
その場合は、確認方法を尋ねてみましょう。
さらに、ある程度情報が集まったら、
「ここまでの情報を整理して、確認できた事実、考えられる原因、まだ分からないことを分けてください」
と依頼します。
最後に、実行できそうな確認方法を考えてもらいます。
この一連の会話を通じて、最初の質問だけでは得られなかった情報や、新しい視点が見つかるかもしれません。
今回の目的は、必ず問題を解決することではありません。
AIと一緒に、問題の調べ方や考え方を組み立てる経験をすることです。
まとめ|良い質問とは、最初から完璧な質問ではない
ChatGPTを上手に活用するには、詳しい専門知識や難しい命令文が必要だと思われることがあります。
しかし、本当に重要なのは、最初の質問を完璧にすることではありません。
最初は、簡単な質問でも構いません。
そこから情報を追加し、AIに質問してもらい、出てきた回答を検討する。
違うと思ったら指摘する。
分からないことがあれば調べる。
新しい事実が見つかれば、考え直す。
こうした対話を積み重ねることで、AIを使う意味は大きく変わります。
答えを教えてもらうだけなら、AIは便利な検索や相談の道具です。
しかし、問題を整理し、調査方法を考え、仮説を検証するために活用すれば、仕事や学習の進め方そのものを変えられる可能性があります。
大切なのは、AIの答えを信じることではありません。
AIと一緒に考えながら、現実の事実に近づいていくことです。
それが、中級編で身につけていきたい実践力です。
次回【中級編・第3回】
「AIの回答は本当に正しい?――事実・推測・間違いを見分ける検証方法」
AIが自信を持って答えた内容でも、正しいとは限りません。次回は、実際の調査を題材にして、回答の根拠を確かめ、情報の信頼性を判断する方法を学びます。