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ナイロン(PA6/PA66)とは?特徴・用途・吸水寸法変化と対策

2025.12.04 チップス
ナイロン(PA6-PA66)とは?特徴・用途・吸水による寸法変化と対策

機械部品の樹脂化で「金属ほどではないが、強度は欲しい」。そのとき候補に上がりやすいのがナイロン(ポリアミド、PA)です。ギヤやブッシュなど“動く部品”に強く、軽量化や騒音低減にも効きます。

一方で、ナイロンは水分を取り込みやすく、環境(温度・湿度)によって寸法や硬さが変わることがあります。設計は「公差に収まるか」、品質は「環境条件と不具合の因果を説明できるか」、試作担当は「加工後や保管後に変わらないか」が悩みどころです。本記事では、まず材料の基本を押さえ、後半で“吸水を前提にした設計・管理”へつなげます。

ナイロン(PA6/PA66)とは

ナイロンは、分子の中にアミド結合を持つ「ポリアミド系樹脂」の総称です。樹脂の中では強度・靭性(粘り強さ)・耐摩耗性のバランスが良く、機械要素に使われやすい代表的なエンジニアリングプラスチックです。

代表格がPA6とPA66で、どちらも「ナイロン」と呼ばれますが、得意分野が少し違います。さらに現場では、無充填(何も混ぜない)だけでなく、ガラス繊維強化(GF)、摺動グレード、難燃グレードなど、用途に合わせた“配合違い”を選びます。材料名が同じでも性格が変わるので、「PA6=こう」「PA66=こう」と決め打ちせず、用途→グレード→評価条件の順で詰めるのが安全です。

「強い樹脂」と言われる理由

金属ほどの剛性はありませんが、汎用樹脂(ABSやPPなど)と比べると、引張強さや耐摩耗性が高く、衝撃にも比較的強い傾向があります。自己潤滑性(滑りやすさ)があり、潤滑油が使いにくい場所でも役立つことがあります。さらに、摺動用途向けに摩耗を抑える添加剤を入れたグレードも多く、用途設計の自由度が高い点も魅力です。

PA6とPA66の違い(使い分けのコツ)

ざっくり言えば、PA66は耐熱・剛性寄り、PA6は靭性・加工性寄りになりやすい、という理解がスタート地点です。もちろん配合(GF、難燃、摺動グレードなど)で性格は変わるので、最終的にはデータシートで確認します。

観点PA6PA66
位置づけバランス型。靭性が出やすい剛性・耐熱寄りになりやすい
温度が上がる環境標準的比較的有利なケースが多い
低温の粘り良好になりやすいグレード次第
吸水の影響受けやすい(設計・管理が重要)受けやすい(設計・管理が重要)
加工・成形の扱い比較的扱いやすい傾向条件出しが重要な場合あり

よくあるグレード選択の方向性

  • 無充填(標準):バランス重視。摺動部や治具などに広い
  • GF強化:剛性・強度は上げやすいが、反りや寸法ばらつきの“方向性”が出やすい
  • 摺動グレード:摩耗粉やかじりを抑えたいときの選択肢
  • 難燃:電装周りで必要条件になることがある(物性は配合で変わる)

特にGF強化は「寸法が安定しそう」と期待されがちですが、吸水の影響を弱める方向に働く一方で、成形流動方向による収縮差が出やすくなります。寸法の課題が“吸水由来”なのか“成形収縮由来”なのかを切り分けることが重要です。

ナイロンの代表的な特徴

強度と靭性の両立

ナイロンの魅力は「硬いだけ」「粘いだけ」ではなく、用途によって両方を狙える点です。例えば、薄肉でも割れにくい形状にできたり、金属部品の一部を置き換えて軽量化できたりします。設計側は、応力集中が出る角部(Rなし)やねじ締結部の割れに注意しつつ、肉厚・リブ・R付けで強度を引き出します。

耐摩耗・摺動(すべり)の良さ

ギヤ、ローラー、スライダー、ブッシュなどで採用される大きな理由です。金属同士のように焼付きやすい組み合わせを避けられることがあり、異音低減にもつながります。反面、荷重が高い・温度が高い・無潤滑で長時間連続といった条件では、摩耗粉の発生や寸法変化も含めた評価が必須です。「相手材(鋼、アルミ、樹脂)」「表面粗さ」「荷重」「速度」「温度」をセットで見ると、判断がぶれにくくなります。

耐油・耐薬品は“相手次第”

一般に油脂類には比較的強い一方、酸・アルカリや一部溶剤、温水・蒸気などでは劣化が進む場合があります。品質側は、実際の使用液(洗浄剤、冷却水、切削液、グリースなど)と温度をセットで管理し、短時間の浸漬だけで判断しないことがポイントです。

成形品と切削品で注意点が変わる

量産の射出成形では、成形収縮(冷えて縮む)と吸水膨張(湿気で膨らむ)の両方を見込みます。試作でよくある切削加工品(丸棒・板材から削る)は、素材の保管状態や内部応力の影響で、加工後に反りや寸法の戻りが出ることがあります。「加工直後は良いのに、数日後に狂う」現象は、吸水と応力解放が重なって起きる典型例です。試作担当は、加工前の保管(乾燥袋の有無、置き場の湿度)と、加工後の置き方(片面だけが空気に触れる等)まで含めて条件を揃えると再現性が上がります。

代表的な用途

機械要素部品での採用例

  • ギヤ、ラック、カム、プーリー
  • ブッシュ、ワッシャ、スペーサー、ローラー
  • ガイド、スライド部品、搬送治具の当たり部

金属より軽く、加工コストや騒音面でメリットが出る一方、寸法の“安定”が必要な嵌合部は、後述する吸水の考え方が欠かせません。

使いにくい(避ける判断が出やすい)例

  • 高精度の位置決めが必要で、温湿度が大きく変わる
  • 温水・高湿や屋外での長期使用で、寸法変化が許されない
  • ねじ締結で高い面圧が長くかかり、クリープ(時間でへたる)が致命的

このあたりは「ナイロンをやめる」のではなく、「設計で逃がす」「グレードを変える」「評価条件を揃える」で解決できることも多いので、次で整理します。

吸水による寸法変化の前提

ナイロンの不安は、単に「水に濡れるかどうか」ではありません。空気中の湿気でも、時間をかけて水分を取り込みます(逆に、乾いた環境では水分が抜けます)。この“出入り”があるため、部品の状態は「作った直後」ではなく「置かれた環境」で決まります。

吸水すると、部品はわずかに膨らみ、同時に硬さや剛性が下がって粘りが増える方向に寄ります。つまり吸水は、寸法と物性の両方を動かす“環境要因”です。さらに重要なのが時間軸で、薄い部品ほど変化が早く、厚い部品ほどゆっくり進みます。品質不具合が「納入後しばらくしてから出る」のは、この時間差が一因になることがあります。

吸水で起きやすい現象(設計・品質・試作の共通論点)

  • 嵌合がきつくなる/緩くなる(相手材との組み合わせで逆も起きる)
  • 反り・ねじれが出て、平面度や直角度が崩れる
  • かたさが変わり、摩耗量やギヤのバックラッシが変化する
  • 測定条件(乾燥直後か、保管後か)で合否が入れ替わる

吸水による寸法変化の仕組み

ナイロンは分子構造の性質上、水分子と結びつきやすい材料です。そのため、空気中の湿気でも少しずつ水分を取り込み、内部に行き渡ると体積が増えて「膨張」します。逆に乾いた環境では水分が抜け、わずかに「収縮」します。ここで厄介なのは、寸法が動く方向がいつも同じとは限らない点です。部品形状、肉厚の偏り、加工・成形の応力、ガラス繊維の配向(GF材)などが重なると、膨張よりも先に反りが出て、結果として特定の測定値が小さく見えることもあります。

もう一つのポイントは、吸水が「表面から中心へ」時間をかけて進むことです。部品の外周が先に吸水して膨らみ、中心はまだ乾いたまま、という状態がしばらく続きます。この“水分のムラ”が、反りやねじれ、平面度の崩れを起こす原因になります。薄肉部品ほど早く落ち着き、厚肉部品ほど落ち着くまで時間がかかります。

「乾燥」「保管」「使用環境」で状態が変わる

設計・品質・試作で共通して押さえたいのは、部品の状態を一言で言えないことです。例えば「乾燥直後の寸法」は出荷時には良く見えても、客先の環境で吸水して寸法が変わる可能性があります。逆に、湿度が高い現場で作った試作品を乾いた検査室で測ると、評価中に状態が動いてしまうこともあります。

状態を整理すると、考え方は次の3つに分けるとスムーズです。

  • 乾燥状態:水分が少なく、硬めで寸法は小さめに出やすい
  • 平衡状態:保管環境の温湿度に対して水分の出入りが落ち着いた状態
  • 高吸水状態:高湿・水分接触の環境で水分が多く、寸法は大きめに出やすい

「どの状態で合格させたいか」を先に決めると、設計公差や検査条件が決まりやすくなります。特に嵌合部は、乾燥状態でギリギリに合わせると、吸水後に“入らない”に直行しがちです。

吸水で変わるのは寸法だけではない

吸水は、寸法の話として扱われがちですが、実際には物性も一緒に動きます。水分が入ると、材料は少し“しなやか”になるイメージです。良い面も悪い面もあり、品質不具合の説明ではここが効きます。

項目乾燥側(ドライ寄り)吸水側(ウェット寄り)
寸法小さめに出やすい大きめに出やすい
剛性・たわみ剛性が高め、たわみにくい剛性が下がり、たわみやすい
衝撃への粘り低温や薄肉で割れが気になることも粘りが出て割れにくくなる方向
摺動・摩耗条件次第でかじりやすいことがある当たり方が変わり摩耗が増えることも
ねじ締結の安定締結力が読みやすいへたりや緩みの評価が必要

「吸水=悪」ではなく、衝撃に対してはプラスに働く面もあります。ただし寸法はプラス方向(膨張)に動くため、設計・検査は吸水を前提に組み立てる必要があります。

変化量を左右する4つの要因

吸水による変化は、材料名(PA6/PA66)だけで決まりません。実務では次の4つが効きます。

  • 環境:温度と湿度(または水・温水への接触)
  • 時間:到達までの時間は肉厚に大きく依存(薄いほど早い)
  • 形状:肉厚差、片持ち形状、リブ構造などは反りを誘発しやすい
  • グレード:無充填かGF強化か、摺動材か、難燃かで挙動が変わる

同じ湿度でも、温度が上がると水分の出入りが進みやすく、状態が動きやすくなります。また「空気中の湿気」と「水への接触」は別物です。水に触れる環境(結露、洗浄、温水、冷却水など)は吸水が進みやすく、短時間でも影響が出る場合があります。使用環境の想定が曖昧なまま材料選定をすると、ここで失敗します。

試作担当が「加工直後はOK、数日後にNG」を経験しやすいのは、時間と形状が効いているケースが多いです。特に切削品は、素材の保管状態(乾燥袋の有無)と、加工で生まれる内部応力が寸法戻りに影響します。厚みのあるプレートや、片側だけ大きく削り込む形状は、加工後に反る方向が出やすいので要注意です。

寸法変化が「トラブル」になりやすい寸法

吸水で全体が膨張すると、クリアランスが“設計より小さくなる側”の部品が真っ先に苦しくなります。典型例は次のとおりです。

  • ナイロン側が「軸・ボス」:外径が増えて挿入がきつくなる(入らない、焼付き)
  • ナイロン側が「ハウジング・穴」:内径が増えてガタが出る(芯ズレ、異音)
  • 長尺ガイドやピッチ部:わずかな伸びが累積して位置がずれる(端部で合わない)
  • 平面当たりの部品:水分のムラで反りが出て、局所干渉や浮きが起きる

同じ“寸法変化”でも、どの寸法が機能を支配しているかで症状が逆になります。まず機能寸法を1つに絞って、そこだけを環境とセットで追いかけると、原因究明が速くなります。

不具合を「環境条件×症状」で整理する

吸水の影響は、現象としては寸法ズレだけではありません。硬さ・剛性が下がり、摩耗やたわみが増える方向に寄るため、「組めない」「早く減る」「異音が出る」など、症状が分散します。品質側は、環境条件を軸にすると説明しやすくなります。

環境条件の例起きやすい症状現場での見分けポイント
高湿(梅雨、屋外、結露の近く)嵌合がきつい、ガタが減る、反りで干渉同一ロットでも置き場で差が出る
低湿(冬の空調、乾燥室)クリアランス増、割れやすい、異音測定中に値が動くことがある
温度変動が大きい反り・ねじれが顕在化、当たりが変わる温度と湿度の両方を記録する
水・温水に接触寸法増大、強度低下の方向、摺動悪化使用液の温度と接触時間が鍵

この表の使い方は簡単で、「不具合が出た季節」「置き場」「搬送・梱包」「使用液」を並べるだけで、吸水の関与を切り分けやすくなります。反対に、環境が一定なのに不具合が散発する場合は、成形収縮差や加工応力、組立公差の積み上げも疑うべきです。

評価・検査でブレを減らすコツ

吸水を前提にすると、評価の設計は「測定値」より先に「測定条件」を決める必要があります。おすすめは次の順番です。

  1. どの環境で使われるか(温度・湿度・水分接触の有無)
  2. 出荷時の状態をどうするか(乾燥品として出すのか、平衡状態に合わせるのか)
  3. 測定タイミングを決める(加工直後/一定時間後/調湿後など)
  4. 梱包と保管を決める(袋、乾燥剤、置き場、期限)

ポイントは「検査室の状態が標準」だと思い込まないことです。例えば、一般的な基準状態(例:温度と湿度を一定にした状態)で測るのか、客先の環境に寄せた状態で測るのかで、合否の意味が変わります。嵌合評価や摩耗評価は、できるだけ実使用に近い温湿度で行い、寸法測定は“条件を固定して”比較できるようにするのが現実的です。

品質側は、検査成績書に寸法だけでなく「測定時の温度・湿度」「前処理(乾燥・調湿の有無)」「測定までの保管条件」を残すと、客先トラブル時の説明力が上がります。試作担当は、同じ素材でも保管条件が違うと結果が変わるため、試作ロットの履歴(素材入荷日、保管場所、加工日、測定日)を簡単にメモしておくのが効きます。

設計でできる対策(吸水を前提に「外さない」設計へ)

吸水は材料の性質なので、ゼロにはできません。現場で強いのは「どの状態で機能させるか」を決め、その状態で外さない設計に寄せることです。ポイントは、機能寸法を“吸水で動く側”から守ることにあります。

材料選定は「PA6/PA66」だけで決めない

まずは使用環境を言語化します。常温の室内なのか、梅雨や屋外相当なのか、温水や洗浄があるのか。ここが曖昧だと、どのグレードを選んでも評価がぶれます。

  • 寸法安定を最優先:GF強化や寸法安定系グレードを候補に入れる
  • 摺動が最優先:摺動グレード、相手材・表面粗さもセットで検討
  • 衝撃・割れが不安:無充填寄りで粘りを確保し、形状で強度を取る

「吸水が怖いからPAを避ける」ではなく、何が怖いか(入らない/ガタ/反り/摩耗)を先に分解すると、材料と設計の役割分担ができます。

嵌合・公差は“乾燥直後”で追い込まない

トラブルの多くは、乾燥状態で寸法を追い込みすぎることから始まります。客先で吸水して膨らんだ瞬間に、嵌合が破綻します。

  • 圧入やタイト嵌合は避け、基本はクリアランス設計に寄せる
  • どうしても締めたい場合は、金属側に逃げ(スリット、弾性、面取り)を作る
  • “位置決め”と“固定”を分ける(片側は基準、もう片側は逃がす)
  • 長尺は累積誤差が出る前提で、基準を一点化する

品質面では、合否判定の温湿度と前処理を決めたうえで、公差根拠として残すと説明が通ります。

形状で反りを抑える(肉厚・リブ・削り量)

反りは吸水だけでなく、肉厚差や応力でも増えます。ナイロンを使うなら「肉厚を揃える」「急な段差を作らない」が基本です。

  • 肉厚差を小さくし、リブは“板を支える”方向に使う
  • 片持ち形状・薄肉の長い腕は、吸水ムラでねじれやすい
  • 切削品は片面だけ大きく削らず、段階加工で応力を分散する

GF強化材は寸法変化を抑えやすい一方、流動方向で収縮差が出やすいので、成形品ではゲート位置や流れ方向を踏まえた寸法設定が重要です。

表面で吸水を抑える対策は「補助」として使う

塗装やコーティング、表面を覆う構造で吸水速度を遅らせることはあります。ただし、完全に止めるのは難しく、傷や端面からの影響も受けます。寸法を“表面処理に依存”させるのではなく、あくまで「変化を緩やかにして安定させる補助策」として位置づけると失敗しにくいです。

加工・試作・保管でできる対策(再現性を上げる段取り)

設計を詰めても、試作段階で保管や測定がぶれると「材料が悪い」結論になりがちです。実務では、乾燥と調湿を目的で使い分け、測定条件を固定して比較できる形にするのが近道です。

目的別:乾燥と調湿の使い分け

乾燥は“水分を抜く”、調湿は“状態を揃える”ための手段です。どちらが正しいではなく、目的で選びます。

目的推奨アプローチ注意点
寸法測定の再現性を上げたい調湿して平衡状態で測る調湿時間は肉厚で変わる
組立で「入らない」を避けたい想定環境に寄せた状態で評価客先環境を想定しないと意味が薄い
切削加工で反りを減らしたい加工前後で状態を揃え、放置時間を取る片面放置や局所加熱を避ける

乾燥直後に測った値は“その瞬間”の値であり、出荷・保管・使用で変わる前提を共有しておくと、社内の手戻りが減ります。

加工後に変わる前提で、工程内に「落ち着かせる」を入れる

試作の切削加工では、加工熱と応力解放で寸法が戻ることがあります。実践としては次が効きます。

  • 粗加工→放置→仕上げ加工(落ち着いた状態で仕上げる)
  • 片面だけを長く削らず、表裏バランスよく削る
  • 測定は加工直後だけでなく、一定時間後の値も記録する
  • 梱包は密封し、状態変化(吸水・乾燥)を抑えて搬送する

図面・検査で「条件」を明文化する

寸法そのものより、条件が共有されていないことがトラブルの原因になります。次のような“条件の一文”があるだけで、設計・品質・試作の会話が揃います。

  • 測定時の温度・湿度(基準状態)
  • 前処理(乾燥の有無、調湿の有無)
  • 測定タイミング(加工後◯時間以上、など)
  • 梱包・保管(密封、乾燥剤、期限)

代替材料の比較(寸法安定を優先する場合)

「どうしても寸法が苦しい」場合は、ナイロンに固執しない判断も必要です。代表的な候補を、現場目線で並べると次のイメージです(最終判断は使用環境・荷重・摺動条件で行います)。

材料強み注意点向く場面
POM寸法安定・摺動のバランス特定薬品や高温で制約が出ることがあるかみ合わせ、摺動部、治具
PET剛性・寸法の安定衝撃や欠けの評価が必要精度が要る保持部、フレーム
PC耐衝撃・形状自由度耐薬品・応力割れの確認カバー、治具、衝撃がある部品
PPS高耐熱・耐薬品・安定性コスト、加工性、衝撃の確認高温・薬品環境の機能部品

ここで大切なのは「ナイロンの弱点=すべて他材で解決」ではないことです。寸法は安定しても摩耗が増える、耐熱は上がっても割れやすい、など別の課題に移ることがあります。だからこそ、まずは“機能寸法がどこか”を定義し、その寸法を守るために材料と設計、工程管理を組み合わせます。

まとめ

ナイロン(PA6/PA66)は、強度・靭性・耐摩耗のバランスが良く、ギヤ/ブッシュ/ガイドなど機械要素の樹脂化で効果が出やすい定番材です。一方で最大の注意点は、水分(湿気)を取り込むことで「寸法」と「硬さ・剛性」が時間差で動くこと。つまりナイロン部品は「作った瞬間」ではなく、置かれた温湿度・使用環境で状態が決まる材料です。

吸水トラブルを減らす近道は、材料名(PA6/PA66)だけで判断せず、最初に次を揃えることです。

  • どの状態で成立させるか:乾燥状態/平衡状態/高湿・水接触状態のどれを設計基準にするか
  • 機能寸法を特定する:嵌合・平面度・ピッチなど「ここが外れると困る寸法」を先に決める
  • 条件を固定して評価する:温湿度・前処理(乾燥/調湿)・測定タイミング・保管/梱包を標準化する

設計側は、吸水後に“入らない/ガタが出る”を防ぐために、嵌合を乾燥直後で追い込まないR付け・肉厚差の抑制・逃げ設計で反りを抑える締結は面で受けて局所応力を避けるといった形状側の工夫が効きます。試作・品質側は、加工後に寸法が動く前提で(放置→再測定など)条件を揃えるだけでも、再現性と原因切り分けが一気に進みます。

もし今、

  • 「加工直後はOKなのに、数日後に嵌合がきつい/反る」
  • 「季節や置き場で寸法がブレて、合否が入れ替わる」
  • 「GF材にしたのに、今度は反り方向が読めない」
    といった課題で止まっている場合は、“吸水由来”なのか“成形収縮/加工応力由来”なのかの切り分けから進めるのが最短です。

株式会社アリスでは、ナイロン部品について 材料・グレード選定(PA6/PA66/GF/摺動系)/切削試作/反り・嵌合トラブルの要因整理/評価条件(乾燥・調湿・測定条件)の揃え込みまで、試作段階からご相談いただけます。
ご相談時は、まず下記だけ共有いただけると、提案と見積が早く具体化します。

  • 使用環境(温度・湿度・水/温水接触、洗浄の有無)
  • 困っている症状(入らない/ガタ/反り/摩耗/異音 など)
  • 重要寸法(嵌合部、平面度、ピッチ)と許容範囲
  • 形状情報(図面/3D/現物写真でも可)、数量、希望納期

「ナイロンで成立させたい」「代替材も含めて最短で結論を出したい」どちらでも対応できますので、条件整理からお気軽にお声がけください。

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