磨きから学んだ、急がない仕事の大切さ。
(株)アリスでは、切削加工後の仕上げ工程として磨きを行うことがあります。
磨きというと、部品の表面をきれいにする作業というイメージがあるかもしれません。
しかし、実際の仕事を見ていると、それだけではありません。
磨きを始める前には、まず部品の状態を確認します。
どの程度の加工目が残っているのか。
どこから磨きを始めるのか。
どの番手から進めるのか。
形状を崩してはいけない部分はどこなのか。
同じ材料であっても、加工条件や形状によって表面の状態は変わります。
だから、毎回同じ方法で進めればいいわけではありません。
私は磨きという仕事を見ていて、上手な人ほど慌てないと感じています。
加工目を早く消そうとして力を入れ過ぎれば、その瞬間はきれいになったように見えることがあります。
しかし、次の工程へ進むと、前の番手の傷が残っていることに気づく。
磨き過ぎによって、形状が少し変わっている。
透明化処理をしたあとに、それまで見えなかった傷が現れる。
そんなこともあります。
目の前だけを早くきれいにしようとすると、その先で別の問題が出てくることがあります。
だから磨きでは、
「今、きれいに見えるか。」
だけではなく、
「この状態で次の工程へ進んで大丈夫か。」
という見方が必要になります。
これは、磨きだけの話ではないように思います。
仕事でも、目の前の問題を早く終わらせることだけを考えると、あとになって誰かが困ることがあります。
少し確認しておけば防げた。
一言伝えておけば次の人が準備できた。
急がずにもう一度見ておけば、やり直さずに済んだ。
そんなことは、ものづくりの現場でもあります。
磨き作業では、番手を変えるたびに水洗いを行うことがあります。
前の工程で出た粗い粉が残っていると、それが新しい傷の原因になるためです。
洗うという作業だけを見れば、ほんの小さなひと手間です。
でも、そのひと手間を省くことで、それまでの磨きが無駄になることがあります。
ものづくりでは、高精度な加工機や新しい技術が注目されることがあります。
もちろん、それらも大切です。
ただ、最終的な品質を支えているのは、こうした目立たない仕事の積み重ねでもあります。
切削加工が終わった。
だから製品が完成した。
というわけではありません。
加工し、仕上げ、磨き、検査し、必要な処理を行う。
それぞれの工程で品質を少しずつつくり込み、その結果として最終的な製品になります。
前の工程が整っていれば、次の仕事は進めやすくなります。
磨きが適切であれば、その後の透明化処理や仕上げも安定します。
逆に、どこかで近道をすると、その影響が後工程に現れることがあります。
品質は、最後の検査だけでつくるものではありません。
一つひとつの工程の中で、少しずつつくられていくものです。
たまたま一度きれいにできることより、同じ工程を繰り返して、同じ品質へ近づけられること。
(株)アリスでは、その再現性を大切にしています。
急いで近道を探すより、今やるべきことを一つずつ確実に積み重ねる。
磨きという仕事には、そんなものづくりの基本がよく表れていると感じていま