鹿島の要石は、なぜ地震を押さえているのか
鹿島神宮の奥には、「要石」と呼ばれる石があります。
地上に見えている部分は小さい。しかし地中深くまで続き、大地震を起こす大鯰の頭を押さえていると古くから伝えられてきました。
今の科学から見れば、石が鯰を押さえて地震を止めるわけではありません。
でも、そこで話を終えると一番面白いところを落としてしまいます。
なぜ鹿島には、これほど強い地震の記憶が残ったのでしょう。
日本列島では昔から大地震が繰り返されています。現代なら震源、断層、マグニチュードという言葉で理解しますが、昔の人には地面そのものが突然動く理由など分かりません。
昨日まで動かなかった大地が揺れる。
家が倒れる。
地面が割れる。
火事が起きる。
人が死ぬ。
そんな経験をすれば、「この土地の下には何か恐ろしい力がある」と考えても不思議ではありません。
そして人間は、理解できない力に形を与えます。
大鯰という姿を与え、それを押さえる石を置き、さらにその石を神が守っているという物語を作った。
私は要石を見ると、迷信というより、昔の人が巨大な自然災害を理解しようとした痕跡のように感じます。
しかも要石の信仰は鹿島だけではありません。香取にも要石があります。
鹿島と香取。
以前から「対」として見てきた二つの神宮に、地震を鎮める石まで残っています。鹿島神宮 | 常陸国一之宮
これは偶然でしょうか。
あるいは香取海を中心に同じ水と大地の世界を生きた人々が、共通する災害の記憶を持っていたのでしょうか。
武の神という説明だけでは、鹿島と香取はまだ小さい。
船を守る。
水を鎮める。
地震を鎮める。
土地そのものを守る。
そう考えると、二つの神宮が東国で特別な存在になった理由にも、政治だけではない人々の生活が見えてきます。