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職人は、なぜ自分の名前を残さなくても仕事をしたのか

2013.01.04

立派な寺。

美しい欄間。

何百年も残る橋。

手にしっくりなじむ道具。

そこまでの仕事をした人なら、名前を残したくなっても不思議ではありません。

でも昔の日本には、名前の残っていない職人がたくさんいます。

私は、ここに日本のものづくりの面白さがあると思っています。

仕事の目的が、

「自分を有名にすること」

ではなかった。

大事なのは、ちゃんと作ること。

長く使えること。

次の人が困らないこと。

そして、自分が受け取った技術を次へ渡すこと。

職人にとって、自分の仕事は一代だけのものではありませんでした。

師匠から教わる。

自分で工夫する。

弟子へ渡す。

その弟子が、また少し良くする。

そうやって技術は続いていく。

だから一つの建物や道具の中には、一人だけではなく、何世代もの知恵が入っている。

私は、昔の職人がそこをよく分かっていたのだと思います。

「これは俺が全部作った」

ではない。

材料を育てた人がいる。

道具を作った人がいる。

先に技術を残した人がいる。

一緒に働いた仲間がいる。

そして、それを使う人がいる。

自分は、その長いつながりの中の一人。

そう考えれば、自分の名前を大きく残すことより、

仕事そのものが残ること

の方が大切になる。

柱を見ても、職人の名前は分からない。

でも何百年後にも建物が立っている。

道具に名前がなくても、誰かの仕事をずっと支えている。

私は、それで十分だったのではないかと思っています。

名前ではなく、仕事を残す。

自分ではなく、技術を残す。

そして次の人が、それをさらに良くしていく。

昔の職人が残したかったものは、

「自分が作った」という記録ではなく、「ちゃんと使えるもの」だった。

そこに、日本のものづくりの静かな誇りがあるように思います。

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