家の中まで、自然と一緒に暮らしていた
昔の日本の家を見ると、不思議なくらい外と中の境界がゆるい。
庭が見える。
風が入る。
雨の音が聞こえる。
虫の声も入ってくる。
冬は寒いし、夏は暑い。
今の感覚なら、
「もっと外を遮断すればいいのに」
と思うかもしれません。
でも昔の日本人は、自然を完全に外へ追い出そうとはしなかった。
私は、そこが面白いと思っています。
縁側がある。
障子がある。
襖がある。
庭と部屋の間に、少し曖昧な場所がある。
外でもない。
中でもない。
その間に人が座る。
お茶を飲む。
風を見る。
雨を見る。
子どもが遊ぶ。
近所の人と話す。
つまり、日本の家は、
自然を遮断する箱ではなかった。
自然と付き合うための場所だった。
暑ければ戸を開ける。
寒ければ火を囲む。
雨が降れば雨音を聞く。
雪が積もれば景色が変わる。
季節が変わるたびに、家の使い方まで変わる。
私は、これは不便だったから仕方なくそうしていた、というだけではないと思っています。
日本人は昔から、
自然は外にあるものではなく、自分たちの暮らしの一部
だと感じていた。
だから庭にも意味がある。
木にも意味がある。
石にも意味がある。
水にも意味がある。
神様が自然の中にいると考えたこととも、つながっています。
山や川に神様を感じる。
木や岩にも特別なものを見る。
そういう人たちが、家だけを自然から切り離して考えるとは思いにくい。
むしろ、
自然の中に家を置く。
そんな感覚だったのではないでしょうか。
私は、日本の家の美しさは、建物そのものだけではないと思っています。
庭。
風。
光。
雨。
影。
季節。
それら全部を含めて、一つの家になる。
昔の日本人は、自然を征服するのではなく、
自然と折り合いながら暮らす家を作った。
だから日本の家は、外を閉め出さなかった。
家の中にまで、自然の居場所を残していたのだと思います。