技術を教える前に、大切にしたいこと
ものづくりの仕事では、技術や知識を人に伝える機会があります。
加工機の操作方法、工具の使い方、図面の読み方、寸法の測定方法など、覚えることは数多くあります。
経験のある人にとっては当たり前の作業でも、初めて取り組む人には難しく感じることがあります。
そんなとき、教える側が知っていることをすべて説明すれば、相手が理解できるとは限りません。
大切なのは、相手が今どこまで理解しているのかを知ることだと思います。
例えば、マシニングセンタで樹脂部品を加工する場合を考えてみます。
図面を確認し、材料を準備し、工具を選び、加工条件を設定する。
一連の作業には、それぞれ理由があります。
経験豊富な人なら、過去の仕事を参考にしながら判断できる部分もあるでしょう。
しかし、経験の浅い人には、なぜその工具を使うのか、なぜその順番で加工するのかが分からないこともあります。
そこで「前にも説明したでしょう」と言われてしまうと、次に分からないことがあっても質問しにくくなるかもしれません。
もちろん、教わる側にも、自分で考え、確認し、覚えようとする姿勢は必要です。
ただ、教える側も、伝えたことと相手が理解したことは同じではないと考える必要があります。
一度説明した内容でも、実際の作業を経験してから聞くと、初めて意味が分かることがあります。
反対に、説明を聞いたときには理解したつもりでも、実際に作業してみると迷う場合もあります。
だからこそ、説明するだけでなく、実際に取り組んだ結果を確認することが大切です。
どこまでできたのか。
何が分からなかったのか。
次は何を覚える必要があるのか。
そうしたことを一つずつ整理することで、仕事への理解が深まっていきます。
(株)アリスは、樹脂加工、金属加工、ゴム加工など、自社加工と国内協力会社の技術を組み合わせながら、さまざまな製作案件に関わっています。
毎回同じ仕事とは限らないからこそ、手順だけでなく、考え方や判断の理由を理解することが重要になります。
また、教える立場になった人も、相手からの質問によって自分の理解を見直す機会があります。
普段は意識せず行っている作業でも、なぜそうするのかを説明しようとすると、改めて考える必要があるからです。
人に教えることは、知識を一方的に渡すことではありません。
相手の理解を確かめながら、自分自身も仕事を振り返ること。
技術だけでなく、そうした人との向き合い方も、ものづくりを続けていくうえで大切にしたいと考えています。