いつもの道で出会ったおじいちゃん。|また会えると思っていた人。
最初は挨拶しても、知らん顔。
以前、毎朝挨拶を交わしていたご近所のおばあちゃんのお話をしました。
朝早くから庭の木々や観葉植物を大切に育て、家の前の溝を掃除しておられたおばあちゃん。
今は姿を見かけなくなり、ご自宅には足場が組まれ、ブルーシートで覆われています。
大切にしていた木々も、すべて切られてしまいました。
今日は、同じ頃によくお会いしていた、もう一人のおじいちゃんのお話です。
近所を歩いていると、しょっちゅう出会うおじいちゃんがいました。
最初の頃は足が悪いようで、本当にゆっくり、ゆっくり歩いておられました。
目が合うので、
「おはようございます。」
と挨拶してみました。
ところが、返事はなし。
見事にスルーされました(笑)。
それでも、顔を合わせるたびに挨拶していました。
すると、いつの間にか自然と会話をするようになりました。
といっても、ほんの数分間の立ち話です。
笑えないジョークを言う、ユニークなおじいちゃん
「健康のために娘の家まで歩いて行ってるんや。」
「施設にも通ってるんやで。」
そんな日常のことを、いろいろ話してくれました。
とてもユニークなおじいちゃんで、いつも何かしら笑えないジョークを言っていました。
こちらも、どう反応したらいいのか困ってしまうことがあります(笑)。
それでも、顔を合わせれば自然と立ち止まり、少し話をする。
最初は挨拶をしてもスルーだったのに、いつの間にか冗談を言い合う仲になっていました。
何だか面白いものです。
名前も知らなければ、特別な約束をしているわけでもありません。
ただ、いつもの道で出会う。
それだけで、少しずつ親しくなっていきました。
ゆっくり歩いていたおじいちゃんが、自転車に。
そんなおじいちゃんの足も、少しずつ良くなっていきました。
最初は、本当にゆっくり歩いておられました。
それが、だんだん普通に歩けるようになってきたのです。
そして、とうとう自転車に乗るまでになりました。
すごいなぁ。
あれほどゆっくり歩いていたおじいちゃんが、自転車に乗っている。
元気になっていく姿を見るのが、私も嬉しかったです。
途中、しばらく姿を見かけない時期もありました。
でも、またお会いするようになりました。
「大丈夫?」
と聞くと、
「大丈夫や。」
いつもの調子で答えてくれました。
その声を聞くと、また元気になられたんだなと思いました。
そして、会えば相変わらずのジョーク。
そんな日々が続いていました。

また、姿を見かけなくなりました。
ところが、それからまた、おじいちゃんを見かけなくなりました。
最初は、しばらくしたらまた会えるだろうと思っていました。
以前も、そういうことがあったからです。
でも、今回はなかなかお会いできません。
何週間も過ぎ、何か月も経ちました。
今では、もう数か月間、おじいちゃんの姿を見ていません。
おばあちゃんも、おじいちゃんも、いつの間にかお会いすることがなくなってしまいました。
毎日、おばあちゃんの家の前を通ります。
足場が組まれ、ブルーシートに覆われた家。
大切に育てていた木々がなくなった庭。
その光景を見るたびに、おばあちゃんの笑顔と一緒に、あのおじいちゃんのことも思い出します。
いつもの道に残っている思い出
最初は挨拶をしても返事をしてくれなかったこと。
何度も挨拶を交わすうちに、自然と立ち話をするようになったこと。
いつも、何かしら笑えないジョークを言っていたこと。
ゆっくり歩いていたのに、少しずつ元気になって、自転車に乗るようになったこと。
「大丈夫?」
「大丈夫や。」
あの何気ないやり取りも、今では懐かしく感じます。
おじいちゃんも、おばあちゃんも、今どうされているのでしょう。
また、いつもの道でばったりお会いできたら嬉しいな。
おじいちゃんには、また得意の顔が引きつるジョークを聞かせてもらいたいものです。
きっと、また笑えない冗談を言うのでしょうね(笑)。
でも、今ならそれも嬉しいと思います。
いつも顔を合わせていた人に会えなくなるのは、やっぱり寂しいものです。
特別な出来事があったわけではありません。
毎日の挨拶と、ほんの数分間の立ち話。
それだけなのに、こんなにも記憶に残っている。
いつもの道を通るたびに、あのおじいちゃんを思い出します。
また、あの元気な声が聞けたらいいなと思っています。