レオナルド・ダ・ヴィンチさま|見ることは、考えること
同じものを見ても、見えているものは同じではありません。
鳥が飛んでいる。
水が流れている。
人が腕を動かしている。
私たちは毎日のように見ています。
レオナルド・ダ・ヴィンチも、同じものを見ていました。
違ったのは、そのあとです。
「なぜ、そうなる?」
そこから彼の観察が始まります。
鳥を見て、飛行を考える
人間は昔から鳥を見ています。
でもダ・ヴィンチは、鳥を見ながら飛ぶ仕組みを考えました。
翼の形だけではありません。
翼はどう動くのか。
空気をどう受けるのか。
身体はどうやって姿勢を保つのか。
そして観察したものを何度もスケッチしています。
鳥をそのまま真似するだけなら、鳥の形を作ればいい。
でも、ダ・ヴィンチが知りたかったのは形ではなく、
「なぜ飛べるのか」
だったのだと思います。
だから鳥の観察が、やがて飛行機械を考えることにつながっていきます。
水を見る
水についても同じです。
水が流れる。
岩にぶつかる。
二つに分かれる。
渦ができる。
また一つになる。
私なら川を見ながら、
「きれいやな」
で終わってしまいそうです。
でもダ・ヴィンチは違います。
流れを描く。
渦を描く。
波を描く。
水がどんな動きをするのかを観察する。
ただ景色を描いているのではありません。
そこにある法則を探しているように見えます。
人間を見る
人体については、さらに徹底しています。
外から見える身体だけでは分からない。
だから中を見る。
骨。
筋肉。
腱。
臓器。
心臓。
人間が動くとき、身体の中では何が起きているのか。
ダ・ヴィンチは解剖し、それを驚くほど細かく描きました。
ここでもやはり、
「形」ではなく「仕組み」
を見ようとしているように思います。
観察と分析は違う
ここで少し考えました。
よく見ることと、観察することは同じでしょうか。
私は違うと思います。
見るだけなら、そこで終わります。
観察すると、
「なぜ?」
が生まれる。
そして、
比べる。
分ける。
描く。
考える。
仮説をつくる。
確かめる。
観察が分析に変わっていきます。
ダ・ヴィンチを科学者として見るなら、私はここが一番面白い。
知識をたくさん持っていたことよりも、
目の前で起きていることから、自分で原理を探そうとしたこと。
それが科学者としてのダ・ヴィンチだったのではないでしょうか。
見えているものだけで判断しない
これは、ものづくりでも同じです。
製品が割れた。
寸法が合わない。
加工面がきれいにならない。
機械が思ったように動かない。
起きている現象だけを見るなら、
「失敗した」
で終わります。
でも、本当に必要なのはその先です。
なぜ割れた?
どこから変形した?
材料なのか。
形状なのか。
加工条件なのか。
機械なのか。
原因を一つずつ見ていく。
すると失敗だったものが、次の仕事に使える知識へ変わります。
ダ・ヴィンチが500年以上前にやっていたことと、現代のものづくり。
扱っているものはまったく違います。
それでも、
見る。疑問を持つ。考える。確かめる。
この順番は、それほど変わっていないのかもしれません。
株式会社アリスでも、目の前で起きている現象だけで判断せず、その理由まで考えることを大切にしています。
答えが分からない仕事ほど、まずよく見る。
ものづくりは、そこから始まります。