ChatGPTソラ先生と学ぶ!中級者のためのAI実践講座【第51回】ChatGPTで競合・市場調査を進める方法|業界動向・顧客ニーズ・自社の立ち位置を理解する実践講座
こんにちは、ソラ先生です。
前回は、ChatGPTを使ってアンケートを設計し、お客様や従業員から必要な意見を集め、回答結果を改善へつなげる方法を学びました。
今回は、視点を社外へ広げてみましょう。
テーマは「競合・市場調査」です。
皆さんは、こんな疑問を持ったことはありませんか?
「自社と同じような仕事をしている会社は、どのようなサービスを提供しているのだろう?」
「最近、お客様から特定の材料や加工方法について相談されることが増えたけれど、市場でも需要が高まっているのだろうか?」
「新しい分野へ進出したいけれど、どのような技術や設備が必要なのか分からない」
「競合企業と比較して、自社の強みや弱みを整理したい」
「業界の情報はたくさんあるけれど、どれが本当に重要なのか判断できない」
会社の経営や事業開発では、自社の技術や実績を理解することが重要です。
しかし、自社のことだけを見ていては、お客様がどのような選択肢を持っているのか、十分に理解できない場合があります。
例えば、樹脂部品を製作したいお客様がいたとします。
そのお客様は、切削加工だけを検討しているとは限りません。
射出成形、3Dプリンター、真空注型など、目的や数量に応じて異なる製作方法を比較しているかもしれません。
また、同じ切削加工でも、短納期の試作を得意とする会社や、量産加工を中心とする会社など、対応する仕事に違いがある場合があります。
こうした情報を調べることで、お客様が何を基準に製作先を選ぶのか、考える手掛かりが得られます。
ChatGPTは、調査項目の整理、公開資料の比較、情報の分類、仮説の検討などを支援できます。
今回は、**「調査目的を決める → 市場を理解する → 公開情報を集める → 競合・代替手段を比較する → 顧客ニーズを考える → 自社の立ち位置を整理する → 次の行動へつなげる」**という流れを学びましょう。
1.市場調査とは何でしょうか?
市場調査とは、商品やサービスが利用される市場について、顧客、需要、競合、技術、取引条件などの情報を集め、分析することです。
例えば、製造業なら、次のようなことを調べます。
どのような業界で部品が必要とされているのか。
どのような材料が使われているのか。
どのような加工技術が選択されているのか。
どの程度の製作数量が求められているのか。
品質や納期について、どのような要求があるのか。
どのような会社が製作に対応しているのか。
こうした情報です。
ただし、すべての市場について一度に調べる必要はありません。
例えば、高機能樹脂の切削加工について調べたいなら、その用途や加工上の課題に絞る方法があります。
一方、試作品の製作市場全体を理解したいなら、切削加工以外の製作方法も検討する必要があるでしょう。
重要なのは、調査する対象を明確にすることです。
市場調査は、情報をたくさん集めるための仕事ではありません。判断に必要な情報を集めるための仕事です。
実践プロンプト①
「樹脂部品の試作・小ロット製作について市場調査を行いたいです。顧客業界、用途、材料、製作数量、加工方法、品質、納期、競合・代替手段という視点から、調査項目を整理してください」
2.競合調査とは何でしょうか?
競合調査とは、お客様が商品やサービスを選ぶ際に、比較対象となり得る企業やサービスについて調べることです。
例えば、ある会社がCNC切削加工による樹脂部品を製作しているとします。
この場合、同じようにCNC切削加工を行う会社は、比較対象になる可能性があります。
しかし、競合するのは同じ加工方法の会社だけでしょうか。
例えば、お客様が試作品を一個だけ製作したいと考えている場合です。
その用途によっては、3Dプリンターで製作する方法も候補になるかもしれません。
また、形状や数量によっては、金型を使用した製作方法が検討される場合もあります。
つまり、お客様が解決したい課題によって、比較対象が変わるのです。
そこで、次の二つを区別して考えます。
直接的な競合
比較的近い製品やサービスを提供する会社。
代替手段
異なる方法で、お客様の目的を達成できる可能性がある製品やサービス。
ただし、どの方法が適切かは、材料特性、形状、精度、数量、コスト、納期などの条件によって変わります。
実践プロンプト②
「CNC切削加工による樹脂試作部品について、直接的な競合と代替となる製作方法を整理してください。切削加工、3Dプリンター、真空注型、射出成形などを比較する際、どの条件を確認すべきか考えてください」
3.競合調査は、他社の優劣を決めるためではない
例えば、ある会社のホームページに、
「高精度加工に対応」
と書かれていたとします。
別の会社には、
「短納期対応」
と書かれているかもしれません。
この場合、どちらの会社が優れているのでしょうか。
それだけでは分かりません。
なぜなら、加工精度や納期は、材料、形状、数量、設備負荷などによって変わるからです。
また、ホームページに掲載されていない技術や実績がある可能性もあります。
そこで、競合調査では、確認できる情報と、確認できない情報を分けます。
例えば、
公開されている加工方法。
掲載されている対応材料。
説明されている製作数量。
紹介されている用途。
相談方法。
こうした情報は、公開資料から確認できる場合があります。
一方、実際の加工能力、品質管理の詳細、個別案件の価格や納期については、公開情報だけでは判断できない場合があります。
実践プロンプト③
「複数の加工会社の公開情報を比較したいです。確認できる事実と、公開情報だけでは判断できない内容を分けてください。『高精度』『短納期』『高品質』などの表現を、そのまま客観的な優劣として扱わない比較方法を考えてください」
4.実践例|樹脂加工市場を調べる
ここからは、架空の製造会社が、新しい仕事の可能性を調べる場面を考えてみましょう。
現在、その会社では一般的な樹脂部品の切削加工を行っています。
今後、高機能樹脂の試作や小ロット製作を増やせないか検討しているとします。
例えば、PEEKやPPSなどの材料です。
このとき、最初から新しい設備を購入する必要があるでしょうか。
まだ判断できません。
まず、どのような用途で、どのような要求があるのか調べる必要があります。
例えば、次のような調査項目を考えます。
| 調査項目 | 確認したいこと |
|---|---|
| 材料 | どの材料が、どのような用途で選ばれるか |
| 用途 | 装置部品、機構部品、絶縁部品など |
| 数量 | 試作、少量製作、継続製作の違い |
| 加工条件 | 精度、形状、工具、固定方法など |
| 顧客要求 | 耐熱性、耐薬品性、寸法安定性など |
| 競合・代替手段 | ほかにどの製作方法があるか |
| 事業上の課題 | 材料調達、加工時間、費用、検査体制など |
ただし、PEEKやPPSという材料名だけで、必要な性能が決まるわけではありません。
材料のグレードや使用環境によって特性が変わる場合があります。
そこで、用途や要求性能を確認することが重要です。
5.ChatGPTに市場調査の計画を作らせる
市場調査では、いきなりインターネットで検索し始めると、情報が広がりすぎる場合があります。
例えば、「PEEK 加工」という言葉で調べると、材料メーカー、加工会社、技術解説、研究論文など、さまざまな情報が見つかる可能性があります。
しかし、どの情報が必要なのか決まっていなければ、調査に時間がかかります。
そこで、最初に調査計画を作ります。
例えば、
何を判断したいのか。
どの市場を対象にするのか。
どの情報が必要なのか。
どの資料から調べるのか。
調査結果をどう比較するのか。
こうした項目です。
実践プロンプト④
「PEEKやPPSなどの高機能樹脂について、試作・小ロット切削加工の事業機会を調べたいです。調査目的、調査項目、情報源、比較方法、最終的に判断したいことを整理した市場調査計画を作成してください」
このように、最初に調査の設計を行うことで、必要な情報へ集中しやすくなります。
6.どのような情報源を使う?
市場調査では、情報源の選び方が重要です。
例えば、次のような資料があります。
公的機関の統計資料
産業別の生産、出荷、事業所数などを確認できる場合があります。
業界団体の資料
業界の動向や技術的な課題について、情報が公開されていることがあります。
材料メーカーの技術資料
材料の特性、用途、加工上の注意点などを確認できる場合があります。
企業の公式サイト
対応技術、製品、設備、サービスなどを調べられます。
研究論文や技術報告
新しい技術や材料の研究動向を調べる際に役立つ場合があります。
展示会や業界イベントの公開情報
どのような技術や製品が紹介されているか調べることができます。
ただし、資料によって目的や信頼性、対象範囲が異なります。
例えば、メーカーの技術資料は材料特性を調べるうえで役立ちますが、特定市場の需要規模を直接示しているとは限りません。
また、企業のホームページは、その企業が公開しているサービスを確認するためには役立ちますが、業界全体の平均的な実態を表しているわけではありません。
7.公的統計の数字を正しく読む
例えば、ある業界の出荷額が増加しているという統計があったとします。
その場合、需要が伸びていると考えてよいでしょうか。
必ずしもそうではありません。
例えば、製品価格の上昇によって出荷額が増えた可能性があります。
また、統計の対象範囲や分類方法が変更されている場合もあります。
さらに、業界全体の出荷額が増えていても、特定の加工方法への需要が増えているとは限りません。
そこで、次のことを確認します。
統計の対象は何か。
金額なのか数量なのか。
対象期間はいつか。
前年と同じ基準で比較できるか。
どの業界や製品が含まれているか。
その数字が、自社で検討している市場とどの程度関係しているか。
こうした項目です。
実践プロンプト⑤
「公的統計で、ある産業の出荷額が増加していることを確認しました。この情報を市場調査に使う際、価格変動、数量変動、統計の対象範囲、分類変更、対象期間など、確認すべき項目を整理してください」
8.検索結果だけで判断しない
インターネットで市場情報を調べると、多くの検索結果が表示されます。
例えば、
「高機能樹脂 市場 成長」
と検索したとします。
すると、市場規模や成長率についての記事が見つかるかもしれません。
しかし、検索結果に表示されている短い説明文だけで判断することはできません。
例えば、市場規模の数字について、次のことを確認する必要があります。
対象となる地域。
対象期間。
市場の定義。
金額の単位。
実績なのか予測なのか。
調査方法。
公開日。
こうした項目です。
また、同じ材料についての市場調査でも、対象用途や製品区分が違えば、数字が異なる場合があります。
そのため、ChatGPTに情報を整理してもらう場合も、出典と定義を確認することが重要です。
実践プロンプト⑥
「高機能樹脂の市場規模に関する複数の資料を比較したいです。対象地域、対象期間、市場の定義、実績・予測の区別、出典、公開日を整理してください。条件の異なる数字を単純に比較しないでください」
9.ChatGPTの市場情報を、そのまま信じてよい?
ChatGPTは、市場調査に関する質問に回答できます。
しかし、回答に具体的な数字や企業名が含まれていても、その情報が現在も正確であるとは限りません。
例えば、ある企業が特定のサービスへ対応しているという情報です。
過去には対応していても、現在の状況が変わっている場合があります。
また、市場規模や成長率の数字は、調査会社や算出方法によって異なることがあります。
そこで、重要な情報については、原資料を確認します。
例えば、
企業の公式サイト。
公的統計。
業界団体の資料。
研究機関の報告。
こうした情報源です。
そして、ChatGPTには、確認できた資料をもとに比較・整理してもらいます。
AIの回答を調査の出発点として使うことと、確認済みの事実として採用することは区別しましょう。
10.競合企業をどう選ぶ?
競合調査では、どの企業を比較対象にするかが重要です。
例えば、樹脂の試作加工について調べるとします。
大手の量産メーカーと、小規模な試作加工会社では、対応する仕事が異なる可能性があります。
また、加工方法や顧客業界によっても違いがあります。
そのため、比較する企業の条件を決めます。
例えば、
対応する材料。
主な加工方法。
試作・小ロットへの対応。
対応する製品の種類。
公開されている技術情報。
相談や見積の仕組み。
こうした項目です。
ただし、ホームページに記載がないからといって、その企業に対応能力がないとは限りません。
そこで、比較表には「記載なし」「未確認」などの区分を設けます。
実践プロンプト⑦
「樹脂の試作・小ロット加工に関する競合調査を行いたいです。企業の公開情報から、加工方法、対応材料、製作数量、技術紹介、相談方法などを比較する表を設計してください。公開情報がない項目は、対応不可ではなく未確認として扱ってください」
11.競合比較表を作成する
例えば、三つの架空の加工会社を比較するとします。
| 比較項目 | A社 | B社 | C社 |
|---|---|---|---|
| 主な加工方法 | CNC切削 | 射出成形 | 3Dプリント |
| 公開されている用途 | 装置部品 | 成形品 | 試作モデル |
| 試作対応 | 記載あり | 要確認 | 記載あり |
| 少量製作 | 記載あり | 要確認 | 記載あり |
| 主な対象材料 | 公開資料で確認 | 公開資料で確認 | 公開資料で確認 |
| 個別案件の価格 | 未確認 | 未確認 | 未確認 |
| 個別案件の納期 | 未確認 | 未確認 | 未確認 |
※架空企業を使った、比較表の構成例です。
この表から、各社が公開している情報の違いを確認できます。
ただし、加工方法だけで、どの会社がお客様に最適か判断できるわけではありません。
例えば、寸法精度や材料特性、数量、製作期間などの条件によって、適切な方法が変わるからです。
また、企業によっては複数の加工方法を組み合わせて対応している場合もあります。
そのため、比較項目の選び方が重要です。
12.価格を比較するときの注意点
競合調査では、価格が気になる場合があります。
例えば、ある会社が、
「試作加工○○円から」
と表示していたとします。
この金額を、自社の見積価格と直接比較してよいでしょうか。
条件を確認する必要があります。
例えば、
製品の材料。
形状。
寸法。
数量。
精度。
表面仕上げ。
納期。
検査内容。
こうした条件です。
同じ材質の部品でも、形状や数量が違えば加工費が大きく変わる場合があります。
また、表示されている価格に、材料費や送料などが含まれていない可能性もあります。
そのため、比較条件をそろえる必要があります。
実践プロンプト⑧
「複数の加工サービスの公開価格を比較したいです。材料、形状、数量、精度、納期、検査、送料などの条件をそろえるための確認項目を整理してください。条件が異なる価格を単純に安い・高いと判断しないでください」
13.納期を比較するときの注意点
価格と同じように、納期についても注意が必要です。
例えば、ある会社が短納期対応を案内していたとします。
しかし、どのような条件で対応できるのでしょうか。
例えば、
標準的な材料を使用する場合。
材料の在庫がある場合。
加工設備に空きがある場合。
単純な形状の場合。
といった条件が関係しているかもしれません。
また、短納期の定義も企業によって異なる可能性があります。
そのため、公開情報だけで実際の納期を確定することはできません。
そこで、納期についても、確認できる条件と未確認事項を分けて整理します。
実践プロンプト⑨
「加工会社の納期対応を比較したいです。公開されている標準納期や短納期の案内について、対象材料、数量、形状、図面の確定状況、材料在庫などの条件を整理してください」
14.競合調査から、自社の特徴を考える
競合調査を進めると、さまざまな会社が異なるサービスを提供していることが分かります。
では、自社の特徴をどう考えればよいのでしょうか。
例えば、自社では少量の試作品を製作しているとします。
しかし、ほかの会社も少量試作へ対応しているかもしれません。
その場合、「少量試作に対応」という情報だけでは、違いが分かりにくい可能性があります。
そこで、実際の仕事を詳しく整理します。
例えば、
図面が完成していない段階の相談に対応しているのか。
現物をもとにした製作を行っているのか。
材料選定の相談を受けているのか。
試作から継続製作まで対応しているのか。
こうした項目です。
ただし、実際に行っていない仕事を、自社の特徴として書くことはできません。
また、他社が対応していないと確認できないことを、自社だけの特徴として主張することも適切ではありません。
自社の特徴は、他社を低く評価することで作るものではありません。実際に提供している価値を明確にすることで理解できます。
15.顧客ニーズは、どこから調べる?
市場調査では、競合企業だけでなく、お客様のニーズを理解することが重要です。
例えば、次のような情報源があります。
問い合わせメール。
見積依頼。
技術相談。
納品後の意見。
アンケート。
失注理由。
公開されている技術課題。
こうした情報です。
例えば、過去の問い合わせで、
「現在使用している部品が入手できなくなりました」
という相談が複数あったとします。
この場合、代替部品の製作に関する需要がある可能性があります。
ただし、数件の相談だけで、市場全体に大きな需要があると判断することはできません。
そこで、実際の問い合わせ件数や、業界での設備更新状況などを確認する必要があります。
実践プロンプト⑩
「過去の問い合わせに、廃番部品の代替製作、図面のない部品の再製作、材料変更の相談があります。これらを顧客ニーズの仮説として整理し、市場全体に同様の需要があるか調べるための情報源を考えてください」
16.顧客の「選択基準」を考える
お客様が加工会社を選ぶ際、何を基準にしているのでしょうか。
例えば、
価格。
品質。
納期。
技術対応力。
相談のしやすさ。
製作実績。
こうした項目が考えられます。
しかし、すべてのお客様が同じ基準で選ぶとは限りません。
例えば、研究開発の試作では、技術的な相談が重要になる場合があります。
一方、生産ラインの交換部品では、納期が重要になる場合もあるでしょう。
また、製品の性能が最優先される仕事もあります。
そこで、顧客の用途や仕事の目的ごとに、選択基準を考える必要があります。
ただし、実際に何を重視しているかは、お客様に確認することが重要です。
実践プロンプト⑪
「樹脂部品の製作を依頼するお客様について、研究開発試作、装置部品、保守用交換部品などの用途別に、どのような選択基準が考えられるか整理してください。価格、品質、納期、技術相談などの優先順位を推測で決めつけず、確認する質問も作成してください」
17.市場の変化と自社の仕事を結びつける
例えば、ある産業で新しい技術の採用が進んでいるという情報を見つけたとします。
その場合、自社にも仕事が増えると考えてよいでしょうか。
必ずしもそうではありません。
例えば、特定の材料の需要が増えていても、その材料が主に射出成形で使用されている可能性があります。
一方、自社が得意とする切削加工の試作段階で、相談が増えるかもしれません。
このように、市場全体の変化が、自社の仕事へどのように関係するか確認する必要があります。
そこで、次のような流れを考えます。
市場で何が変化しているのか。
その変化によって、どのような製品が必要になるのか。
製品を開発・製造するうえで、どのような技術が必要になるのか。
その中で、自社が対応できる工程は何か。
不足している技術や設備は何か。
こうしたことです。
実践プロンプト⑫
「ある産業で新しい材料や製造技術への関心が高まっているとします。その市場動向が樹脂切削加工の試作や小ロット製作へつながるか検討したいです。市場の変化から必要部品、製作工程、自社の対応可能範囲へ分解して考える方法を整理してください」
18.市場規模だけで事業機会を判断しない
例えば、ある市場の規模が非常に大きかったとします。
その場合、自社にとって魅力的な市場なのでしょうか。
必ずしもそうではありません。
市場規模が大きくても、参入に必要な設備や品質体制が、自社の事業規模に合わない場合があります。
一方、市場規模が比較的小さくても、特定の技術が必要とされ、自社の経験を活かせる可能性があります。
そのため、市場規模だけでなく、次のような情報を確認します。
必要とされる技術。
製作数量。
品質要求。
設備投資。
材料調達。
加工原価。
受注までの期間。
継続取引の可能性。
こうした項目です。
ただし、将来の取引が確定していない段階では、利益や受注見込みを過大評価しないようにする必要があります。
19.自社の立ち位置を整理する
ここまでの調査結果をもとに、自社の立ち位置を考えてみましょう。
例えば、次の四つの視点を使う方法があります。
自社の強み
実際の技術、経験、対応方法など。
自社の弱み・制約
設備能力、人員、対応可能な数量など。
市場の機会
顧客ニーズや技術変化など。
市場のリスク
需要の変動、競争、材料調達、技術の変化など。
こうした分類は、SWOT分析の考え方に近いものです。
ただし、SWOT分析へ項目を書き込むだけでは、経営判断はできません。
例えば、
「高機能樹脂の加工経験がある」
という強みがあったとしても、その経験が新しい市場で必要とされるとは限りません。
そこで、実際の顧客ニーズや技術要求と結びつける必要があります。
実践プロンプト⑬
「公開情報から確認した市場動向と、自社の技術・設備・受注実績をもとに、SWOT分析を行いたいです。確認できた事実、社内での評価、未確認の仮説を分けて整理してください」
20.SWOT分析だけで終わらせない
例えば、市場調査の結果から、次のような内容が整理されたとします。
強みは、樹脂部品の少量切削加工に関する経験。
弱みは、対応できる大型部品の寸法に制約があること。
機会は、開発段階での技術相談の需要が考えられること。
リスクは、材料価格の変動や代替加工方法の進展です。
これらを一覧にすると、状況を理解しやすくなります。
しかし、そこで終わらせてはいけません。
例えば、強みと機会を組み合わせて、
「開発段階の相談について、どのような情報を提供すれば役立つか」
と考えることができます。
また、弱みとリスクを確認し、
「大型部品の相談があった場合、どのように対応するか」
と考えることもできます。
ただし、対応できない仕事を無理に受注することが良いわけではありません。
必要に応じて、協力会社との連携や、対応範囲の明確化などを検討する方法があります。
実践プロンプト⑭
「SWOT分析で整理した強み、弱み、機会、リスクを、実際の行動案へつなげたいです。どのような情報提供、技術検証、協力会社との連携などが考えられるか整理してください。実行前に確認すべき条件も示してください」
21.競合調査の結果をホームページへ活かす
市場調査は、新規事業の検討だけでなく、ホームページの改善にも役立つ場合があります。
例えば、競合企業の公開情報を調べた結果、多くの会社が加工方法や設備の説明を掲載していたとします。
一方、お客様の問い合わせでは、
「図面がなくても相談できますか?」
という質問が多かったとします。
この場合、自社のホームページでは、設備紹介だけでなく、相談方法の案内を充実させることが役立つかもしれません。
ただし、他社が掲載しているからという理由だけで、同じ内容を追加する必要はありません。
実際のお客様が必要としている情報を確認することが大切です。
例えば、
どのような相談ができるか。
どのような資料が必要か。
図面がない場合に何を伝えればよいか。
見積までにどのような確認があるか。
こうした情報です。
ChatGPTには次のように相談できます。
実践プロンプト⑮
「競合企業の公開サイトを調べ、加工方法、材料紹介、製作実績、問い合わせ案内の掲載内容を整理しました。一方、自社へは図面や相談方法についての問い合わせが多くあります。競合情報を参考にしながら、実際の顧客ニーズに合ったホームページ改善案を考えてください」
22.市場調査から新しい投資を判断する前に
例えば、市場調査によって、特定の加工技術へ需要がある可能性が見つかったとします。
そのため、新しい設備を導入したいと考えた場合です。
しかし、市場調査で需要の可能性が見つかったことと、実際に受注できることは異なります。
そこで、設備投資の前に確認することがあります。
例えば、
実際に相談があるか。
加工条件を満たせるか。
材料を調達できるか。
品質を確保できるか。
製作原価はどの程度か。
設備をどの程度稼働させられるか。
初期投資を回収できるか。
こうした項目です。
必要に応じて、既存設備や協力会社を利用した試作など、小さな検証から始める方法も考えられます。
これは、前に学んだ設備投資の採算評価とも関係しています。
市場調査と設備投資の判断を、別々の仕事として考えないことが重要です。
23.市場調査レポートを作成する
ここまでの内容を、一つのレポートへまとめてみましょう。
例えば、次のような構成です。
① 調査目的
何を判断するための調査なのか。
② 対象市場
材料、加工方法、顧客業界、用途など。
③ 市場動向
確認できた公開情報と出典。
④ 顧客ニーズ
問い合わせや調査資料から確認した内容。
⑤ 競合・代替手段
公開情報から比較できる技術やサービス。
⑥ 自社の対応可能範囲
実際の技術、設備、経験、制約。
⑦ 事業機会とリスク
可能性と未確認事項。
⑧ 次の行動
追加調査、技術検証、顧客ヒアリングなど。
こうした構成なら、単なる情報の一覧ではなく、判断に使うための資料へ整理できます。
実践プロンプト⑯
「市場調査の結果を、経営判断に使えるレポートへまとめたいです。調査目的、対象市場、市場動向、顧客ニーズ、競合・代替手段、自社の対応範囲、機会、リスク、次の行動を整理してください。事実と仮説を区別し、重要な情報には出典と確認日を付けてください」
24.今日の実践課題|市場調査を設計してみよう
今回は、ChatGPTを使って、樹脂の試作・小ロット加工に関する市場調査を行う練習をしましょう。
ステップ① 調査目的を決める
ChatGPTに次のように質問します。
「樹脂の試作・小ロット切削加工について、市場の特徴と事業機会を調べたいです。調査目的と判断したいことを整理してください」
ステップ② 対象市場を定義する
「高機能樹脂、一般樹脂、装置部品、研究開発試作など、調査範囲をどのように設定すべきか考えてください」
ステップ③ 情報源を整理する
「公的統計、業界団体、材料メーカー、企業公式サイト、研究論文などから、どのような情報を得られるか整理してください」
ステップ④ 市場動向を調べる
「対象市場について、需要、材料、製作方法、顧客業界の変化を調べるための項目を考えてください。実績と将来予測を区別してください」
ステップ⑤ 競合・代替手段を整理する
「CNC切削加工、3Dプリンター、真空注型、射出成形など、顧客が比較する可能性のある製作方法を整理してください」
ステップ⑥ 競合比較表を作成する
「企業の公開情報から、加工方法、材料、数量、用途、相談方法を比較する表を作成してください。確認できない項目は未確認として扱ってください」
ステップ⑦ 顧客ニーズを考える
「問い合わせや技術相談から、どのような顧客ニーズが考えられるか整理してください。個別の相談と市場全体の需要を混同しないでください」
ステップ⑧ 自社の対応範囲を整理する
「自社の技術、設備、実績、対応できる数量、制約について、確認する項目を考えてください」
ステップ⑨ SWOT分析を行う
「市場の機会とリスク、自社の強みと弱みを整理してください。確認できた事実と未確認の仮説を分けてください」
ステップ⑩ 次の行動を考える
「追加調査、顧客ヒアリング、技術検証、試作、協力会社との連携など、事業機会を検討するための行動を整理してください」
ステップ⑪ 市場調査レポートにまとめる
「調査結果を、経営判断に必要な情報と未確認事項が分かるレポートへまとめてください」
この練習では、将来性のある市場を一つ選ぶことだけが目的ではありません。
公開情報と実際の顧客ニーズをもとに、自社がどのような価値を提供できる可能性があるか考えることが目的です。
25.ChatGPTで市場調査を行うときの注意点
ChatGPTは、市場調査の計画、調査項目の整理、公開情報の比較、仮説の検討などを支援できます。
しかし、現在の市場規模や企業の対応状況を、常に正確に把握しているわけではありません。
そのため、具体的な数字や企業情報については、最新の公開資料を確認する必要があります。
また、市場規模の数字が複数ある場合には、対象地域や市場の定義、調査期間などを比較する必要があります。
さらに、競合企業について、公開されていない技術や価格、納期などを勝手に判断してはいけません。
また、企業のホームページに記載されている内容は、その企業が公開している情報です。
実際のサービスの品質や対応能力を客観的に評価するには、別の確認が必要になる場合があります。
そして、市場に需要があることと、自社が実際に仕事を受注できることは異なります。
そのため、市場調査の結果をもとに設備投資や事業計画を検討する場合には、技術面と経済面の両方から確認する必要があります。
26.競合・市場調査の本当の目的は何でしょうか?
最後に、競合・市場調査について考えてみましょう。
会社の経営では、自社の技術や実績を理解することが重要です。
しかし、自分たちが何をできるかという視点だけでは、お客様にとっての価値を十分に理解できない場合があります。
例えば、同じ部品を製作するにしても、お客様が重視する条件は異なります。
試作の段階では、加工方法について相談できることが重要かもしれません。
一方、継続生産では、品質の安定性や供給体制が重要になる場合があります。
また、修理や保守のための部品なら、現物から製作できるかどうかが重要になる可能性もあります。
こうした違いを理解するために、市場や競合、代替手段を調べることが役立ちます。
そして、その情報をもとに、自社がどのような仕事で価値を提供できるのか考えます。
競合調査は、他社より優れていることを証明するための仕事ではありません。
市場調査も、将来必ず成功する事業を見つけるためのものではありません。
お客様の選択肢を理解し、必要とされる技術やサービスを考え、自社の進む方向を検討するためのものです。
まとめ|市場を理解することから、自社の役割を考える
今回は、ChatGPTを使って競合・市場調査を進める方法を学びました。
重要なポイントは、次のとおりです。
- 市場調査の目的と対象範囲を明確にする。
- 競合企業だけでなく、代替となる製作方法も考える。
- 競合調査を他社の優劣を決めるために使わない。
- 公的統計、業界団体、材料メーカーなどの情報源を確認する。
- 市場規模や成長率の数字は、対象範囲や算出条件を確認する。
- 検索結果だけで判断せず、原資料を確認する。
- 競合比較では、確認できる情報と未確認事項を分ける。
- 価格や納期は、比較条件をそろえる。
- 顧客ニーズを、実際の問い合わせや相談内容から理解する。
- 市場の変化と、自社の技術や設備を結びつけて考える。
- SWOT分析などを使い、自社の立ち位置を整理する。
- 市場調査の結果を、ホームページや情報提供の改善へ活かす。
- 新しい設備投資の前に、需要と技術、採算を確認する。
- 調査結果を、次の行動につながるレポートへまとめる。
会社の経営では、周囲の環境が変化します。
お客様の要求が変わることがあります。
新しい材料や技術が登場する場合があります。
製作方法や取引の仕組みが変わることもあります。
こうした変化を理解するためには、自社の中だけでなく、外部の情報にも目を向けることが重要です。
しかし、外部の情報が多ければよいわけではありません。
大切なのは、必要な情報を選び、確認し、自社の仕事と結びつけて考えることです。
ChatGPTは、調査項目の設計、公開情報の整理、比較表の作成、仮説の検討を手伝うことができます。
しかし、実際の市場や企業の状況については、信頼できる資料を確認する必要があります。
競合・市場調査で大切なのは、他社と比較して勝ち負けを決めることではありません。お客様が何を必要とし、どのような選択肢を持っているのか理解し、自社が提供できる価値を明確にすることです。
AIと一緒に情報を整理し、市場の変化を調べ、顧客の課題を考える。
そして、自社の技術や経験と照らし合わせながら、次の仕事につながる可能性を検討する。
その積み重ねが、中級編で身につけていきたい実践的なAI活用です。
次回【中級編・第52回】
「ChatGPTで新規事業の可能性を検討する方法|市場ニーズ・技術・収益性から事業アイデアを評価する実践講座」
次回は、今回の市場調査をさらに発展させ、新しい事業やサービスを考える方法を学びます。
市場にどのような課題があるのか。
自社の技術や経験をどこで活かせるのか。
どのような費用やリスクがあるのか。
そして、本格的に事業を始める前に、何を検証すべきなのか。
ChatGPTを使って、新規事業のアイデアを整理し、実現可能性を段階的に評価する方法を考えていきましょう。