量産の機械加工は、試作の仕事と何が違うのか?
機械加工の仕事を長く経験してきた人なら、量産の現場についてはよく知っていると思います。
決められた図面を確認する。
加工の手順を決める。
機械や工具を準備する。
同じ製品を繰り返し加工する。
寸法や品質を確認する。
量産では、同じ製品を安定して作り続けることが大切です。
一度だけきれいに作れば終わりという仕事ではありません。
同じ品質の製品を、決められた数量だけ、必要なタイミングで作る。
そのためには、加工方法を安定させることや、作業を効率よく進めることも重要になります。
長く量産に携わっていると、加工の精度やスピードだけでなく、作業を安定させるための感覚も身についていきます。
では、試作の機械加工はどうでしょうか。
試作では、最初から同じものを大量に作ることはほとんどありません。
一つだけ作ることもあります。
数個だけ作ることもあります。
そして、次に作るものの形状や寸法、材料が変わることもあります。
そのため、量産とは違って、「決められたものを効率よく作る」だけではなく、「どうやって作るかを考える」ことから始まる仕事があります。
例えば、図面を見たときに、そのまま加工できる場合もあります。
一方で、形状によっては、どこを基準にするのか、どの順番で加工するのか、どう固定するのかを考える必要があります。
材料が変われば、これまでと同じ加工条件ではうまくいかないこともあります。
初めて扱う形状なら、加工してみなければ分からないこともあります。
そういう仕事では、加工する前に考える時間が増えます。
実際に加工して、結果を確認することも増えます。
うまくいかなければ、原因を考えて方法を変えることもあります。
量産では、「同じものを安定して作る」ことが大きな目的になります。
試作では、「初めてのものをどうやって形にするか」が仕事になることがあります。
この違いは、機械加工そのものが別の技術になるということではありません。
量産で身につけた加工の経験は、試作でも使います。
図面を見る力。
加工の順番を考える力。
寸法を確認する力。
工具や機械の状態を見る力。
加工後の仕上がりから原因を考える力。
こうしたものは、試作でも重要です。
ただし、試作では、それらを毎回違う仕事の中で使うことになります。
同じ形状を何千個も作るのではなく、今回はこの形、その次は別の形。
材料が変わることもあれば、求められる精度が変わることもあります。
そのたびに、今までの経験を使って考えます。
そして、実際に作った結果から、また次の仕事を考えます。
量産の仕事では、一度決めた加工方法を安定させることに価値があります。
試作の仕事では、まだ決まっていないものを、一緒に形にしていくことに価値があります。
だから、仕事をしているときの感覚も少し違います。
量産では、慣れている仕事ほど迷う場面が少なくなります。
試作では、経験があっても、初めて考える場面が出てきます。
「この方法ならできる」
と判断できることもあれば、
「これはやったことがないから、一度試してみよう」
となることもあります。
その違いが、仕事の面白さにつながる人もいます。
特に、機械加工の経験を積んできて、
「今までやってきた加工を活かしながら、もっと違うものも作りたい」
と考えている人なら、試作の仕事では今までとは違う経験を積める場面があります。
もちろん、試作だからすべてが難しいわけではありません。
普通に加工できる仕事もあります。
量産で培った技術をそのまま使える仕事もあります。
ただ、毎回少しずつ条件が変わる。
そのたびに考える。
やってみる。
結果を見る。
また考える。
そういう仕事が増えていきます。
機械加工を「決められたものを正確に作る技術」としてだけではなく、「目の前のものをどうやって作るかを考える技術」へ広げていきたい。
そんな気持ちがある人にとって、量産で積み重ねてきた経験は、試作の仕事でも新しい形で活かすことができます。