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ABS樹脂とは?特徴・用途・筐体試作での加工ポイント

2025.11.25 チップス
ABS樹脂とは?特徴・用途・筐体試作での加工ポイント

製品の「筐体(ケース)」を試作するとき、材料選定で悩むポイントはだいたい同じです。強度は欲しいがコストは抑えたい。外観もそれなりに整えたい。塗装や接着、ネジ止めで割れるのは避けたい。
この“ちょうどいい落としどころ”として、ABS樹脂は今も定番の選択肢です。

ただし、ABSを選んだだけで安心できるわけではありません。筐体は「熱」「応力(ネジ締結や爪)」「薬品(洗浄や塗装溶剤)」の影響を受けやすく、材料特性を知らないまま形にすると、試作段階で評価がブレたり、量産段階で思わぬ手戻りにつながります。
ここではABSの基礎を押さえたうえで、筐体試作で失敗しやすい落とし穴まで、実務目線で整理します。

ABS樹脂とは

ABS樹脂は、3つの要素を組み合わせて「強さ」「粘り」「成形・加工のしやすさ」を狙った代表的な熱可塑性樹脂です。単体の樹脂というより、“特性をブレンドしてバランスを取った材料”と捉えると理解が早くなります。
射出成形で幅広く使われ、量産材としての実績が多いことも、筐体用途で選ばれる理由の一つです。

A・B・Sそれぞれの役割

ABSは名前の通り、主に次の3成分の組み合わせで性格が決まります。

  • A(アクリロニトリル):硬さ、耐熱寄りの安定感、表面の締まり
  • B(ブタジエン):耐衝撃性(落下やぶつけに対する粘り)
  • S(スチレン):成形性、外観、コスト面の扱いやすさ

同じ「ABS」でもグレードで配合が違い、剛性重視・耐衝撃重視・外観重視など、狙いに合わせて選べます。
筐体試作では、量産で想定するグレードに近い材料で評価するほど、後工程の手戻りが減ります。逆に「とりあえず手元にあるABSで形状確認だけ」と進める場合は、外観・強度・接着性などの評価結果を“量産の結論”にしない、という線引きが重要です。

「筐体でよく使われる」理由

筐体に求められるのは、極端な最高性能よりも“総合点”です。ABSはその総合点が高く、特に次の場面で強みが出ます。

  • ほどよい剛性と耐衝撃性で、落下・ねじ締結のトラブルを減らしやすい
  • 表面を作り込みやすく、塗装やシボ(凹凸)意匠の相性が良い
  • 切削加工でも扱いやすく、試作のリードタイム短縮に向く
  • PCなど高機能材よりコストを抑えやすい

製品開発の現場では「強度・外観・コスト・納期」を同時に見られます。ABSはその4点のバランスが取りやすいため、筐体の初期検討材としても、量産材としても候補に上がりやすい材料です。

ABS樹脂の特徴

ここでは筐体視点で「使える特徴」と「気をつけたいポイント」をセットで押さえます。

強度とコストのバランスが取りやすい

ABSは、PCほどの耐熱・耐衝撃までは不要だが、PPでは剛性が足りない――という領域で選ばれやすい材料です。筐体の肉厚を過度に増やさずに剛性を出しやすく、設計自由度とコストのバランスが取りやすいのが魅力です。
また、剛性が必要な面(フレーム周り、ネジ部の支持など)をリブで補い、外観面の肉厚を整える、といった設計の工夫とも相性が良いです。

外観を作りやすい

筐体は「見た目」で評価が決まる場面が多くあります。ABSは表面の仕上がりが比較的きれいに出やすく、研磨、塗装、シボ付けなどの外観づくりと相性が良い素材です。
たとえば試作段階で、つや有り・つや消しの印象差、指紋の目立ちやすさ、傷の入り方などを確認し、量産の外観基準を固める、といった使い方ができます。

加工・二次加工の選択肢が多い

試作では、切削で形にして評価し、必要が出たら簡易金型(試作金型)で成形品評価へ進む、という流れがよくあります。ABSはこの移行がしやすく、さらに二次加工(塗装、印刷、接着、溶着など)を組み合わせた検証もしやすいのが利点です。
「形ができた」だけで終わらず、組立・ネジ締結・塗装外観まで含めて試作評価を進められる材料、と考えると、量産につながる試作が組みやすくなります。

観点ABSの特徴筐体でのメリット注意点
剛性ほどよく硬いたわみを抑えやすい薄肉だと反りやすい設計もある
耐衝撃粘りがある落下で割れにくくしやすい形状次第で欠け・白化は起こる
外観表面が整えやすい塗装・意匠の検証が進めやすい傷・擦れの条件は要確認
加工性切削・追加工がしやすい試作の立上げが早い条件が悪いとバリ/欠けが出る
コスト高機能材より抑えやすいコストと品質の折衷案になる量産ではグレード選定が重要
二次加工選択肢が多い塗装/接着/溶着の検証が可能溶剤割れ・密着不良に注意

ABS樹脂の主な用途

ABSは「外観+強度」が必要な部品でよく使われます。筐体以外でも、機構部品の一部に採用されることがあります。

  • 家電・OA機器:外装カバー、操作パネル、内部フレーム
  • 産業機器:制御ボックス、表示周りのカバー、保護ケース
  • 自動車関連:主に内装部品(意匠性が必要で、屋外直射が少ない部位)
  • 日用品・玩具:外観を作り込みたい樹脂部品

一方で、屋外で長期間使う筐体や、薬品・油が頻繁に付着する環境、発熱が大きい機器では、ABS以外の材料が“正解”になることもあります。だからこそ、ABSの弱点を先に理解しておくことが重要です。

先に知っておきたいABSの弱点

ABSは万能ではありません。筐体試作で「思ったより脆い」「仕上げで割れた」といったトラブルは、弱点を知らないまま進めたときに起こりがちです。

耐熱は“高い方ではない”

発熱部品の近く、直射日光で温度が上がる環境などでは、ABS単体だと変形や歪みが問題になることがあります。耐熱を優先するなら、PC/ABSなど上位材を含めて比較するのが安全です。
特に、ネジで締結した状態で温度が上がると、応力が残ったまま変形し、勘合がきつくなる/隙間が出る、といった現象が起きることがあります。

耐候性は屋外で差が出る

紫外線や雨風にさらされる用途では、変色や表面劣化が起きやすくなります。屋外筐体を想定する場合は、ASAなど耐候系材料や塗装での保護も含めて考える必要があります。
「屋内評価では問題なし」でも、屋外曝露で一気に差が出るのが耐候性です。用途があいまいな場合は、使われ方(屋内/屋外、直射の有無、清掃方法)を先に決めるだけで、材料選定がスムーズになります。

溶剤・薬品で“割れやすくなる”ことがある

ABSは一部の溶剤や薬品に弱く、塗装溶剤、洗浄剤、接着剤の種類によっては、表面が白化したり、時間差でクラック(ひび割れ)が入ったりします。特にネジ部や爪など、内部に応力が残りやすい形状は要注意です。
「加工直後は大丈夫だったのに、組立後にヒビが出た」というケースは、材料の弱さというより、応力集中+薬品の組み合わせが原因になっていることが多いです。

主要樹脂との比較(ABSが向く・向かない)

筐体でよく比較されるのは、PC/ABS、PC、PP、ASAあたりです。ここで大事なのは「材料の優劣」ではなく、「どのリスクを先に潰したいか」です。強度か、耐熱か、屋外耐久か、コストか。優先順位が決まると、材料選定は一気にラクになります。

PC/ABS:耐熱・耐衝撃を上げたいときの現実解

ABSより“熱に強く、割れにくく”したいときに候補になります。発熱部品の近く、落下衝撃が厳しい製品、ネジ部の割れが心配な筐体などでは有効です。そのぶん材料費は上がりやすく、塗装や接着はグレードによって相性確認が必要になります。

PC:強度・耐熱を優先するが、加工・外観は要注意

PCは耐衝撃と耐熱に強い一方、傷が目立ちやすかったり、応力が残ると割れ(クラック)につながる場合があります。透明筐体や高耐熱が必須なら候補ですが、外観基準や成形条件の管理難易度は上がる傾向です。

PP:軽くて安いが、筐体の“カチッと感”は出しにくい

PPは軽量・低コストで、薬品にも比較的強い一方、剛性が低めで「たわみ」や「ペコペコ感」が出やすい材料です。ヒンジなどの可動部には強いですが、精度の要る勘合や、外観重視の筐体では設計の工夫が増えます。

ASA:屋外耐久(耐候性)を優先したいとき

屋外で色あせや表面劣化を抑えたい場合に有力です。ABSに近い加工感を持ちながら、紫外線に対して強いのが特徴です。屋外筐体で「塗装に頼らず素地で勝負したい」場合にも選択肢になります。

材料強度/剛性耐衝撃耐熱耐候外観づくりコスト感こんな筐体に向く
ABS屋内中心、コストと品質の両立
PC/ABS○〜◎発熱や落下が気になる筐体
PC○〜◎高耐熱・高強度が必須の筐体
PP軽量・低コスト優先の筐体
ASA○〜◎屋外・耐候重視の筐体

筐体試作の加工方法:切削加工と試作金型成形の使い分け

同じABSでも、作り方で“見える課題”が変わります。早い段階は切削加工で形状と組付けを固め、量産に近い評価が必要になったら試作金型(射出成形)へ、という流れが一般的です。

切削加工が向く場面

  • 1〜数台で早く形にして、寸法・組付け・干渉を確認したい
  • リブやボスの位置を頻繁に変えるなど、設計変更が多い
  • 量産前に「ネジ締結の感触」「勘合の固さ」などを先に見たい

切削はスピードが強みですが、成形品特有のヒケ・反り・流れ模様などは再現できません。「評価目的がどこか」を先に決めておくことが重要です。

試作金型(射出成形)が向く場面

  • 外観面のヒケ、反り、パーティング、ゲート痕も含めて評価したい
  • 塗装、印刷、溶着など、量産工程の前提で検証したい
  • 数十〜数百個で評価・社内配布・実機テストを回したい

量産につなげるなら、試作金型で「材料グレード」「肉厚」「ゲート位置」「冷却」を現実に寄せるほど、後戻りが減ります。

方式リードタイム初期費用形状変更外観の再現性量産課題の再現向く評価
切削加工早い小さい得意○(意匠は工夫次第)組付け、干渉、ネジ/勘合の基本確認
試作金型成形中〜長い大きい苦手反り/ヒケ、外観、工程込みの量産評価

設計で差が出る加工ポイント(肉厚・リブ・コーナー)

ABS筐体は、形状の作り方でトラブルの出方が変わります。強度不足の原因が「材料」ではなく「形状」だった、というケースは珍しくありません。

肉厚は“均一”が基本、段差はゆるやかに

急な肉厚変化は、反りやヒケの原因になります。外観面はできるだけ肉厚をそろえ、補強は裏側のリブで行うほうが、見た目と精度の両方を安定させやすいです。

リブで剛性を稼ぎ、外観面を守る

大きな平面はたわみやすく、押したときの“頼りなさ”につながります。裏側にリブを入れると剛性が上がりますが、リブが厚すぎると外観面にヒケが出やすくなります。リブは「効かせる場所」と「太らせ過ぎない」をセットで考えるのがコツです。

コーナーは角を立てない(応力集中を避ける)

ネジ部の割れ、爪の白化、落下時の欠けは、角部で起こりやすい現象です。内外コーナーに適切なRを設けるだけで、割れや欠けのリスクは下げられます。特にボス根元、リブの立ち上がり、開口部の角は優先的に見直したいポイントです。

勘合・スナップフィットの注意点(白化・折れ・ばらつき)

筐体の「カチッと閉まる感じ」は、勘合(はめ合い)と爪形状で決まります。ABSは爪も作れますが、設計を詰めずに作ると白化や折れが出やすいので注意が必要です。

  • 入口には面取りやRを付け、組付け時の引っかかりを減らす
  • 爪の根元は角を立てず、厚みの急変も避けて応力集中を逃がす
  • “一発で組んで終わり”なのか、“評価で何度も開け閉めする”のかで形状を変える
  • 切削試作はエッジが立ちやすく、成形品より硬く感じることがあるため、感触評価は前提条件をそろえる

爪は図面上の寸法が合っていても、組付け速度、温度、個体差で破損することがあります。量産に近づけたい場合は、試作段階で組立の手順や回数まで含めて評価すると、判断が安定します。

ネジ部(ボス)で失敗しないための考え方

筐体試作で一番相談が多いのがネジ部です。割れる、ねじ山がバカになる、締結力が安定しない。これらは「締め方」だけでなく、ボス周りの形状と応力設計でほぼ決まります。

タッピングねじは“便利”だが、応力が残りやすい

樹脂に直接ねじ山を立てるタッピングねじは部品点数を減らせますが、締結時に材料へ強い応力が残ります。ABSはこの応力がある状態で溶剤や薬品に触れると、時間差クラックにつながることがあります。洗浄・塗装・接着の工程が後に控える筐体ほど注意が必要です。

繰り返し分解するなら、インサートも検討

評価で何度も開閉する筐体は、ねじ山の摩耗や保持力低下が起きやすくなります。熱圧入・超音波圧入のインサートナットを使うと、締結品質は安定しやすくなります。試作段階でも、量産でインサートを使う予定なら、早めに同じ構成で検証しておくと判断がブレません。

ボスの“根元”を支える設計が割れを減らす

ボス単体を細く高く作ると、締結時に根元へ曲げ応力が集中し、クラックが入りやすくなります。周囲の肉厚、リブの入れ方、座面の作り方で、締結力を逃がす設計が必要です。ネジ締結は「ボスだけの問題」に見えて、実は筐体全体の剛性設計とつながっています。

接着・溶着のポイント(白化・溶剤割れを避ける)

筐体は「割れてはいけない場所」がはっきりしています。特にネジ部、爪、薄肉の角部は、目に見えない応力が残りやすく、そこに溶剤が触れると“時間差で割れる”ことがあります。接着を検討するときは、強度だけでなく「応力と薬品の相性」まで含めて判断するのが安全です。

接着前にやるべき下地処理

  • まず脱脂:手の脂・離型剤・切削油が残っていると、密着不良の原因になります
  • 次に表面を整える:軽い研磨で“食いつき”を作ると、安定しやすくなります
  • 応力が強い部位は避ける:ネジボス根元や爪の根元は、接着より設計変更・締結方式見直しが先です
方法向く場面メリット注意点
溶剤系(溶かして接合)小面積の固定、外観を優先しない内側初期固定が早い応力割れ・白化のリスク。事前テスト必須
二液タイプ(反応硬化)強度が必要、多少の隙間がある強度と安定性を取りやすい混合ムラ、はみ出し、硬化時間の管理が必要
瞬間タイプ仮固定、小物手早い白化・脆さが出ることがある。筐体の主固定は慎重に
両面テープ/フォーム材すき間吸収、振動対策、防水補助外観と作業性が良い温度・経年で性能差。貼り付け面の清掃が重要

溶着(超音波など)を使うときの考え方

量産で溶着を使うなら、試作でも早めに“成立する形”を作っておくのが近道です。溶着は設備条件だけでなく、合わせ面の形状(リブ、エネルギーディレクタなど)でほぼ決まります。後から無理やり合わせると、外観面に歪みが出たり、シール性が安定しない原因になります。

塗装・表面処理のポイント(密着不良とブリスター対策)

筐体の見栄えは塗装で一気に上がりますが、ABSは「下地が悪いと全部ダメ」になりやすい素材でもあります。試作段階ほど、塗装条件が固定されていないため、失敗の原因を切り分けられるように進めましょう。

よくある不具合と原因の当たり

  • 塗装がはがれる:脱脂不足、離型剤残り、下地処理不足、塗料選定ミスマッチ
  • ブリスター(ぷつぷつ):水分・溶剤の閉じ込め、乾燥不足、厚塗り
  • ひび・白化:応力が残る部位に溶剤が触れた、締結後に塗装した
  • 色ムラ:下地の吸い込み差、膜厚ばらつき、乾燥条件の差

試作で押さえる塗装の進め方

  • 「素地の状態」をそろえる:切削品と成形品では表面が違い、同じ塗装でも結果が変わります
  • マスキング境界を先に設計する:塗装範囲が曖昧だと、組立で剥がれや段差が出ます
  • ネジ締結の前後を決める:締結後に塗装すると、割れやクラックの原因になりやすい場合があります
  • 量産に近づけるなら、プライマー有無を含めて条件を固定する:試作でも“判断できる再現性”が大切です

切削加工での「欠け・バリ・溶け」対策

ABSは切削しやすい一方、条件が悪いとエッジ欠けやバリ、熱による溶け(表面が荒れる)が出ます。筐体の合わせ面や開口部は、見た目と気密に直結するため、加工段階から狙いを決めておくと手戻りが減ります。

  • 刃物はよく切れる状態に:摩耗工具はバリと発熱の原因になります
  • 熱を溜めない:切りくず排出と送り条件がポイントです
  • エッジは“立てない”前提で設計:面取り・Rを図面で指示すると、欠けと白化が減ります
  • ネジ下穴は精度が命:下穴が小さすぎると割れやすく、大きすぎると保持力が落ちます

量産材へつなげる試作の進め方(評価のブレを減らす)

「試作は試作」と割り切ると早い反面、量産で同じ問題をもう一度踏みます。量産につなげる試作は、次の3点をそろえるのがコツです。

1) 使われ方(環境)を先に決める

屋内か屋外か、温度上昇はあるか、清掃に溶剤を使うか。これだけで、ABSのまま行けるのか、PC/ABSやASAを候補に入れるべきかが見えてきます。

2) 評価項目を「壊し方」から決める

筐体は、落下、ねじ締結、開閉、熱サイクル、薬品付着で壊れます。想定する壊れ方に合わせて、試作で見るべき項目を先に固定します。

  • 落下・衝撃:角欠け、爪折れ、ボス割れ
  • 締結:ねじ保持力、割れ、座面沈み
  • 外観:傷、指紋、塗装密着、色差
  • 環境:温度変化、紫外線、清掃薬品

3) 材料グレードと二次加工条件を“記録”する

同じABSでもグレード違いで結果は変わります。試作時の材料、塗装条件、接着剤、締結トルクを記録しておくと、次の試作で原因切り分けが一気にラクになります。

試作依頼前のチェックリスト(短納期でも手戻りを減らす)

試作の手戻りは「加工が悪い」より「前提が曖昧」が原因になりがちです。依頼前に以下を整理しておくと、納期とコストのブレが小さくなります。

項目決めておきたい内容手戻りを減らす理由
目的形状確認/強度評価/外観評価/量産前提作り方(切削か成形か)が決まる
材料ABSの想定グレード、色(自然色か)評価結果を量産に近づける
重要部位ネジ部、爪、合わせ面、表示窓など加工精度・仕上げの優先順位が決まる
外観基準キズ許容、シボ有無、塗装範囲“合否”が曖昧だとやり直しになる
組立条件ねじ種類、締結トルク目安、開閉回数ボス割れ・白化のリスクを早期に潰せる
二次加工塗装/接着/印刷/溶着の有無量産工程とのギャップを減らす
数量・納期何個をいつまでに工法選択と段取りが最適化できる

まとめ

ABS樹脂は、筐体に求められる 「強度(ねじ締結・落下)」「外観(塗装・シボ)」「加工性(試作の早さ)」「コスト」 のバランスが取りやすく、“まずはABSで検討する”が成立しやすい定番材です。切削でも射出成形でも進めやすく、試作から量産へ繋げる計画が立てやすいのもメリットです。

一方で、筐体でトラブルになりやすいのは材料そのものよりも、
①熱(発熱部近傍/締結状態での温度上昇)②応力(ボス・爪・角部の応力集中)③薬品・溶剤(洗浄剤/塗装溶剤/接着剤) が重なったときです。特にネジ部やスナップ部は、「応力+薬品」で時間差クラックが出やすいので、設計段階で R付け・肉厚差の抑制・座面の当て方を先に整え、試作では “実際の使い方(締結した状態・清拭後・温度をかけた状態)”で評価すると手戻りが減ります。

筐体試作を最短で前進させるコツは、目的に合わせて作り方を分けることです。

  • 切削加工:形状確認、干渉・組付け、ねじ/勘合の感触を早く見る(設計変更が多い初期に強い)
  • 試作金型(射出成形):ヒケ・反り・ゲート痕・外観転写まで含めて量産に近い評価を回す(量産課題の先出しに強い)

「ABSで行けるのか、PC/ABSに上げるべきか、屋外ならASAに寄せるべきか」など、材料選定も含めて迷っている場合は、用途条件と評価項目を整理するだけで結論が早くなるケースが多いです。

株式会社アリスでは、筐体試作について 材料選定(ABS/PC-ABS/ASA等)→切削試作→試作金型成形→塗装/接着/溶着を含む評価用試作まで、目的に合わせた進め方の組み立てをご相談いただけます。
「図面はあるが作り方に迷う」「まずは短納期で現物を見て判断したい」といった段階でも対応可能です。

ご相談・お見積りの際は、まず下記だけ共有いただけると提案が具体化します。

  • 使用環境:屋内/屋外、温度上昇(発熱部の有無)、清拭薬品・洗浄の有無
  • 組立条件:ねじ種類、締結トルク目安、爪の開閉回数、接着/溶着の有無
  • 外観要求:シボ有無、塗装範囲、キズ許容(目視距離など)
  • 評価したいこと:落下、熱サイクル、時間差クラック、外観歩留まり など
  • 数量・希望納期:何台で、いつまでに必要か(切削か成形かの判断材料になります)

「ABSで進めてよいか」を短時間で判断したい場合も、目的に合わせて試作計画から一緒に整理できますので、お気軽にご相談ください。

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