日本人は、なぜ海を渡ったのか
昔の日本列島は、今よりずっと自然災害の影響を強く受けていました。
鬼界カルデラ、阿蘇、桜島。
大きな噴火が起きれば、火山灰は何日も降り続きます。
空は暗くなり、太陽の光が弱くなる。
作物は育ちにくくなり、木の実や動物も減る。
水も汚れる。
非常に細かい火山灰を毎日吸い込めば、呼吸器にも大きな障害が出ます。
そうなれば、人はその土地を離れます。
昔の人も同じだったと思います。
西へ移動した人。
海を渡った人。
朝鮮半島へ向かった人。
中国大陸へ移った人。
ただし、今の旅行みたいに一気に遠くへ行ったわけではありません。
ある土地で何年か暮らす。
子どもが生まれる。
その子どもたちの一部が、また次の土地へ移る。
そうして何十年、何百年、何世代もかけて、人は少しずつ遠くへ広がっていった。
途中で残る人もいたでしょう。
もっと先へ進む人もいた。
だから同じような文化や言葉、祭り、技術が、離れた土地に残っていても不思議ではありません。
私は、日本を離れた人たちの一部が、さらに西へ移動し続けた可能性もあると思っています。
そして何世代も後。
「自分たちの祖先が暮らしていた土地へ戻りたい」
そう思った人たちが、日本へ戻ってきた。
その時には、長い移動の中で新しい技術や知識を身につけていた。
農耕。
織物。
金属加工。
土木。
水の使い方。
道具づくり。
戻ってきた人たちは、昔と同じ人ではありません。
長い旅の中で学び、変わり、進化していた。
でも、故郷へ戻った。
そう考えると、日本に各地から技術者集団が現れ、生活を大きく変えていったことも、少し違って見えてきます。
人は、災害から逃げるために移動する。
生きるために学ぶ。
そして、いつか故郷へ戻ることもある。
歴史は、案外そんな人間らしい動きの積み重ねなのかもしれません。