会社の水槽で暮らした三匹のヒドジョウさん。|小さな命と過ごした日々
「おいで」と呼ぶと、近づいてくる子たち
(株)アリスでは、以前から会社の水槽でドジョウを飼っています。
これまで何匹ものドジョウと一緒に過ごしてきました。
同じ種類でも、それぞれ性格や行動が違います。
警戒心の強い子もいれば、人の姿を見ると近づいてくる子もいます。
中でも、忘れられない三匹のヒドジョウさんがいました。

とても人懐っこくて、かわいい子たちでした。
特に二匹は、水槽の前に立って、
「おいで。」
と呼ぶと、よく目の前まで来てくれました。
そして、こちらをじっと見つめながら、口をパクパク動かします。
何か話しかけてくれているようでした。
私がその場を離れるまで、ずっとこちらを見て、口を動かしていることもありました。
何を話してくれていたのでしょうね。
餌が欲しかったのかな。
それとも、何か伝えたいことがあったのでしょうか。
そんなことを考えながら、水槽の前で過ごす時間が好きでした。

人によって、表情が違う
あるとき、水槽を興味深そうにのぞき込んでいる人がいました。
その人の前で、いつものようにヒドジョウさんを呼んでみました。
「おいで。」
すると、いつものように近づいてきてくれました。
それを見て、その人は驚いていました。
ドジョウが呼ばれて近づいてくるとは思わなかったのでしょう。
私にとっては、いつもの光景でした。

でも、よく見ていると面白いことがあります。
私を見るときと、ほかの人を見るときでは、表情が違うのです。
私を見ているときは、いつもの顔。
ところが、知らない人を見ると、少し警戒しているような表情になります。
小さな目や口元の様子を毎日見ていると、その違いが感じられます。
言葉を交わすことはできません。
それでも、長く一緒に暮らしていると、何となく伝わってくるものがあります。

片方のひれがなかった子
三匹のうち、一匹は片方のひれがありませんでした。
そのためか、泳ぐときはいつも暴れるような、独特の動きをしていました。
ほかの子たちとは、少し違った泳ぎ方です。
それも、その子の特徴でした。
ところが、ある日、悲しい出来事が起きました。
餌をあげるために開けていた穴から、水槽の外へ飛び出してしまったのです。
残念ながら、その子はお亡くなりになりました。
いつも見ていた、あの独特の泳ぎ方。
もう見ることができなくなりました。
小さな水槽の中でも、一匹いなくなると寂しいものです。

弱っている仲間のそばにいるドジョウ
私は、これまで何匹ものドジョウを飼い、お別れも経験してきました。
その中で、何度も目にしてきた光景があります。
一匹のドジョウが弱り、苦しそうにしていると、必ず別のドジョウがそばについているのです。
今回だけの話ではありません。
これまで飼ってきたドジョウたちでも、何度も同じような光景を見てきました。
弱った子のそばに、一匹が寄り添っている。
しばらくすると、別の子と交代することもあります。
その様子を見ていると、まるで仲間を気遣っているように感じます。
もちろん、ドジョウ同士が何を考えているのか、私には分かりません。
それでも、何度も目にしてきた光景です。
小さな身体で、弱った仲間のそばにいる。
その姿は、今でも強く印象に残っています。

何度も動けなくなり、それでも頑張った子
最初の一匹とのお別れのあと、もう一匹のヒドジョウさんも、次第に弱っていきました。
この子は、特に人懐っこかった二匹のうちの一匹です。
「おいで。」
と呼ぶと、目の前まで来てくれた子でした。
体調が悪くなってからは、動くこともつらそうでした。
水槽の底で、じっとしている時間が増えていきました。
もう動けないのかな。
そう思って見ていると、また動き始めます。
しばらくすると、再び動けなくなる。
それでも、また動き出す。
そんな状態を何度も繰り返していました。
写真は、その頃に撮影したものです。
身体がしんどそうで、いつもの元気な姿とは違います。
それでも、一生懸命に動こうとしていました。
私が水槽の前に行くと、こちらを見て、口をパクパク動かしてくれることもありました。
いつものように、何か話しかけてくれているようでした。
その姿を見ると、何とも言えない気持ちになりました。
何度も動けなくなりながら、また動き出す。
本当によく頑張っていました。
その状態が一週間ほど続き、とうとうお別れの日が来ました。

三匹とも、いなくなってしまった
やがて、残っていた三匹目のヒドジョウさんもお亡くなりになりました。
あんなに人懐っこかった子たちが、みんないなくなってしまいました。
水槽の前に立つと、以前のことを思い出します。
「おいで。」
そう呼ぶと、近づいてきてくれたこと。
こちらを見ながら、ずっと口をパクパク動かしていたこと。
知らない人がのぞき込むと、警戒したような表情になったこと。
片方のひれがなく、独特の泳ぎ方をしていた子のこと。
そして、弱った仲間のそばに寄り添っていた姿。
一匹一匹に、それぞれの思い出があります。
悲しくて、それから数年間、ヒドジョウを飼うことはありませんでした。

数年ぶりに迎えた、小さな二匹
それから数年が経ちました。
最近になって、またヒドジョウを飼い始めました。
今度は、小さな二匹です。
新しく会社の水槽へやって来た子たち。
まだ小さくて、これからどんな子に育っていくのか楽しみです。
以前の子たちのように、人懐っこくなってくれるかな。
「おいで。」
と呼ぶと、近づいてきてくれるようになるかな。
水槽の前で、また口をパクパク動かして、何か話しかけてくれるようになるでしょうか。
同じ種類でも、一匹一匹違います。
新しく迎えた二匹にも、それぞれの性格や行動があるのでしょう。
これから少しずつ、その違いを知っていくのも楽しみです。
以前一緒に過ごした三匹のことは、今でもよく覚えています。
特に、最後まで頑張っていたあの子の姿。
何度も動けなくなりながら、それでもまた動き出していたこと。
そして、仲間がそばにいてくれたこと。
小さな水槽の中で過ごした日々は、私にとって忘れられない思い出です。
新しくやって来た二匹のヒドジョウさん。
これから、よろしくね。
また水槽の前で、いろいろお話ししようね。