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鬼と呼ばれた人たちの、小さな居場所

2014.02.05

滋賀の田村神社。

坂上田村麻呂を祀る神社です。

その境内に、小さな三体の石像が残っています。

苔むしていて、派手でもない。

観光客の目を引くようなものでもない。

でも私は、この三体を見ると気になります。

勝った側だけを称えるなら、敵の姿なんて消してしまえばいい。

それでも残っている。

しかも、堂々と主役としてではなく、境内の片隅に静かに。

もしかすると三体は、鬼ではなく、

鬼と呼ばれた人たち

だったのかもしれません。

朝廷に従わなかった人。

自分たちの土地を守ろうとした人。

仲間をまとめていた人。

後の物語では「鬼」「賊」と呼ばれたけれど、地元の人たちは本当は知っていた。

あの人たちは化け物ではない。

この土地を守っていた人たちだった。

だから名前を大きく残せなくても、姿だけは残した。

表向きは鬼。

でも本当は、

忘れてはいけない人たち。

そんな二重の記憶だったのかもしれません。

私は、田村麻呂自身も、戦った相手をただの悪として見ていなかったのではないかと思います。

長く戦えば、相手の強さも分かる。

覚悟も分かる。

誰に人がついているのかも分かる。

だから後の人たちは、田村麻呂を祀る場所に、戦った側の記憶も残した。

勝った側だけではなく、

同じ時代を生きた者として。

そう考えると、この三体は急に違って見えてきます。

鬼の像ではなく、

歴史の表から消された人たちの、小さな居場所。

私は、この石像を見るたびに、そんなことを考えます。

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