戦わなかった人たちにも、戦争はやって来た
2014.04.30
歴史に名前が残るのは、たいてい戦った人です。アテルイ、モレ、坂上田村麻呂。
けれど、その土地に暮らしていた大多数の人は武将ではありません。
畑を耕す人がいた。魚を捕る人がいた。馬を育てる人がいた。
子どもを育て、年老いた親を支え、冬を越す食料を蓄えていた人たちがいました。
そこへ律令国家の支配が北へ伸びてきます。
城柵が築かれ、軍が入り、役人が置かれ、別の地域から人が移されてくる。
これは現地の人々が、自分たちから都へ攻め込んで始まった変化ではありません。
外から新しい支配の仕組みが入ってきたことによって、今までの暮らしが変えられていったのです。
戦わなかった人にも、その影響は及びます。
土地の使い方が変わる。税や労役が入る。交易の相手が変わる。有力者の立場が変わる。
戦いが起これば畑へ行けなくなり、食料も不足する。家を離れなければならない人もいたでしょう。
だから「征討」や「反乱」という言葉だけを見ていると、一番多くいた普通の人が消えてしまいます。
国家が勢力を広げるとき、地図の色だけが変わるのではありません。
そこで暮らしていた人間の日常が変わります。
アテルイたちが守ろうとしたものも、抽象的な「領土」だけではなかったはずです。
その土地で続いてきた暮らしそのものだったのではないでしょうか。
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