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おはようございます。行ってきます。|毎朝の挨拶が教えてくれた、今を大切にすること

2026.01.06

いつもの朝、いつもの挨拶

「おはようございます。行ってきます。」

朝早く、自宅マンションを出るとき、いつの間にか交わすようになっていた挨拶です。

マンションの出入り口の前には、一軒のお宅があります。

そこには、おばあちゃんが暮らしていました。

私は普段、朝5時や6時頃には自宅を出て、仕事へ向かいます。

まだ朝早い時間なのに、おばあちゃんはいつも外に出て、家の前の溝を掃除したり、庭に植えた木々や観葉植物の世話をしたりしておられました。

毎朝、本当に熱心に手入れをされていました。

そんなおばあちゃんが、顔を合わせるたびに挨拶をしてくれます。

「おはようございます。」

最初は、私も普通に挨拶を返していました。

それがいつの間にか、

「おはようございます。行ってきます。」

と声をかけるようになっていました。

仕事から帰ってきたときにお会いすると、

「お帰りなさい。」

と声をかけてくれます。

「ただいま。」

特別な会話をするわけではありません。

名前を知っていたわけでもありません。

それでも、毎朝、毎夕。

顔を合わせれば自然に挨拶を交わす。

そんな日常が、いつの間にか当たり前になっていました。

しばらく見かけなくなったおばあちゃん

ある時期から、おばあちゃんの姿を見かけなくなりました。

毎朝のように外におられたのに、いらっしゃらない。

どうされたのかな。

少し気になっていました。

しばらくすると、また姿を見かけるようになりました。

ただ、以前とは少し様子が違いました。

意識が朦朧としているような、どこかぼんやりした感じでした。

何かあったのだろうか。

身体の具合でも悪かったのかな。

事情は分かりませんでした。

それでも、またお会いできるようになったことが嬉しかったです。

その後、少しずつ以前のような元気な姿に戻られました。

いつもの場所に、いつものおばあちゃんがいる。

また挨拶を交わせるようになりました。

みかんをおすそ分けした日

ある日、みかんを買って帰ってきました。

ちょうど、おばあちゃんが外におられました。

いつも挨拶をしてくださるおばあちゃん。

せっかくだから、少しおすそ分けしよう。

そう思って、みかんをお渡ししました。

おばあちゃんは、とても喜んでくださいました。

そして、次の日の朝。

いつものように仕事へ向かおうとすると、おばあちゃんが声をかけてくれました。

「美味しかったです。」

それはそれは、最高の笑顔でした。

本当に嬉しそうな笑顔だったのです。

たった少しのみかんです。

何か特別なことをしたわけではありません。

それなのに、あんなに喜んでもらえた。

私まで嬉しくなりました。

今でも、そのときの笑顔を覚えています。

そして、また姿が見えなくなった

それから少しして、おばあちゃんを見かけなくなりました。

最初は、またしばらくしたら姿を見せてくれるだろうと思っていました。

以前も、そういうことがあったからです。

でも、今回は違いました。

何日経っても、何週間経っても、お会いすることがありません。

そして、数か月が過ぎました。

おばあちゃんの家に、変化が起きていました。

建物の周囲に足場が組まれ、ブルーシートで覆われていたのです。

工事が始まっていました。

おばあちゃんが毎朝、丁寧に手入れしていた庭の木々。

その木々が、すべて切られていました。

あんなに大切に育てておられたのに。

庭の様子も、すっかり変わってしまいました。

まだ元気に生きている観葉植物

家の周囲が変わっていく中で、気になっているものがあります。

おばあちゃんが育てていた観葉植物です。

上に物を置かれたりしているのですが、まだ元気に生きています。

あの植物を見るたびに、おばあちゃんのことを思い出します。

朝早くから溝を掃除していた姿。

木々や植物を大切に育てていた姿。

毎朝の「おはようございます」。

帰宅したときの「お帰りなさい」。

そして、みかんをお渡しした翌朝の、あの最高の笑顔。

あのおばあちゃんが、長い時間をかけて育ててきた植物です。

今はもう、世話をしていた人の姿がありません。

それでも、植物は生きています。

毎日、その前を通ります。

以前は、おばあちゃんが立っていた場所です。

今は足場とブルーシートに覆われ、少しずつ様子が変わっていく家があります。

その光景を見るたびに、寂しい気持ちになります。

当たり前だった日常が、当たり前ではなくなる

おばあちゃんが今、どうされているのかは分かりません。

どこかで元気に暮らしておられるのかもしれません。

もう、お会いすることはないのかもしれません。

ただ、毎日のように交わしていた挨拶が、突然なくなってしまいました。

それまで、特別なことだとは思っていませんでした。

朝になれば、おばあちゃんが庭の手入れをしている。

顔を合わせれば、挨拶を交わす。

帰宅したら、「お帰りなさい」と声をかけてもらえる。

そんな何気ないことが、私の日常の一部になっていました。

でも、いつまでも続くわけではないのですね。

人との出会いも、日々の暮らしも、少しずつ変わっていきます。

いつもそこにいると思っていた人と、ある日を境に会えなくなることもあります。

だからこそ、今、目の前にいる人との時間を大切にしたいと思っています。

挨拶を交わせること。

何気ない会話ができること。

相手の笑顔を見ること。

どれも、失ってから初めて、その大切さに気づくことがあります。

今を大切にする

私は、いつどうなってもいいように、今を大切にしています。

大げさなことをする必要はないと思っています。

出会った人に挨拶をする。

誰かが喜んでくれたら、自分も嬉しい。

困っている人がいれば、できることをする。

そんな日々の小さな積み重ねを、大切にしていきたい。

おばあちゃんにお渡ししたのは、ほんの少しのみかんでした。

でも、その翌朝に見せてくれた笑顔は、今でも忘れられません。

もっとお話ししておけばよかったと思うこともあります。

それでも、毎朝の挨拶を交わせたこと、みかんを喜んでもらえたことは、私にとって大切な思い出です。

今日も、あの家の前を通ります。

ブルーシートに覆われた家。

切られてしまった庭の木々。

そして、まだ元気に生きている観葉植物。

その光景を見ると、やっぱり寂しくなります。

もう一度、おばあちゃんの元気な声を聞けたらいいな。

「おはようございます。」

そう声をかけてもらえたら、いつものように返したいと思います。

「おはようございます。行ってきます。

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