アルミニウム(アルミ)とは?特徴・用途・切削加工の歪み対策
軽量化を狙ってアルミを検討したら、今度は「剛性は足りる?」「加工したら反る?」「表面処理後にキズが目立つ?」という壁に当たる——これは試作・小ロットでも量産でも、よくある流れです。アルミは“扱いやすい金属”と言われる一方で、材質の選び方と加工の進め方を間違えると、反り・ねじれ・外観不良が出やすい材料でもあります。ここではまず、機械設計・生産技術・品質の各立場で判断しやすいように、アルミの基本と特徴を噛み砕いて整理します。
アルミニウム(アルミ)とは
アルミニウムは元素記号Alの金属で、地金としては軽く、表面に自然な酸化皮膜(薄い保護膜)ができやすいのが特徴です。ただし、工業製品で「アルミ」と呼んでいる材料の多くは、純アルミではなくアルミ合金です。合金とは、アルミにマグネシウム(Mg)やシリコン(Si)などの元素を加えて、強度・加工性・耐食性などを用途に合わせて調整したもの。つまり「アルミ=全部同じ」ではありません。
純アルミとアルミ合金の違い
- 純アルミ(1000系が代表):耐食性や熱・電気の流れやすさが強み。強度は高くないため、構造部品には不向きなことが多い
- アルミ合金(2000/5000/6000/7000系など):強度・剛性設計・切削性などを実用域まで引き上げた材料群。用途の中心はこちら
「強度が欲しいから高強度材を選ぶ」だけだと、加工の反りや外観の問題が後から出ます。設計・加工・表面処理まで見通した上で、ちょうど良い合金を選ぶのがコツです。
材料記号(A5052など)の読み方
アルミ合金はJISなどで「A5052」のように表記されます。大まかな見方は次の通りです。
- 先頭の数字の“系統”で、性質の方向性が分かる(例:5000系=耐食性と加工性のバランス、6000系=強度と加工性のバランス、7000系=高強度)
- 同じ系統でも、末尾の番号が違うと成分や特性が異なる(=同じノリで置き換えると失敗しやすい)
質別記号(O/H/T6)が意味すること
同じ合金でも、熱処理や加工履歴で性質が変わります。これを質別と呼び、O、H、T6などで示します。
- O(焼なまし):やわらかく、曲げ加工などに向く。切削後の反りは条件次第で出る
- H(加工硬化):圧延などで硬さを上げた状態。板材でよく見る
- T(熱処理材):熱処理で強度を上げた状態。T6は代表的で、強度は上がるが、加工の熱や取り代、固定の影響が結果に出やすい
図面で材質を指定するときは「A6061」だけでなく「A6061-T6」のように、質別まで合わせて初めて“同じ材料”になります。
アルミの特徴を“設計に効く言葉”で整理
アルミは「軽いから良い」だけでは語れません。設計で効くポイントと、製造で起きやすい注意点をセットで押さえます。
| 観点 | アルミの傾向 | ありがちな落とし穴/対策の方向性 |
|---|---|---|
| 軽さ | 鉄系より大幅に軽い | 肉厚アップで剛性を稼いでも重量増が小さく済む |
| 強度 | 合金と質別で幅が大きい | “高強度=万能”ではない。歪み・外観も含めて選ぶ |
| 剛性(たわみ) | 鉄系より低い | 同じ厚みならたわみやすい。断面形状で補う |
| 熱 | 熱が伝わりやすく、膨張もしやすい | 加工熱で寸法が動く。工程内の温度管理が重要 |
| 腐食 | 酸化皮膜で守られやすい | 異種金属接触で電食が起こることがある(絶縁・表面処理で回避) |
| 加工 | 切削しやすい系統が多い | 溶着・むしれ・バリが出やすい。工具・条件・切りくず排出が鍵 |
「軽量化と剛性」を両立する考え方
剛性は材料だけでなく形状で大きく変わります。たとえば曲げに対する“たわみにくさ”は、材料の弾性率(硬さの指標)と断面形状(厚み・高さ・リブなど)の掛け算で決まります。ここで覚えておくと便利なのが、厚みを少し増やすだけで剛性が大きく上がるという点です。板や梁は、厚み方向の効きが強く、同じ材料でも形状最適化で体感が変わります。
- 例:板厚を増やしても、アルミなら重量増が小さく、剛性を確保しやすい
- 例:同じ重量なら、単なる平板よりも、曲げ加工・リブ・箱形状の方が剛性を出しやすい
- 例:肉抜きする場合でも、外周の“枠”を残す、リブをつなぐなどで、たわみと歪みを抑えやすい
設計段階で「材質を上げる」か「形状で稼ぐ」かを整理すると、後工程(加工・表面処理)での手戻りが減ります。
板材・押出材・鋳物で“反りやすさ”が変わる
同じ合金名でも、材料の形(供給形態)で加工後の安定性は変わります。理由は、材料の中に見えない内部応力(残留応力)が入りやすいからです。内部応力が大きい材料を削っていくと、バランスが崩れて反り・ねじれが出やすくなります。
- 板材(圧延材):薄板は扱いやすい一方、厚板は取り代や工程次第で動くことがある
- 押出材:長尺形状に強い。断面が非対称だと加工後にねじれやすいケースも
- 鋳物・鋳造プレート:応力が比較的少ないタイプがあり、寸法安定性を優先したい治具・ベースに向くことがある(ただし材質選定と品質確認が前提)
試作では「まず1個を早く」になりがちですが、反りが致命傷になりそうな形状ほど、材料手配の段階で“安定性寄りの選択肢があるか”を確認しておくと後が楽になります。
用途から逆算すると材質選定が早い
| 目的・部品イメージ | 向きやすい系統 | ねらい |
|---|---|---|
| 筐体・カバー・板金代替 | 5000系 | 耐食性と成形・加工のバランス |
| フレーム・治具・構造部品 | 6000系 | 強度と加工性のバランス(汎用性) |
| 軽量化を最優先する高強度部品 | 7000系 | 強度重視。ただし歪み・外観・割れに注意 |
発注・図面で迷いやすい「最初の確認ポイント」
アルミ案件で手戻りが起きやすいのは、材料名だけ決めて走り出し、後から「思っていた質感と違う」「歪みが止まらない」「処理後に寸法が入らない」と発覚するパターンです。最低限、次の情報をそろえると判断が早くなります。
- 合金+質別:A5052なのか、A6061-T6なのか(同じ“アルミ”でも別物)
- 材料の形:板材/押出材/丸棒など。長尺や薄肉は特に影響が出やすい
- 仕上がり要求:外観面か、機能面か。アルマイト等の表面処理有無と色
- 公差の優先順位:平面度・直角度・位置度など、どこが最重要か
- 検査とキズの見方:見る距離・照明・方向をそろえる(品質のブレ防止)
代表的なアルミ合金の種類と選び方
アルミは「軽い金属」ではなく、「目的に合わせて性格が変わる材料群」です。迷ったら、まずは用途と外観要求から候補を絞り、最後に歪みリスクとコストで調整すると失敗しにくくなります。ここでは現場で登場頻度の高い A5052 / A6061 / A7075 を軸に整理します。
よく使う代表材のざっくり理解
- A5052(5000系):耐食性が高く、板材・カバー・筐体で定番。アルマイトとも相性が良い。一方で“超高強度”ではないため、構造部品は形状で剛性を稼ぐのが基本。
- A6061(6000系):強度と加工性のバランスが良く、治具・フレームなどで汎用性が高い。T6など熱処理材は強いが、薄肉形状では歪みの出方に注意。
- A7075(7000系):高強度が売り。軽量化しつつ強度を取りたいときの最終候補になりやすいが、コスト・耐食性・加工後の安定性(歪み)まで含めて設計側の覚悟が必要。
- A2017/A2024(2000系):いわゆるジュラルミン系。切削性が良い材もあり、機械部品で使われる。耐食性や表面処理条件は用途と環境で要確認。
| 材料(代表例) | 強度の目安 | 耐食性 | 切削のしやすさ | アルマイト外観 | 向く用途 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A5052 | 中 | 高 | 良 | 比較的安定 | 筐体、板物、カバー | 構造は形状で剛性確保 |
| A6061(T6など) | 中〜高 | 中 | 良 | 条件次第 | 治具、フレーム、機構部品 | 薄肉は歪み・寸法変動に注意 |
| A7075(T6など) | 高 | 低〜中 | 良 | 色ムラが出ることも | 高強度部品、軽量化 | コスト、電食、歪み、割れ対策 |
| A2017/A2024 | 中〜高 | 低〜中 | 良 | 条件次第 | 機械部品、治具 | 腐食環境・処理条件の確認 |
※「強度の目安」は“同じ厚みで比較したときの傾向”です。最終的には形状・公差・表面処理まで含めて判断します。
迷ったときの選び方 設計・加工・品質の優先順位
材質選定で混乱しやすいのは、「強度」「加工」「外観」が別方向に効くからです。おすすめは、次の順で“落とせない条件”を決めることです。
- 使用環境:屋外、湿気、薬品、異種金属接触の有無(耐食性・電食)
- 外観要求:アルマイト色、見える面の範囲、キズ許容
- 機能(剛性/強度):たわみ量、締結力、薄肉可否
- 加工性:歪みリスク、工具/工程、納期
- コスト/調達性:入手しやすい材で回すのか、特注も許容するのか
この順で整理すると、「まずはA6061で組んで、外観面が厳しければA5052寄り」「どうしても強度が足りないならA7075を検討」といった意思決定がスムーズになります。
切削加工で起きやすいトラブル
アルミは切削自体は進みやすい一方で、外観と寸法に“クセ”が出ます。特に試作では、加工者が良かれと思って条件を詰めすぎて、別の不具合を呼ぶこともあります。
バリ・むしれ・溶着
アルミは柔らかい系統ほど、切りくずが刃先に付着して面が荒れたり、端面にバリが出たりします。対策の方向性はシンプルで、「刃先を鋭く保つ」「切りくずを詰まらせない」「発熱を抑える」の3つです。
ビビリ
薄肉・長尺・片持ち固定は、材料が先に振動して面粗さが崩れます。工具を太く短くする、固定点を増やす、切込みを分けるなど、“剛性を上げる”発想が効きます。
歪み 反り・ねじれ
歪みだけは、加工条件だけでなく「材料の中身(残留応力)」と「工程の組み方」が支配的です。加工中は合っていたのに、外した瞬間に動く——このタイプは、原因が固定や工程側にあることが多いです。
| 症状 | 典型原因 | 対策の方向性(まずやる順) |
|---|---|---|
| バリが残る | 刃先の摩耗、送り不足、逃げ不足 | 刃物交換→送り見直し→面取り量の明確化 |
| むしれ・面が白っぽい | 溶着、切りくず詰まり | 刃形(アルミ用)→排出改善→冷却・潤滑 |
| ビビリ | ワーク/工具の剛性不足 | 固定強化→工具短く→切込み分割 |
| 反り・ねじれ | 残留応力、片側だけ削る、締め付け変形 | 工程見直し→固定方法→取り代/順序 |
なぜ歪むのか 3つの主因と歪みやすい形状
1)残留応力が削るほどに解放される
板材や押出材は、製造過程で内部に応力が残っている場合があります。そこに大きな肉抜きや片側加工をすると、バランスが崩れて反りやねじれが出ます。材料のせいに見えますが、実際は「削り方が応力を呼び起こす」ケースも多いです。
2)加工熱で寸法が動く そして冷えて戻る
アルミは熱を伝えやすく、温度が上がると膨張します。加工直後に測ると合っているのに冷えたらズレる/逆に、冷えた状態で仕上げたつもりが加工中に伸びている、ということが起きます。
3)固定が歪みを作る 外した瞬間に出る
薄肉を強く締める、点で押さえる、片側だけ押さえる——こうした固定は、加工中にワークを“別形状”に変形させます。加工中は正しく削れても、外した瞬間に戻って歪みになります。
歪みが出やすい形状の典型
- 深いポケット加工で、底面が薄く残る
- コの字・L字など、断面が非対称で片側だけ細い
- 長尺で支持点が少ない(レール形状、細いバー)
- ネジ穴やザグリが片側に偏っている(肉厚が偏る)
- 仕上げ面が広く、薄い“お盆形状”になっている
設計段階で「どこが薄いか」「左右の肉が釣り合っているか」を見直すだけで、歪みはかなり減らせます。
歪み対策 材料・工程・固定・条件をセットで組む
材料選定でできること
- 歪みが厳しい形状は、最初から“安定性寄り”の材料・供給形態を検討する
- 厚板からの削り出しは、取り代が大きいほど動きやすい。必要なら余肉を見込む
- 質別(T6など)を指定する場合は、仕上げ代と工程をセットで考える
工程設計 生産技術が整理したい要点
- 荒取り→時間を置く→仕上げ:粗加工で応力を出し、落ち着かせてから仕上げる(“一晩寝かせる”運用も有効)
- 両面を均等に削る:片側だけ一気に削ると曲がりやすい
- 仕上げ代を残す:最後の一発で大きく削らない(熱・締め付けの影響が増える)
- 基準面の作り方を決める:最初に基準を作り、以降はその基準で工程を組む
固定・治具の考え方 歪みを生まない押さえ方
- 面で支える(当て板、ソフトジョー)/点で押さえない
- 薄板は“押さえ過ぎない”。必要なら真空チャック等も検討する
- 長尺は途中支持を入れる(支え無しで削ると必ず逃げる)
- 仕上げ工程は締め付けを弱め、加工中の変形を最小にする
加工条件・工具選定 溶着と発熱を抑える
- アルミ用の刃形(切れ味重視・切りくず排出重視)を使う
- 溝加工は刃数を増やしすぎない(詰まりやすい)。仕上げは刃数で面を作る
- 送りが遅すぎると擦って熱が出る。回転数だけ上げるのは逆効果になることがある
- クーラントやミストは、排出と温度の安定に効く。外観優先なら運用ルールも決める
外観と表面処理の注意点 アルマイト前提で失敗を減らす
品質側の悩みは「加工は合っているのに、処理後にキズが目立つ」「色ムラが出る」「打痕が増える」です。アルマイト(陽極酸化)は“塗る”のではなく、表面に皮膜を“作る”処理なので、加工面の状態や取り扱いが、そのまま結果に出ると考えると分かりやすいです。
アルマイトで目立ちやすいもの
- 細い工具目(送り目)や段差:光の反射で筋に見える
- 角のダレ・バリ残り:処理後に輪郭がぼやける/手触りが悪い
- こすれキズ・指紋・油分:脱脂で落ち切らないとムラや白濁の原因になる
- 異なる合金の混在:同じ色指定でも色味が揃いにくい(材質統一が基本)
- 溶接や異材の接合:周辺だけ色が変わることがある(外観面は避ける設計が無難)
処理前の加工でやっておきたいこと
- 外観面は、工具目の方向をそろえる(見え方の安定)
- 角は「面取りC0.2以上」など最低値を決める(バリと打痕を減らす)
- 重要面は、加工後すぐに保護(フィルム・当て板・個別包装)まで運用で決める
- 取り扱いで当たりやすい面(治具当たり、搬送中に接触する面)を設計段階で決める
寸法への影響 処理前後の“基準”を明記する
アルマイトは皮膜厚が数μm〜数十μmでも、嵌合部やねじ、摺動部では影響が出ます。さらに前処理(脱脂・エッチング)で角がわずかに丸くなることもあり、外観と寸法の両方に効きます。迷ったら次のいずれかを採用すると整理しやすいです。
| 部位 | すすめ方 | 理由 |
|---|---|---|
| 嵌合・軸穴 | マスキング/処理後に仕上げ加工 | 皮膜で寸法が変わるため |
| ねじ | 皮膜厚の影響を見込む/タップさらい | かじり・入りにくさを防ぐ |
| 外観面 | 全面処理+傷防止運用 | ムラよりもキズがクレームになりやすい |
キズ基準 外観基準の決め方
キズ基準で揉める原因は「見る条件が人によって違う」ことです。まず判定条件を固定し、次に“面のランク”を決めると運用できます。
| ルール | 具体例 | 狙い |
|---|---|---|
| 観察条件を固定 | 距離30cm、照度1000lx程度、角度45°、素手で触らない | 判定ブレを減らす |
| 面ランクを設定 | A面:外観最重要/B面:目立たない面/C面:機能優先 | 合否判断を早くする |
| 見本を用意 | OK/NGサンプル(マスター)を保管 | 言葉のズレをなくす |
ポイントは「A面は厳しく、C面は実用的に」です。全部をA面にするとコストも納期も跳ねやすく、逆に基準が守れなくなります。
図面指示に落とすポイント
設計・生産技術・品質で合意した内容は、図面に残して初めて再現できます。迷いやすい項目は“文章で補う”のが有効です。
| 項目 | 記載例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 材質と質別 | A6061-T6 など | 材質だけでは別物になる |
| 外観面の指定 | A面指示、方向性(ヘアライン方向) | 目立つ面を先に共有 |
| 面取り | C0.2以上、R0.2以上 など | バリ・打痕・手触り対策 |
| 表面処理 | アルマイト、色、膜厚、マスキング範囲 | 寸法影響・色味を事前に詰める |
| 寸法の基準 | 処理後寸法/処理前寸法のどちらか明記 | ここが曖昧だと手戻りになる |
試作で手戻りを減らす 伝えるべき情報チェックリスト
短納期の試作ほど「どこが大事か」を最初に共有した方が、結果的に早くなります。
| 伝えること | 例 | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| 最重要機能 | 平面度が最優先、嵌合が最優先 | 工程設計が決まる |
| 外観の優先度 | A面は上面のみ、側面はB面 | キズ対策の過不足が減る |
| 表面処理の有無 | 黒アルマイト予定、膜厚指定あり | 寸法・色ムラの手戻り防止 |
| 使用環境 | 屋外、塩害あり、異種金属接触あり | 材質と処理の選定が早い |
よくある質問
アルミは錆びないの?
表面が酸化して保護膜ができるため鉄のようには赤錆びしません。ただし湿気や塩分、異種金属との接触条件では腐食(電食)が起こることがあります。使用環境が厳しい場合は、絶縁・表面処理・材質選定をセットで検討します。
歪みが止まらないとき、最初に疑うべきは?
まず「固定の仕方」と「片側だけ削っていないか」です。材料変更よりも先に、荒取り→落ち着かせ→仕上げ、両面バランス加工、締め付けの見直しで改善するケースが多いです。
アルマイトの色ムラを減らすコツは?
同一ロット・同一材質にそろえるのが基本です。外観を揃えたい場合は、材質の混在を避け、外観面の仕上げ方向(工具目)や前処理条件を揃える運用が効きます。
まとめ
アルミは「軽い・加工しやすい」反面、材質の選び方と加工の進め方を間違えると、試作段階でも量産段階でも 反り/ねじれ/外観不良が出やすい材料です。成功の鍵は、アルミを“金属名”としてではなく、「合金+質別+素材形態+表面処理」までセットで設計・手配することにあります。
- アルミ=全部同じではない
図面・発注では「A6061」ではなく A6061-T6のように、合金+質別までそろえて初めて同一条件になります(ここが曖昧だと、強度・歪み・外観がズレます)。 - 軽量化と剛性は“材質だけ”で決まらない
アルミは鉄よりたわみやすい前提で、厚み・リブ・箱形状・枠残しなど断面設計で剛性を稼ぐと、材料グレードを上げるより手戻りが減るケースが多いです。 - 切削の歪みは「残留応力×加工熱×固定」が主因
反り対策は、材料変更の前にまず
荒取り→落ち着かせ→仕上げ/両面バランス加工/面で支える固定
など、工程と治具(支え方)をセットで組むのが近道です。 - 外観と表面処理(アルマイト等)は“加工面がそのまま出る”
工具目・微細キズ・油分・当たり痕は処理後に目立ちやすく、さらに膜厚や前処理で寸法も動きます。
A面指定/キズ基準(見る距離・照明)/面取り最低値/処理前後寸法の基準を決めて図面に残すと、品質ブレが一気に減ります。
株式会社アリスでは、アルミ部品について 材質選定(合金・質別)→切削試作→歪み対策(工程・固定の最適化)→表面処理前提の外観づくり→検査・成績書まで、試作〜小ロットで“手戻りが出やすいポイント”を先回りして進める支援が可能です。
「加工後に反る」「アルマイト後に寸法が入らない」「キズ基準が定まらず揉める」といった状況でも、まずは現象ベースでご相談ください。
ご相談・お見積りを早く具体化するため、最初に以下だけ共有いただけるとスムーズです。
- 材質:合金+質別(例:A5052 / A6061-T6 等)・素材形態(板/押出/丸棒)
- 最重要項目:平面度・直角度・位置度など「どこが一番効くか」
- 外観:A面範囲、キズ許容の考え方、工具目方向の希望
- 表面処理:有無、色、膜厚、マスキング範囲、処理前/処理後どちら基準か
- 数量・納期・用途環境(屋外、異種金属接触、薬品など)
軽量化はできたが、反りと外観で止まっている段階ほど、設計・加工・処理をまとめて整える価値があります。