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鍬山神社で鹿と目が合った日|驚いたのは、私だけじゃなかった。

2015.03.15

木と木の間に、何かいる?

今から10年ほど前のことです。

京都府亀岡市にある鍬山神社を参拝していたとき、忘れられない出来事がありました。

鍬山神社には、ときどき参拝に訪れていました。

その日も、いつものように境内を歩いていました。

すると、ふと木と木の間が気になったのです。

何かが見えたわけではありません。

音がしたわけでもありません。

ただ、何となく違和感がありました。

ん???

何だろう。

気になった私は、木々の間へ近づいていきました。

そして、そこをのぞき込んだ、その瞬間です。

にゅっ!

目の前すれすれに、とんでもなく大きな鹿の横顔が現れたのです。

うわっ!

本当に目の前でした。

少し離れたところに鹿がいた、という話ではありません。

大きな鹿の顔が、いきなり目の前にあったのです。

大人の鹿でした。

顔がとても大きく、鼻先から目元まで長い、立派な横顔でした。

顔は横を向いたまま。

ところが、その大きな目が、こちらを見たのです。

まるで、

「えっ!?」

と言っているような、びっくりした目でした。

もちろん、私も驚きました。

「うわっ!」

思わず、後ろへ飛びのいてしまいました。

ところが、驚いたのは私だけではありませんでした。

鹿も「うわっ!」

私が飛びのいたのと、ほとんど同時です。

鹿も、まったく同じように後ろへ飛びのいたのです。

その反応が、本当にそっくりでした。

私が「うわっ!」なら、鹿も「うわっ!」。

どちらかが先に気づいて逃げたというより、お互いが同じ瞬間に相手の存在に気づき、同じように驚いた感じです。

一瞬、目と目が合いました。

鹿の大きな目が、驚いていたことを今でもはっきり覚えています。

そして、その直後。

あんなに大きな身体なのに、鹿はくるりと向きを変えました。

その動きが、また速い。

さっきまで目の前にあった大きな顔が、一瞬で森の中へ消えていったのです。

あっという間でした。

私は、その場でびっくりしたまま。

鹿もきっと、相当びっくりしたことでしょう。

お互い、何してんねん!

少し落ち着いてから、何だかおかしくなってきました。

そもそも、木と木の間が気になって、わざわざのぞき込んだ私も私です。

でも、あんなに大きな鹿が、私の顔が目の前に来るまで気づかなかったのも、なかなかのものです。

もしかすると、鹿も何か違和感を感じて、こちらをのぞき込んだところだったのでしょうか。

もし、そうだったとしたら。

人間と鹿が、お互いに気になって顔を近づけた結果、至近距離でご対面。

そして二人そろって、

「うわっ!」

何をやっているのでしょう(笑)。

思い出しても笑ってしまいます。

でも、あの瞬間に感じたことがありました。

人間も鹿も、びっくりしたときの反応は同じなんだ。

相手を見て、目を見開き、思わず後ろへ飛びのく。

言葉はなくても、そのとき鹿が驚いたことは、私にはよく伝わってきました。

鍬山神社という古い森

この出来事があった鍬山神社は、京都府亀岡市に鎮座する古い神社です。

創祀は和銅2年(709年)と伝えられています。

御祭神は大己貴命(大国主命)と誉田別命(応神天皇)。

古くから丹波の土地を守る神社として信仰されてきました。

鍬山神社には、かつて亀岡盆地が大きな湖だったという伝承があります。

大己貴命が神々と力を合わせ、鍬で山峡を切り開いて水を流し、豊かな土地をつくったと伝えられているのです。

神社の名前にある「鍬」も、この伝承に結びついています。

人々が自然と向き合い、土地を開き、生活を営んできた歴史が、この神社の由緒には残されています。

境内には木々が生い茂り、今も豊かな自然が感じられます。

そんな森の中で、私は一頭の鹿と出会いました。

普段なら、人間が近づけば鹿のほうが先に気づき、警戒するのかもしれません。

けれど、あの日は違いました。

お互い、完全に不意を突かれてしまったのです。

あの鹿も、覚えているだろうか

あれから、もう10年ほど経ちます。

それでも、あの瞬間のことは鮮明に覚えています。

大きな鹿の横顔。

こちらへ動いた大きな目。

驚いた表情。

そして、二人そろって後ろへ飛びのいたこと。

くるりと向きを変え、一瞬で姿を消した鹿の動きまで、今でもはっきり覚えています。

あの鹿も、私と同じように違和感を感じていたのでしょうか。

気になってのぞき込んだら、人間の顔が目の前にあった。

「何やねん、びっくりしたわ!」

鹿もそんな気分だったのかもしれません。

もし、あの鹿が仲間に話せるとしたら、どんなふうに説明するのでしょう。

「森で変な人間に出会ってな。お互い、めちゃくちゃびっくりしてん!」

なんて話していたら面白いですね。

神社を参拝していると、ときどき思いがけない出来事に出会います。

不思議なものもあれば、温かいものもある。

そして今回のように、思い出すたびに笑ってしまう出来事もあります。

あの鹿が、その後どうしているのかは分かりません。

でも、もしもう一度出会えたら、きっと私はすぐに気づくと思います。

あの大きな横顔と、びっくりした目は忘れられません。

鍬山神社で出会った、大きな鹿。

あのときは、お互い本当にびっくりしたなぁ。

今でも思い出すと、自然と笑ってしまいます。

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