ポリウレタン(ウレタン/PU)とは?硬度の選び方・用途・加工方法
ローラーや緩衝材を「ウレタンで作りたい」となった瞬間、現場で止まりやすいのが“硬度”の判断です。柔らかくすれば傷を防げる反面、潰れて寸法が出ない・搬送力が落ちる・へたりが早い。硬くすれば耐摩耗は上がる一方で、滑りやすい・当たりが強い・騒音が増える。しかも同じ「ショアA90」でも、配合・作り方・温度条件・形状で体感や寿命が大きく変わります。この記事では、カタログ数値だけで決めず、用途と条件から逆算して硬度を選ぶための“判断軸”を整理します。
ポリウレタン(PU)の正体:ゴムでも樹脂でもない「調整幅の大きい材料」
ポリウレタン(PU)は、樹脂の一種でありながら、ゴムのような弾性を持たせられる材料です。一般に現場で「ウレタン」と呼ばれるものは、弾性体として使う“ウレタンゴム(ウレタンエラストマー)”を指すことが多く、硬度は柔らかい緩衝材から、硬めのローラー・車輪まで幅広く作れます。
ここで押さえたいのは、同じ“ポリウレタン”でも中身が一種類ではないことです。配合(原料の組み合わせ、硬化条件、添加剤など)や作り方(注型、射出、切削加工用の板材・丸棒など)で、反発、摩耗、引裂き、耐油、耐熱、耐加水分解(湿気による劣化)といった性格が変わります。つまり硬度は重要な指標ですが、硬度だけで性能が決まる材料ではありません。
また「緩衝材」と一口に言っても、発泡(スポンジ状)か、非発泡(ゴムの塊)かで別物です。機械部品の当たり止めやストッパーは非発泡が多く、荷重を受けて形状を保ちたいなら、まず非発泡ウレタンを前提に考えると整理しやすくなります(発泡材は軽くて柔らかい反面、圧縮でのへたり方が異なります)。
強みと弱みを先に把握する:採用後の「想定外」を減らす
ウレタンが選ばれる代表的な理由は次の通りです。
強み(得意なこと)
- 耐摩耗性:ゴム系の中でも摩耗に強い配合を作りやすい
- 弾性の設計幅:反発を高める/衝撃を減衰させる、どちら寄りにも調整しやすい
- 形状自由度:ローラー被覆、ブロック、リング、板材など用途が広い
- 硬度レンジ:緩衝材レベルから硬質レベルまで調整できる
弱み(注意が必要なこと)
- 温度の影響:低温で硬くなり、高温で軟らかくなりやすい(条件で変動)
- 水分・蒸気:種類によっては加水分解で劣化しやすい
- 薬品:油・溶剤・洗浄液などで膨潤や硬度変化が起きる場合がある
- 接着・焼付け:金属芯への接合は可能だが、下地処理と設計で差が出る
「摩耗に強いからOK」と決めてしまうと、後から“へたり”や“剥離”で止まることがあります。ローラーと緩衝材では優先順位が違う点を最初に押さえるのが近道です。
硬度の基礎:ショアAとショアD、どちらを見ればいい?
ウレタンの硬度は、主にショア硬度で表します。目安として、柔らかい領域はショアA、硬い領域はショアDで測定します。ショアAが高いほど硬く、指で押したときの沈み込みが小さくなります。ショアDは、Aでは測りづらい硬さ(硬質樹脂寄り)を評価する尺度です。
ただし注意点があります。
- 測定は「温度」「測定面の厚み」「裏面の硬さ」「測定時間」で変わる
- 同じ硬度でも、反発(跳ね返り)やへたり(圧縮永久ひずみ)は別物
- ローラーでは「摩擦」「弾性」「芯金との接合」も寿命を左右する
硬度は“入口の指標”であり、最終判断は使用条件とセットで行うのが基本です。
| 硬度の目安 | 触った感覚のイメージ | 代表用途の例 | 注意しやすい点 |
|---|---|---|---|
| ショアA30〜50 | 指が深く入る/柔らかい | 緩衝材、当たり止め、軽荷重のシール | へたり、寸法保持、裂け |
| ショアA60〜80 | しっかり弾む/ゴムらしい | ガイドローラー、搬送の当て材、車輪 | 摩擦と摩耗のバランス |
| ショアA85〜95 | かなり硬い/沈みにくい | 駆動ローラー、圧送ローラー、耐摩耗部品 | 相手材への傷、騒音、滑り |
| ショアD40〜70 | 樹脂に近い硬さ | 高荷重の押さえ、剛性が要る部品 | 衝撃割れ、当たりの強さ |
硬度がズレると何が起きる?用途別の“失敗の症状”
硬度を外すと、トラブルは見た目ではなく「現象」として出ます。症状で捉えると原因に当たりがつきます。
ローラーで柔らかすぎる場合
- 圧痕が残り、外径が変わって搬送ピッチが乱れる
- たわみが大きく、芯金が当たって損傷・振動が出る
- 発熱しやすく、摩耗粉が増える(結果として寿命が短い)
ローラーで硬すぎる場合
- グリップが不足して滑る(速度差で摩耗が一気に進むことも)
- 相手材にスリ傷・圧痕が出る、静電気や騒音が増える
- 当たりが点接触になり、局所摩耗が進む
緩衝材で柔らかすぎる場合
- へたりが早く、当たり位置が変わって位置決めが狂う
- 端部が裂けたり、欠けたりする(繰り返し衝撃で進行)
緩衝材で硬すぎる場合
- 衝撃が逃げず、相手側(治具・機構部)にダメージが出る
- 反発が強く、跳ね返りで次工程に悪影響が出る
硬度とセットで見るべき性能:寿命・コストに直結する指標
購買や生産技術の判断で効くのは「硬度+もう一つ」です。最低限、次の項目を硬度と一緒に確認すると、寿命見込みが立ちやすくなります。
| 確認したい項目 | 何に効くか(例) | 現場での見え方 |
|---|---|---|
| 圧縮永久ひずみ(へたり) | 緩衝材の高さ保持、押さえローラーの復元 | つぶれたまま戻らない |
| 反発弾性(反発) | 搬送の追従性、跳ね返り、騒音 | 反発が強すぎる/弱すぎる |
| 耐摩耗性 | ローラー外周の寿命、粉の発生 | 摩耗粉、外径低下 |
| 引裂強さ | 端部欠け、切れ、割れ | 欠けが広がる、裂ける |
| 摩擦の傾向 | グリップ、滑り、相手材への影響 | 滑る/貼り付く/傷が出る |
硬度選定の前に「3つの条件」を言語化する
硬度は、目的と条件が決まると選びやすくなります。まず次の3点を、社内で同じ言葉に揃えるのがおすすめです。
1)役割:何を良くしたいか(摩耗?グリップ?傷防止?静音?)
- ローラー:搬送力(滑りにくさ)と耐摩耗、相手材への傷のバランス
- 緩衝材:衝撃吸収と復元性、へたりにくさ(長期保持)
2)荷重と変形:どれだけ押され、どれだけ沈んでよいか
「沈み込み量が一定以下」「荷重で芯金に当てない」「当たり圧を分散したい」など、許容変形を決めると硬度の候補が絞れます。ローラーなら外径変化、緩衝材なら高さ変化を“許容値”として持つと判断が早くなります。
3)環境:温度・水・油・薬品・粉じん
同じ硬度でも、低温で硬くなって割れやすい、高温で軟らかくなって摩耗が増える、洗浄液で膨潤する、といった“環境起因の劣化”が起こります。硬度選びは、環境選びでもあります。
次のパートでは、ローラーと緩衝材それぞれで「どの条件を優先すると硬度が決まるのか」を、選定ステップとして具体化します。
硬度の選び方:ローラーで迷わないための手順
ローラーの硬度選定は、「滑らせたくない(搬送力)」「摩耗させたくない(寿命)」「相手を傷つけたくない(品質)」の三つ巴になりがちです。そこで、硬度を“単独”で決めるのではなく、①役割、②荷重と接触状態、③表面条件、の順で詰めるとブレが減ります。
①役割を決める:駆動か、従動か、案内か
- 駆動ローラー:グリップ(摩擦)不足=滑り→発熱→急摩耗、の連鎖が起きやすい
- 従動ローラー:滑りにくさより、回転抵抗・偏摩耗・相手材への当たりを抑える
- ガイド/サイドローラー:当たり圧が局所化しやすく、硬すぎると相手材に傷が出やすい
②荷重と接触状態を整理する:線接触か、面接触か
同じ硬度でも、ウレタンの肉厚が厚いほど“柔らかく感じ”、薄いほど“硬く感じ”ます。芯金(鉄芯)に薄く被覆したローラーは、カタログ硬度より硬く振る舞うため、相手材への傷や滑りが出やすくなります。
- 変形を許したい(当たりを面にしたい):硬度を下げる/被覆厚みを増やす
- 変形を抑えたい(外径を保ちたい):硬度を上げる/厚みを適正化する
③表面条件を決める:滑り・傷・粉の正体は「表面」で変わる
“滑るかどうか”は硬度だけでなく、表面粗さ、相手材の材質、粉じん、湿気、油膜で大きく変わります。硬度を上げて耐摩耗を稼ぐ前に、表面の仕上げ(研磨・梨地)や溝加工、清掃頻度の見直しで改善できる場合もあります。
| ローラーの用途 | ねらい | 硬度の目安 | 併せて効く設計ポイント |
|---|---|---|---|
| 駆動(搬送) | 滑り防止+耐摩耗 | ショアA80〜95 | 表面仕上げ、溝、当たり圧、発熱対策 |
| 従動(追従) | 偏摩耗低減+静音 | ショアA70〜90 | 軸受け精度、芯ブレ、表面粗さ |
| ガイド/横当て | 傷防止+欠け防止 | ショアA60〜85 | 角R、当たり面積確保、引裂強さ重視 |
| 高荷重押さえ | 外径保持+耐久 | ショアA90〜D領域 | 肉厚、芯金径、放熱、材料の耐熱 |
※あくまで入口の目安です。速度が高い、荷重が大きい、連続運転、粉じんが多い、油が付く、といった条件が重なるほど“発熱”が支配的になり、硬度よりも材料系統・配合・放熱設計で寿命が決まるケースがあります。
硬度をいじる前に見直す「ローラー5項目」
硬度変更は効果が大きい一方で、別の不具合を呼び込みやすい手段です。次の5項目は、硬度を変えずに改善できることが多く、現場での手戻りを減らします。
- 当たり圧(ニップ圧):必要以上に強いと発熱と摩耗が増える
- 芯ブレ/偏芯:一箇所に当たり続けて偏摩耗→振動→寿命低下
- 表面仕上げ:鏡面すぎると滑り、粗すぎると相手材を傷つけやすい
- 端部形状:角の立ち上がりは欠け・めくれの起点になる(角Rで改善)
- 清掃と粉:粉が研磨材化して摩耗を加速する(防塵カバーや清掃頻度で変わる)
症状から硬度方向を決める「簡易診断」
- 滑る+外周が熱い:硬度を上げる前に、当たり圧と表面条件(油膜・粉)を疑う。必要なら摩擦を稼げる表面へ
- すぐ削れるが、滑ってはいない:硬度アップや耐摩耗寄り材質が候補。速度が高い場合は放熱設計もセット
- 相手材に傷が出る:硬度を下げるだけでなく、表面粗さと当たり面積(R付け・幅)で圧を下げる
- 端が欠ける/裂ける:硬度より引裂強さと端部形状が支配的。角R+材質選定で改善しやすい
硬度の選び方:緩衝材は「へたり」と「当たり」を分けて考える
緩衝材(ストッパー、当たり止め、緩衝ブロック)の硬度選定でよくある失敗は、衝撃を柔らかさだけで吸収しようとして、へたりで位置が狂うパターンです。ポイントは、衝撃吸収と寸法保持を“同じ部材に全部背負わせない”発想です。
衝撃が強いなら、まずストロークを確保する
ウレタンは金属同士の衝突を和らげるのが得意ですが、潰れる量(ストローク)がないと衝撃が逃げません。硬度を下げる前に、厚み・長さ・当たり面積を見直して、必要な変形量を確保します。
へたりを抑えたいなら「圧縮率」と「常時荷重」を下げる
へたりは硬度だけで決まりません。常に押し潰した状態(予圧)で使うほど、圧縮永久ひずみが効いてきます。
- 常時荷重がある:へたり重視(圧縮永久ひずみの小さい材質・配合)
- 衝撃だけ受ける:引裂強さ・欠けにくさ重視(角欠け対策)
当たりが強いなら、硬度を下げるのではなく形状で逃がす
相手材に当たり跡が出る場合、硬度を下げると改善することもありますが、へたりが早くなる副作用が出ます。そこで、角Rを付ける、当たり面を広げる、二段形状にするなど、形状で当たり圧を下げると両立しやすくなります。
緩衝材の硬度目安を「圧縮率」で持つ
緩衝材は、寸法(高さ)に対してどれくらい潰して使うかで結果が大きく変わります。経験則として、常時押し当てる用途は圧縮率を控えめに、衝撃だけ受ける用途は一時的に潰れても戻る設計にすると安定します。
| 使い方のタイプ | 代表例 | 目安の圧縮率 | 硬度の目安 | ひと言アドバイス |
|---|---|---|---|---|
| 常時当たり(予圧あり) | ストッパー、位置決め当て | 5〜15%程度 | ショアA60〜90 | へたり対策を最優先。硬度より材質系統と形状が効く |
| 繰り返し衝撃(短時間) | 扉・治具の衝撃吸収 | 10〜30%程度 | ショアA40〜80 | ストローク確保が先。角Rと当たり面で欠けを防ぐ |
| 重荷重の衝撃 | 落下・衝突の緩衝 | 15〜40%程度 | ショアA70〜D領域 | 一体で背負わせず、段付きや複合構造で受ける |
仕様を固めるコツ:硬度は「2〜3水準」を比較して決める
現場で最短に結論へ近づく方法は、硬度を一点狙いにせず、用途の優先順位に沿って2〜3水準を並べて評価することです。たとえばローラーなら「狙い硬度」「少し柔らかい」「少し硬い」を用意し、滑り、発熱、摩耗粉、相手材への跡、外径変化を同じ条件で見ます。緩衝材なら、へたり量(高さ変化)と当たり跡をセットで見ます。数字の優劣だけでなく、停止損失や交換頻度まで含めて比較すると、寿命とコストのバランスが“会話”できる状態になります。
耐摩耗と弾性を両立する:材料×形状×表面の“3点セット”
設計視点で押さえたいのは、耐摩耗と弾性はトレードオフになりやすいことです。硬度を上げれば摩耗が減る傾向はありますが、衝撃やズレがある条件では欠け・割れが出ることもあります。逆に柔らかくすると追従性は上がりますが、発熱・へたり・外径変化が増えます。
両立の実務解は、次の3点セットで考えることです。
- 材料:耐摩耗寄り/減衰寄り/耐油寄りなど、狙いに合う系統を選ぶ
- 形状:当たり面積、角R、肉厚、逃げ、溝で“局所ストレス”を減らす
- 表面:研磨・梨地などで摩擦と粉を制御する
次のパートでは、加工方法(注型・切削・接着/焼付け)の違いと、試作〜量産で失敗しない進め方、寿命とコストを同時に最適化する考え方をまとめます。
加工方法の全体像:注型・射出・切削、どれを選ぶ?
ウレタン部品は、目的(硬度・寿命・精度・数量)によって「作り方」を変えると失敗が減ります。特にローラーは、芯金への接合や外径精度が絡むため、加工方法の相性が重要です。
| 加工方法 | 特徴 | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 注型(キャスト) | 型に流し込み硬化。硬度レンジが広く、小ロット向き | 硬度違いの比較、ローラー被覆、特殊形状の試作 | 気泡・収縮、硬化条件で性格が変わる |
| 射出成形 | 金型で量産しやすく、再現性が高い | 数量が多い量産、形状が安定している部品 | 金型費が必要。硬度変更は材料手配と条件出しが要る |
| 切削加工(板材・丸棒から) | 図面どおりに削れる。短納期で試作しやすい | ブロック・スペーサー・当たり止め、少量の治具部品 | 熱で溶けやすく、バリ・反り・寸法変動に配慮が必要 |
「まずは動くものを早く作り、硬度を2〜3水準で比較したい」なら、切削や注型が強い選択肢になります。一方、量産で毎回同じ性能を安定して出したい場合は、射出や量産向けの工法へ移行すると総コストが下がることがあります。
切削加工の勘どころ:寸法精度より“再現性”を設計する
ウレタンは金属や硬質樹脂に比べて、工具の熱や押し付けで「たわみ」「伸び」「戻り」が出やすい材料です。そのため、図面公差を厳しくするほど、加工難度とコストが上がります。実務では次の考え方が有効です。
- 寸法基準を決める:外径基準か、内径基準か、当たり面基準かを明確にする
- 当たり面を逃がす:当たり以外は逃げを作り、局所圧を減らす
- 角はRにする:欠けの起点を消し、加工も安定する
- 面粗さを指定する:滑り・傷・粉を左右するのは表面仕上げ
芯金への接着・焼付け:剥離を防ぐ設計の要点
ローラー用途では、ウレタン単体の性能より「芯金から剥がれない」ことが最優先になる場面が多くあります。剥離は材料不良というより、条件の組み合わせで起きます。
- 下地処理:油分除去、粗化、プライマー処理の適否で差が出る
- 端部形状:境界に段差や角があると、めくれの起点になりやすい
- 熱と水分:温度変動や水分環境で接着界面が弱ることがある
- ねじれ・偏荷重:荷重が片当たりすると界面に剪断が集中する
現場では「端部R」「逃げ溝」「当たり圧の適正化」だけで寿命が伸びるケースも珍しくありません。
加工トラブル事例と対策:原因を“硬度”だけにしない
硬度を変えても改善しないとき、次の観点で切り分けると近道です。
- 摩耗粉が多い:粉じん混入、速度差、発熱、相手材の表面状態を疑う
- 外径がすぐ変わる:荷重過大、肉厚不足、連続運転での温度上昇を疑う
- 欠ける/裂ける:角の立ち上がり、引裂強さ、衝撃の入り方を疑う
- べたつく/膨潤する:油・洗浄液・水分による影響(材質系統の見直し)
「症状→原因候補→対策」の順で整理すると、硬度の再選定が本当に必要か判断できます。
試作評価で見るべき項目:数字より“現象”を揃える
硬度違いの試作をしたら、評価軸を先に揃えると結論が出やすくなります。特に購買判断まで含めるなら、寿命の兆候を早めに掴むのがポイントです。
| 評価項目 | 見るポイント | 記録の例 |
|---|---|---|
| 滑り | 起動時/連続運転時の滑り、油膜・粉の影響 | 速度差、滑りが出る条件 |
| 発熱 | 外周温度、触れない熱さになるか | 温度、連続運転時間 |
| 摩耗 | 外径低下、摩耗粉の量と粒度感 | 外径変化、粉の堆積 |
| 傷・当たり跡 | 相手材のスリ傷、圧痕、光沢変化 | 不良率、見た目の変化 |
| へたり | 高さ・外径の戻り、圧痕の残り | 24時間後の寸法変化 |
| 欠け・裂け | 端部、角部の欠け始まり | 欠け位置、進行速度 |
短時間の評価でも、「滑り→発熱→粉→摩耗」の連鎖が出るかどうかは見えます。ここを押さえると、長期寿命の当たりが付きやすくなります。
寿命とコストの決め方:部品単価ではなく“運用コスト”で比較する
購買の視点では、部品単価よりも総コストで見た方が結論が早くなります。
- 交換作業の工数(停止時間、段取り、調整)
- 交換頻度(寿命のばらつきも含む)
- 不良の損失(傷、搬送不良、異音クレーム)
- 在庫(硬度違い・材質違いの持ち方)
たとえば「単価が少し高いが寿命が2倍」で、停止回数が半減するなら、トータルでは安くなることがあります。逆に、硬度を上げて寿命を伸ばしても、相手材の傷で不良が増えるなら逆効果です。
相談・見積りで伝えるべき情報:図面がなくても整理できる
仕様出しは、次の情報が揃うほど硬度提案が具体的になります。
- 用途:駆動/従動/ガイド/緩衝、相手材の材質
- 条件:荷重、速度、温度、雰囲気(油・水・薬品・粉)
- 寸法:外径・幅・肉厚、許容したい変形量(沈み込み、高さ変化)
- 困りごと:滑り、摩耗粉、欠け、へたり、剥離などの現象
- 目標:寿命、交換周期、コスト上限、納期、数量(試作→量産の見込み)
これらを一度紙に起こすだけで、硬度候補の絞り込みと試作計画(2〜3水準比較)が立てやすくなります。
まとめ
ポリウレタン(ウレタン/PU)は、硬度レンジが広く、耐摩耗と弾性(追従・減衰)を狙って作り込める反面、同じ硬度表記でも 配合・製法(注型/射出/切削)・形状・温度/水分/油などの環境で体感や寿命が大きく変わる材料です。
そのため、硬度だけで決め切ると「滑る」「発熱する」「摩耗粉が増える」「へたる」「欠ける」「芯金から剥がれる」といった手戻りが起こりやすくなります。
失敗を減らすポイントはシンプルで、
- ローラーは「滑り・発熱・偏摩耗・剥離」まで含めて評価する
- 緩衝材は「へたり(圧縮永久ひずみ)・当たり跡・欠け」をセットで見る
- 迷ったら 硬度を一点決めせず、2〜3水準で同条件比較し、形状・表面・荷重・環境も同時に切り分ける
この進め方が最短です。硬度をいじる前に、当たり面積・角R・肉厚・表面仕上げ・ニップ圧など“設計側で効く手当”を入れるだけで、寿命が伸びるケースも少なくありません。
株式会社アリスでは、ウレタン部品の試作・小ロット製作において、用途と困りごと(滑り/摩耗粉/へたり/欠け/剥離)を整理しながら、硬度候補の比較試作〜形状・加工方法の成立性検討まで一体でご相談いただけます。図面が未確定でも、現象と条件が分かれば「まず試すべき硬度レンジ」と「失敗しにくい評価項目」を一緒に組み立てられます。
ご相談の際は、下記が分かると提案がスムーズです。
- 用途(駆動/従動/ガイド/緩衝)と相手材
- 条件(荷重・速度・温度・水/油/薬品・粉じん)
- 寸法(外径/幅/肉厚、許容変形量=沈み込み/高さ変化)
- 現状の困りごと(滑り、発熱、摩耗粉、へたり、欠け、剥離など)
- 目標(寿命・交換周期・コスト上限・数量/納期)
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