ABS樹脂加工の本質とは何か【中編】
― 精度保証と内部応力をどう扱うか ―
ABS樹脂の加工において、精度保証を語る際に避けて通れないのが「内部応力」の存在です。
金属と異なり、ABSは成形時や押出時の履歴を内部に抱えています。その応力は目に見えませんが、切削や温度変化をきっかけに解放され、反りや寸法変動として現れます。
開発試作の段階では、図面公差を満たすことが第一条件になります。しかし、加工直後に測定して合格していても、時間経過後に微妙な変化が起こるケースは珍しくありません。特に薄肉形状や左右非対称形状では、その影響が顕著に出ます。
(株)アリスでは、ABSを“削って終わり”とは考えません。
精度保証とは、測定値だけで判断するものではなく、材料の状態を読み、将来の変化まで想定することだと捉えています。
例えば、片側からの一方向加工ではなく、バランスを意識した段階加工を行う。
一気に仕上げ寸法へ追い込まず、荒取り後に一度安定時間を設ける。
あるいは固定方法を工夫し、応力解放を局所化させない。
こうした工程設計の思想が、最終精度を左右します。
また、温度管理も重要な要素です。
ABSは熱変形温度が金属より低いため、加工熱の蓄積が寸法誤差の要因になります。工具の選定、切削条件、冷却方法の選択は、すべて内部応力との対話と言えます。
エンジニアリングとは、数値を追うことではなく、現象を理解すること。
(株)アリスは、ABS加工において「なぜ変化するのか」を掘り下げることで、再現性の高い精度保証を実現しています。
開発段階でのわずかな差異は、量産時に大きな問題へと拡大する可能性があります。
だからこそ試作段階で、内部応力まで踏み込んだ議論が必要なのです。