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ものづくりの技術は、完成品より人の中に残っていく

2013.07.18

ものづくりの技術は、完成品より人の中に残っていく

昔の器を博物館で見ると、

「よくこんなものを作ったな」

と思います。

でも、その器を作った人の名前はほとんど残っていません。

誰が土を掘ったのか。

誰が形を作ったのか。

誰が窯を作ったのか。

誰が火を見ていたのか。

分からないことの方が多い。

それでも技術は残っています。

なぜでしょう。

私は、技術というものは完成品の中だけに残るのではなく、人の中を通って次の時代へ移っていくからだと思います。

一人の職人が覚える。

その人の隣で若い人が仕事を見る。

「そこは違う」

「もう少し待て」

「その土ならこうする」

そんなやり取りを何年も繰り返す。

やがて教わった人が、自分なりの工夫を加える。

さらに次の人へ渡す。

その間に道具も変わります。

窯も変わります。

材料も変わります。

でも考え方まで全部消えるわけではありません。

土を見る。

材料を見る。

状態を見る。

失敗した理由を考える。

次は変える。

こうしたものづくりの基本は残ります。

面白いのは、技術がそのまま保存されるわけではないことです。

受け継ぐ人が変えます。

新しい道具を使う。

効率の良い方法を考える。

昔の方法ではできなかったものを作る。

それでも、その奥には前の世代から受け取った経験があります。

だから「伝統」という言葉も、

昔とまったく同じことを続ける意味ではないのかもしれません。

残すものと変えるものを選びながら、次の時代へ渡していく。

それが本当の継承ではないでしょうか。

古代の陶工も、今の陶芸家も、

最初から完璧に作れたわけではありません。

誰かから学び、自分で試し、また次の人へ渡す。

ものはいつか壊れます。

建物もなくなります。

道具も変わります。

でも、人の中へ入った技術は、次の人へ移すことができます。

何千年も続いてきたものづくりを支えてきたのは、

残された製品だけではなく、

「次の人へ渡す」という、人間の営みそのものだったのではないでしょうか。

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