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PTFE(フッ素樹脂)とは?テフロンとの違い・用途・加工の注意点

2025.11.07 チップス
PTFE(フッ素樹脂)とは?テフロンとの違い・用途・加工の注意点

化学装置や半導体、食品ラインなどで「フッ素樹脂」と聞くと、まず候補に挙がるのがPTFEです。耐薬品性や非粘着性が強みですが、実は“使い方を間違えると漏れや変形が起きやすい”材料でもあります。この記事では、設計・試作・保全それぞれの立場で押さえるべき基礎を、難しい言葉をほどきながら整理します。

最初に、このページで分かることをまとめます。

  • 化学装置設計の方:耐薬品・非粘着を活かせる部位と、材質指定で外さない書き方
  • 試作担当の方:変形(へたり)・締結・シールで起きやすい落とし穴の全体像
  • 保全の方:摺動・シール寿命が短いときの“材料起因”の見立てポイント

PTFE(フッ素樹脂)とは:材料の正体

PTFEは「ポリテトラフルオロエチレン」という樹脂の略称です。炭素の骨格をフッ素が取り囲む構造を持ち、化学的に安定で、表面が“ものを寄せ付けにくい”性質になりやすいのが特徴です。金属のように錆びる・溶ける・反応する、といったリスクを下げられるため、薬液や高純度用途で長く使われています。

フッ素樹脂の中でのPTFEの立ち位置

フッ素樹脂にはPTFEのほか、PFA、FEP、ETFEなど複数の系統があります。ざっくり言うと、PTFEは「耐薬品・低摩擦・非粘着が非常に強い一方、成形や接合、寸法安定にクセがある」タイプ。いきなり最適材と決めつけず、温度・圧力・締結方法・摺動条件まで含めて選ぶのが失敗しない近道です。

先に知っておきたい“弱点”:変形と熱のクセ

PTFEでトラブルになりやすいのは、材料が柔らかく、時間と温度で「じわっと形が変わる」点です。これはクリープ(コールドフロー)と呼ばれ、シール面圧が落ちたり、ボルト締結が緩んだような挙動になったりします。また、樹脂全般に言えることですが金属より熱で伸びやすく、温度変化が大きい装置ではクリアランス設計にも影響します。ここを理解しておくと、後工程の手戻りが一気に減ります。

テフロンとの違い:商標と材料名を混同しない

現場で多い質問が「PTFEとテフロンは違うの?」です。結論から言うと、PTFEは材料名(樹脂の種類)で、テフロンは一般に“商品名・ブランド名として使われる呼び方”です。そのため、会話では同じ意味で使われがちですが、図面や仕様書では混同がトラブルの種になります。

「テフロン=PTFEだけ」とは限らない

実務では「テフロン」と言ったときにPTFEを指している場面が多い一方、フッ素系の別材料を含む言い方として使われることもあります。設計側が材料名を固定していないと、加工会社・部材商社・現場の解釈がズレて、性能もコストも変わってしまいます。

発注・図面で起きやすいズレ

たとえば「テフロンで作ってください」とだけ書くと、PTFEを指しているつもりでも、相手は別のフッ素系材料(PFA等)を想定することがあります。さらに、PTFEにもバージン材(充填材なし)と、ガラス・カーボン等の充填材入りがあり、これで摩耗や硬さ、相手材への攻撃性まで変わります。

呼び方何を指すか図面・仕様での書き方の目安
PTFE樹脂の種類(材料名)「材質:PTFE(グレード記載)」
テフロン一般に商品名として使われる呼称図面では避け、材料名で明記
フッ素樹脂フッ素系樹脂の総称PTFE/PFA/FEP等まで特定する

PTFEの代表特性:なぜ化学装置で強いのか

PTFEが選ばれる理由は「耐薬品」「非粘着」「低摩擦」の3点に集約できます。ただし、メリットの裏に“設計上の注意点”が必ずあります。良いところだけで選ぶと、試作のやり直しや保全コストに跳ね返ります。

耐薬品性:強いが“万能”ではない

PTFEは多くの酸・アルカリ・溶剤に対して安定で、腐食トラブルを避けたい装置に向きます。一方で、温度が上がると薬品の攻撃性が増すのは金属と同じです。また、薬液だけでなく「透過(ガスや溶剤がじわっと通る)」の評価も重要です。漏れが出ていなくても、臭気や濃度低下が問題になるケースがあります。

非粘着性:付着しにくいが条件がある

PTFEは表面エネルギーが低く、粉体や粘性物が張り付きにくい傾向があります。ただし、相手の温度が高すぎる、表面に傷が多い、付着物が硬化して食い込む、といった条件では「取れない汚れ」になります。非粘着性は万能の“汚れゼロ”ではなく、清掃性を上げるための武器と考えるのが現実的です。

低摩擦:滑る=長寿命、とは限らない

PTFEは摩擦係数が低く、摺動部のスティックスリップ(引っかかり)を抑えやすい材料です。ですが、摩擦が低いことと摩耗が少ないことは別問題です。相手材が柔らかいと擦り減らしてしまう場合もありますし、面圧や速度が高いと発熱→変形→摩耗悪化の流れに入ります。保全の立場では「滑っていたのに急にガタが出る」原因の多くが、この条件外運転にあります。

耐熱・難燃・電気特性:長所だが“強度低下”に注意

PTFEは高温域まで使われる材料として知られ、燃えにくく、電気を通しにくい性質も持ちます。ただし、温度が上がるほど機械的なコシ(剛性)は落ちやすく、締結部・シール部では「熱で柔らかくなる→面圧が落ちる」という形で効いてきます。温度条件が厳しい装置ほど、材料選定と締結設計をセットで考える必要があります。

よく使われる用途:耐薬品・非粘着を活かす例

ここからは、化学装置設計・試作・保全でよく登場するPTFEの使いどころを整理します。

配管・継手・ライニング

薬液が触れる部位で、金属を守る目的で使われます。配管内面のライニングや、継手まわりのガスケットに採用されるのが代表例です。ポイントは「温度」「圧力」「締結部の面圧」をセットで見ること。材料が良くても、締結が弱いと漏れます。

バルブ周辺:シート、パッキン、ガスケット

バルブのシートやパッキンは、非粘着と耐薬品が効く一方、締付け不足・締め過ぎの両方で不具合が出ます。締め過ぎると一時的に止まっても、時間とともに“へたり”が進み、面圧が落ちて再び漏れることがあります。この「後から漏れる」挙動が、PTFE特有の注意点につながります(。

摺動部:ガイド、ブッシュ、シールリング

摺動部では、低摩擦だけでなく、摩耗粉の発生や相手材への攻撃性も評価対象です。用途によっては、充填材入りPTFEの方が寿命が伸びるケースがあります。逆に、清浄度が重要な工程では、摩耗粉を嫌って別材を選ぶ判断もあります。

なお、試作や外注の段階で手戻りを減らすなら、まずは材質指定を「PTFE」までで止めず、次の3点をセットで伝えるのが有効です。

  • バージンPTFEか、充填材入りか(充填材の種類まで)
  • 使用温度と、相手材(摺動・シール面の材質)
  • 形状の要点(薄肉部、長尺、締結部、シール面の有無)

ここが落とし穴:クリープ(コールドフロー)と熱膨張

PTFEを「耐薬品だから安心」とだけ捉えると、現場で一番多い失敗が“形が変わって性能が落ちる”です。金属のように割れるより先に、じわじわ変形して漏れ・ガタ・摺動不良につながります。特に、PTFEは弾性回復が大きい材料ではないため、一度つぶれた形が戻りにくい点も押さえておくと設計判断が早くなります。

クリープとは何か

クリープは、荷重をかけ続けると時間とともにひずみが増える現象です。PTFEは特に起きやすく、締結部では「締めた直後は止まるのに、数時間〜数日後に漏れる」原因になりがちです。温度が高いほど進みやすく、同じトルクで締めても面圧が落ちていきます。さらに、荷重が一点に集中していると局所的に流れやすく、外周へ“めくれる”ような変形が起きます。

クリープを前提にした設計の考え方

対策の基本は、PTFEに“無理をさせない形”にすることです。

  • 面圧を一点に集中させすぎない(薄肉、狭い座面、角の応力集中を避ける)
  • 逃げ場を作らない(押し出し方向に空間があると、そこへ流れていく)
  • 変形しても機能が落ちにくい構造にする(リップ形状、段付き、金属バックアップ)

特にシールは「漏れない」より先に「面圧を維持できる」かで決まります。PTFEを採用するなら、“時間が経つ”ことを仕様に織り込むのがコツです。試作段階では、締結直後と一定時間後で漏れ・締付け状態がどう変わるかを観察すると、量産時のトラブル予防になります。

温度変化と熱膨張:クリアランスと拘束

PTFEは金属より熱で伸びやすい材料です。温度が上がるとクリアランスが消えて摺動が重くなる、逆に冷えると隙間が増えて漏れや振れが出る、といった挙動が起きます。装置の運転温度レンジが広い場合は、常温寸法だけでなく「高温時の当たり」「冷間時の隙間」をセットで見てください。加えて、温度変化で締結力そのものが変わる(部材の伸び縮みの差が出る)こともあるため、温度条件は“材料選定”だけでなく“締結設計”にも直結します。

締結設計の注意点:ボルトを締めても“後で漏れる”理由

PTFEまわりの締結は、ボルト強度より“面圧を保つ仕組み”が肝です。締結が緩んだのではなく、PTFE側がへたって面圧が抜ける、という順番で起きます。

面圧を維持する工夫

  • ガスケット幅を必要以上に広くしない(同じ締付力でも単位面圧が上がる)
  • 座面の平行度・面粗さを管理する(片当たりは漏れの最短ルート)
  • 温度上昇がある装置は、運転条件で面圧がどう変わるかを想定する

面粗さは「鏡面なら良い」とは限りません。粗すぎると漏れ筋になり、滑らかすぎると“なじみ”が弱くて止まりにくい場合があります。現場では、ガスケットやフランジの推奨仕上げに合わせて、極端を避けた管理をするのが安全です。

座面・ワッシャ・金属バックアップ

PTFE単体をボルトで挟むと、座面の凹凸に追従して一見止まりやすい反面、へたりや押し出しが進みます。座金やバックアップリング、金属の押さえ板を組み合わせて、PTFEが流れる余地を減らすと安定します。締結部の“端”からめくれるように流れるケースも多いので、外周側の拘束は有効です。増し締めが難しい設備では、皿ばね等で締結力を追従させる考え方(ライブローディング)も検討対象になります。

締付け手順と増し締め

PTFEガスケットは、締付け直後に初期なじみが出ます。可能な設備では、一定時間後の増し締め(冷間での追い込み)を手順化すると漏れ再発を減らせます。締付けは対角線で段階的に行い、偏った面圧を残さないことが基本です。ただし、薬液設備では安全手順が最優先です。現場で増し締めが難しい前提なら、設計側で“増し締め不要でも止まる構造”へ寄せる方が現実的です。

シール設計の注意点:ガスケット/パッキンの選び分け

PTFEのシールは一口に言っても、シート、成形品、包み、膨張タイプなどで得意分野が違います。設計の迷いを減らすため、選び分けの軸を整理します。液体シールなのか、ガスシールなのかでも難易度が変わり、ガスでは“透過”や微小漏れが問題になるケースもあります。

方式長所注意点向く場面
PTFEシートガスケット耐薬品・入手性が高いクリープで面圧低下、押し出し一般フランジ、試作で早い
膨張PTFE(ePTFE)追従性が高く微小な面粗さに馴染む高温・高面圧条件は要確認面のうねりがある相手、低締付力
充填材入りPTFE剛性・耐摩耗が上がりやすい相手材を傷める場合がある摺動兼用、寸法安定を優先
PTFE包みガスケット流体はPTFEに触れ、芯材で面圧維持形状・寸法の取り決めが重要強い薬液+面圧も必要な継手
スプリング付PTFEシール低摩擦で確実な接触圧を作れるコスト・溝設計が難しいバルブ軸、往復動の高寿命化

Oリング溝にPTFEを“そのまま”入れない

ゴムOリングは弾性でシールしますが、PTFEは弾性体ではありません。PTFEリングを同じ溝に入れても、初期は止まっても温度・時間で当たりが変わり、漏れやすくなります。PTFEを使うなら、ばねで押し付けるタイプや、芯材で復元力を持たせたタイプなど「押し付け力をどう作るか」を先に決める必要があります。ここを曖昧にすると、試作は通っても量産・長期運用で不具合が出やすくなります。

押し出し(エクストルージョン)とバックアップ

圧力が高い、隙間が大きい、温度が高い。この3つが揃うとPTFEは隙間へ押し出されます。バックアップリングで逃げ場を塞ぐ、隙間を詰める、段差でせき止める、が基本対策です。保全側で押し出し痕が見えたら、材質変更より先に「隙間と拘束」を疑うと原因特定が早まります。

摺動・摩耗の注意点:低摩擦を寿命に変える

PTFEは滑ります。しかし寿命は、面圧・速度・温度・相手材の組み合わせで大きく変わります。摺動トラブルを減らすには、設計段階で“摩耗の出口”を潰すのが近道です。

摩耗は相手材で決まる部分が大きい

相手材が柔らかいと、PTFEが勝つのではなく相手が削れて粉が出ることがあります。逆に相手材が硬くても、表面が荒いとPTFEが削られます。摺動面は「硬さ」と同じくらい「表面の状態」が重要です。加工・研磨の指定が曖昧だと、試作では動いたのに量産で寿命が伸びない、が起きます。

条件の見える化:面圧×速度×温度

摺動は“条件”で決まります。速度が低くても面圧が高い、面圧が低くても速度が高い、といった偏りで発熱と摩耗が増えます。設計段階で「どの条件が支配的か」を整理し、厳しい側に合わせて材料や相手材、潤滑の有無を決めると、原因不明の寿命短縮を避けられます。

充填材入りPTFEの選定軸

摩耗を抑えたいときは充填材入りPTFEが候補になりますが、万能ではありません。ポイントは次の2つです。

  • 何を優先するか(耐摩耗、寸法安定、相手材攻撃性、清浄度)
  • 摩耗粉が許容できるか(異物混入がNGの工程では別解が必要)

保全で効く観察ポイント

  • 摺動面の片当たり(偏摩耗)は、まず芯出し・ガタ・取付け剛性を疑う
  • 変色や波打ちがある場合は、発熱(条件過大)を疑う
  • “急に寿命が落ちた”ときは、相手材の表面粗さ変更や潤滑条件の変化が多い

加工の注意点:切削加工で「寸法が出ない」を減らす

PTFEは切削加工ができる一方で、金属と同じ感覚で加工すると寸法ブレや反りが出やすい材料です。試作で困りやすいポイントは、だいたい次の3つに集約されます。

  • 加工中の熱と、加工後の“戻り”(応力解放)で寸法が動く
  • 柔らかいので、クランプ力や工具の押し付けでつぶれやすい
  • エッジがめくれやすく、バリが「糸」のように残りやすい

反り・寸法ブレの典型パターン

長尺リングや薄肉形状ほど、仕上げた直後は良く見えても、時間を置くと反りが出ることがあります。これは加工で入った応力が、時間とともに抜けるためです。対策としては、仕上げ代を見て“荒→時間置き→仕上げ”の工程にする、肉厚バランスを整える、片側だけ削り込む形を避ける、といった段取りが効きます。

チャッキングと肉厚:つぶしグセを設計で避ける

PTFEは締め付けた瞬間から形が変わります。試作図面では、把握しやすい基準面・把握代を確保し、薄肉部を直接つかまない形状にしておくと成功率が上がります。どうしても薄肉なら、治具や当てリング前提で見積もるのが現実的です。

バリ・欠け対策:シール面は「最後の一手」で決まる

バリ取りでシール面を傷つけると、材料が良くても漏れます。角は面取りを前提にし、どこを面取りNGにするか(シール線が通る箇所)を明確にすると、加工側も迷いません。仕上げ面は、工具痕が漏れ筋にならない範囲で、狙いの粗さに合わせて仕上げるのが基本です。

グレード選定:バージンPTFEと充填材入りの使い分け

「PTFE」と一言で指定すると、バージン(充填材なし)を想定するのが一般的です。ただ、摺動寿命や寸法安定、へたり対策が目的なら、充填材入りの方がハマるケースが多くあります。逆に、純度や異物混入の制約が厳しい工程では、バージンが無難です。

種類期待できる方向性向く用途注意点
バージンPTFE非粘着・耐薬品を優先ライニング、一般ガスケットへたり・押し出しに注意
ガラス充填剛性アップ、変形を抑えやすいシール座、構造部品条件で相手材を摩耗させる場合
カーボン系充填耐摩耗・摺動安定を狙うブッシュ、摺動リング黒色、清浄度要件に注意
ブロンズ系充填耐荷重・耐摩耗を狙う低速高荷重の摺動薬液や腐食環境は要確認

また、同じ“フッ素樹脂”でも、成形性や溶着性を重視するならPTFE以外が候補になることがあります。例えば、溶融成形や透明性、曲げ強度などの条件が支配的なら、PFAやFEP、ETFE等を検討する価値があります。材料選定は「流体に強いか」だけでなく、「形にできるか」「締結・シールで安定するか」をセットで見るのが近道です。

図面・試作依頼で手戻りを減らすチェックリスト

試作がうまくいかない原因は、材料そのものより「情報不足」で起きることが多いです。発注時に、最低限ここまで伝えるだけで、漏れ・反り・寿命トラブルの再発率が下がります。

伝える項目なぜ重要か書き方例
使用流体と温度耐薬品だけでなく、へたり条件が決まる「〇〇薬液、常用80℃」
圧力とシール方式押し出し・面圧設計に直結「0.6MPa、静止フランジ」
締結条件“後で漏れる”を左右「増し締め不可/可」
摺動の有無・相手材摩耗と相手攻撃性が変わる「相手:SUS、Ra指示」
寸法公差の狙い過剰公差は反りとコスト増「機能寸法のみ厳しく」
面取り・バリ基準シール面の傷を防ぐ「シール線は面取り禁止」

保全の方は、現物の変形痕を見れば原因を絞れます。外周がめくれていれば押し出し、面が波打っていれば発熱や片当たり、締結部だけ潰れていれば面圧集中、といった具合です。交換だけで終わらせず「形の負け方」を記録しておくと、次回の設計改善につながります。

まとめ

PTFE(フッ素樹脂)は、耐薬品・非粘着・低摩擦が非常に強く、化学装置・半導体・食品ラインの「金属だと腐食が怖い/付着が困る/滑りを良くしたい」部位で頼れる材料です。
ただし“万能材”ではなく、実務でつまずきやすいのは 時間と温度でじわじわ変形する(クリープ/コールドフロー)という特性です。ここを前提にしないと、試作では止まったのに 数日後に漏れる・締結が緩んだように見える・ガタが出るといった形で、手戻りや保全コストに直結します。

PTFEで外さない判断ポイント

  • 「テフロン」表記は避け、図面は材料名で固定:PTFE(バージン or 充填材入り)まで明記
  • シールは“漏れない”より“面圧を維持できるか”:押し出しの逃げ場、バックアップ、座面精度、増し締め可否をセットで設計
  • 摺動は「滑る=長寿命」ではない:面圧×速度×温度×相手材表面で寿命が決まる。必要なら充填材入りPTFEも早めに候補化
  • 加工は金属感覚NG:つぶれ・反り・バリが出やすいので、把握代/面取り指示/重要公差の集中で安定させる

「PTFEにするべきか」「PFA/FEP/ETFEなど別のフッ素系にした方が良いか」で迷う場合は、流体(薬品名・濃度)×温度×圧力×締結条件(増し締め可否)×摺動の有無を揃えたうえで、短期の“時間差評価”(締結直後と一定時間後の漏れ・面圧変化)まで確認すると、判断がぶれにくくなります。

株式会社アリスでは、PTFEを含むフッ素樹脂部品について、材質・グレードの提案から 切削試作(反り対策・バリ管理)、必要に応じて シール/摺動の成立性を見越した形状提案まで一貫してご相談いただけます。
「耐薬品で選んだのに漏れる/へたる」「寿命が読めない」「図面の書き方が不安」といった段階でも、早めに条件を揃えるほど手戻りが減ります。

ご相談・見積りを早く正確にするために、最初に共有いただきたい情報

  • 使用流体:薬品名(成分)/濃度/液温(常用・ピーク)/接触時間
  • 圧力・シール方式:静止/動的、フランジ/パッキン/ガスケット種類、漏れ許容
  • 締結条件:締結トルク目安、増し締め可否、座面材質と仕上げ状態
  • 摺動条件:面圧・速度・温度、相手材材質、表面粗さの指定有無
  • 材料指定:バージンPTFEか、充填材入りか(充填材種類の希望)
  • 図面情報:重要寸法、公差の優先順位、シール線の面取り可否、外観/バリ基準

PTFEは、条件を揃えて“使い方を設計できれば”非常に強い材料です。まずは上記の条件を一枚にまとめ、試作で「時間差の変化」まで含めて確認できる状態にしていきましょう。

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