なぜ征服された土地の神は、消されなかったのか
2014.08.03
もし新しい勢力がある土地を支配したなら、その土地の古い神を全部壊してしまえばよさそうです。
ところが日本の神話や神社を見ると、そうなっていません。
古い神が残っています。
大国主も残る。
饒速日も残る。
各地の土地神も残る。
しかも立派な神として祀られる。
これはかなり面白いと思います。
理由は単純かもしれません。
消せなかった。
土地の人々が長く祀ってきた神を否定すれば、そこに暮らす人すべてを敵に回します。祭りを壊せば、地域の秩序まで壊れる可能性があります。
ならば、その神を残す。
ただし、新しい秩序の中に位置付け直す。
別の神の子にする。
国を譲った神にする。
中央の神を助けた神にする。
こうすれば土地の人々は自分たちの神を失わずに済みます。そして新しい支配者も、その神を自分たちの世界へ取り込めます。
もしこれが実際に行われたのなら、神話には二つの歴史が重なっています。
古くから土地にいた人々の記憶。
その記憶を新しい政治秩序へ取り込んだ人々の物語。
だから神話は、どちらか一方だけを読んでも分からない。
今でも名前が残っている「負けた側の神」ほど、むしろ大切な何かを持っていた可能性があります。
消しても困らない存在なら、とっくに忘れられていたはずだからです。
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